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結局、葉山社長の息子たちに挨拶ができないまま、創業パーティは終盤を迎えた。
司会者が、葉山社長から報告があるとのアナウンスが会場中に響く。
設営されたステージ上に葉山社長、その後にお洒落な黒のフォーマルスーツを着た俳優のようなイケメン、仕立ての良いシャンパンゴールドのワンピースを纏い、高級ブランドのハイヒールを履いた明るい茶色の髪を巻き髪にした若い女性が続く。
中央に置かれているスタンドマイクの前に葉山社長が立ち、挨拶を始めた。
「私事ではありますが、この度、私の長男、副社長の葉山 圭が、お隣にいらっしゃる園田 真理子さんと婚約する事となりました」
社長の報告で、会場内が一気に歓声に包まれていく。
「…………ついに圭も婚約か」
侑が葉山社長のスピーチを聞きながら感慨深そうにステージ上を見つめ、微かに笑みを見せると、瑠衣も幸せな報告を聞いた事で、心が和むのを感じていた。
婚約報告の後、アルトサックスとピアノの演奏が始まり、サックスを吹いている人は、婚約した副社長と瓜二つのイケメン。
多分彼が、双子の弟さんなんだろうな、とアドリブを交えたサックスの音色を聴きながら瑠衣は思う。
ピアノを伴奏している女性は、長い黒髪に眉の少し下で切り揃えられた厚めの前髪と、大きな漆黒の瞳が印象的なクールビューティな人。
(お祝いで演奏なんて、すごく素敵だなぁ……。私もピアノの伴奏でトランペット吹いてみたいな……)
瑠衣は芳醇で甘美なバラード曲を聴きながら、幸せな気持ちに浸っていた。
アルトサックスとピアノの素敵な演奏に会場は拍手に湧き、創業パーティお開きのアナウンスがされた。
会場を出る人波に乗るように侑と瑠衣も退出して、外のロビーの椅子に腰掛けた。
「私……こういう場は初めてでしたけど、粗相してなかったですかね?」
「…………気にする事はない。しかし……とうとうあの二人には挨拶できなかったな」
長い前髪をクシャっと掻き上げながら少し残念そうな面持ちの侑に、
「少し待ってみますか?」
と瑠衣は声を掛けた。
「そうか。お前は今日は時間を気にする必要ないんだよな。なら少し待つとしよう」
侑と瑠衣は座ったまま、葉山社長の息子たちが来るのを待つ事にした。
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