テラーノベル
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「…………こっちに戻ってたんだな」
どことなく、侑の声が迷惑を孕んだように聞こえるが、それでも構わずにレナは話を続ける。
「ええ。私もパーティに招待されたから一時帰国したの。それはそうと……」
レナは値踏みするように瑠衣を見やり、彼女は思わずビクリと身体を震わせた。
「侑の彼女?」
「いや…………彼女は立川音大でレッスンしてた時の教え子だ」
「そうなんだ。ねぇ。せっかくだから写真撮らない? 師匠と教え子のツーショットと、私も交えてのスリーショット。いいでしょ?」
「ああ、構わんが…………。九條、いいか?」
「はい」
レナはそう言うと、パーティバッグからスマホを取り出し、カメラモードにさせた。
「じゃあ、まずはツーショットで。はい、チーズ」
侑と瑠衣をスマホ画面おさめてシャッターを切り、『念の為もう一枚撮るね』と二人に声を掛ける。
しかし、レナはスマホカメラをズームさせて、瑠衣の顔だけをアップにさせている。
「じゃあもう一枚撮るね。はい、チーズ!」
瑠衣の画像をおさめた事に、レナは唇を微かに歪ませた後、近くにいたホテルのスタッフに声を掛け、シャッターを押してくれないか、と頼んでいた。
極上の笑みを見せながら、そそくさと侑の隣に並び、スタッフに『ではお願いします』と伝えた。
ホテルのスタッフに撮ってもらったスリーショットの撮影が終わると、レナはスマホを受け取りながら態とらしく破顔させ、二人に言葉を掛けた。
「一時帰国のいい記念になったわ。お二人とも、ありがとう」
「ああ。じゃあ、俺たちは他の招待客の方に挨拶するから。キミも元気で頑張ってくれ」
侑は早足でその場を去ると、瑠衣もレナに会釈した後、小走りで侑を追い掛ける。
「へぇ。あの人のお弟子さん……ね……」
二人の後姿を見やった後にレナはほくそ笑み、スマホをバッグにしまい込んだ。
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