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38話 今月のニュース紙芝居
夜
小さな焚き火が
ぱち、と鳴る
ふっくらは
丸い体を地面に沈め
短い脚を前に投げ出して座っていた
腹がふよんと揺れ
両手には
いつものお菓子袋
ふっくら
「……今月は……
なにあったの……?」
琶が
紙芝居の枠を立てる
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が
闇を背負い
爪が紙の端を押さえる
琶
「……今月は
静かだ」
ふっくら
「その言い方
だいたい静かじゃないやつ!!」
一枚目
絵が現れる
広場
人が少ない
少なすぎる
ふっくら
「……あれ?
先月より……
減ってない……?」
琶
「……数えなくていい」
二枚目
同じ広場
同じ構図
でも
誰もいない
ふっくら
「えっ
消えた!?
省略!?
ニュースなのに省略!?」
琶
「……次だ」
三枚目
道
まっすぐ
何もない
紙の端が
少しだけ
重く見える
ふっくら
「……この道……
前も見たよね……?」
琶
「……よく覚えているな」
(ほめてはいない)
四枚目
勇者の絵
同じ顔
同じ装備
数が
多いのか
少ないのか
わからない
ふっくら
「……ねぇ……
これ……
増えてる……?
減ってる……?」
琶
「……同じだ」
ふっくら
「同じって何が!?
人数!?
顔!?
人生!?!」
五枚目
文字だけの紙
【今月の出来事】
【特になし】
ふっくら
「ニュースなのに
なにもなし!!
これ詐欺!!」
琶
「……記録は
正確だ」
ふっくらは
お菓子を一粒
落とす
ころり
闇に
音が吸い込まれる
ふっくら
「……ねぇ琶……
今月……
ほんとに……
なにもなかった……?」
琶は
紙をめくる手を止める
焚き火が
一瞬だけ
小さくなる
琶
「……起きた」
ふっくら
「えっ」
琶
「……だが
描く必要が
なかった」
ふっくら
「それ……
誰が決めるの……?」
琶は
答えない
最後の紙を
静かにしまう
ふっくら
「……読者……
今の……
どう思う……?」
琶は
ふっくらの頭を
軽くつつく
「……考えるな」
焚き火が
元の大きさに戻る
紙芝居は終わり
夜だけが残る
ふっくら
「……おわり?」
琶
「……終わりだ」
空を見上げると
星がひとつ
欠けている気がしたが
誰も
数えなかった
今月のニュースは
静かに
閉じられた
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