テラーノベル
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◆
東棟のロビーには、妙な静けさが漂っていた。
リーナは額を押さえながら深いため息をつく。
「はぁ……。」
「えぇっと……。」
ニアが困ったように笑う。
「……。」
鈴凛は腕を組んだまま黙っている。
「……にゃ……。」
ラテは耳を伏せ、そわそわと辺りを見回していた。
「……うん……。」
フローも苦笑いを浮かべる。
「……?」
ルカだけは、いつも通りの顔で少し首を傾げていた。
そして。
「……あの。」
テルが恐る恐る口を開く。
「誰ですか!?」
ロビーのソファには、見知らぬ少女がちょこんと座っていた。金髪の二つ結びが窓から射す日光に当てられている。
少女は全員の視線を受けながら、にこにこと笑っている。
だが。
何も喋らない。
「……。」
「えーっと……?」
テルが助けを求めるように周囲を見る。
「何か言えアル。」
鈴凛が真顔で言った。
「……笑ってるのに怖いにゃ……。」
ラテは無意識に少しフローの近くによる。
「き、緊張してるのかな……?」
ニアがフォローを試みる。
「そうは見えないけどね……?」
フローが小さくツッコんだ。
「……誰?」
ルカがぽつりと核心を突く。
「とりあえず…リーナさん説明お願いします……。」
テルは早々に責任を放棄した。
「はぁ……。」
リーナはもう一度ため息をつく。
「わかったわよ……。」
◆
数時間前。
「リーナちゃーん!」
元気な声が廊下に響く。
「何?」
「来月のライブなんだけどね……。」
「嫌よ。」
「まだ何も言ってないよ!?」
ニアが大げさに肩を落とす。
「どうせ、また『一緒にライブしよう』とか言うんでしょ……。」
「……そうだけど〜……。」
ニアはすぐに切り替えた。
「じゃあ、今回のライブ会場に来てよ!」
「すっごく凝ってるんだから!」
窓の外では雨がしとしと降っている。
リーナはそれを見て、やれやれと肩をすくめた。
「あなたには雨が見えないのかしら。」
「…………仕方ないわね。」
「やったぁ!」
◇
ライブ会場と呼ばれるところへ着くと、一面に淡い青色の花が広がっていた。
そして、そのど真ん中に台とブルーシートがあった。
「見て見て!」
ニアが目を輝かせる。
「今回も台はリンちゃんが作ってくれたの!」
「……ふん。」
リーナは腕を組む。
「まあまあね。」
「でもまぁ、前回よりは良くなったんじゃないの?」
「当たり前アル。」
鈴凛は胸を張った。
「すごく良いところだにゃ!」
ラテは花畑を駆け回る。
「今回はネモフィラモチーフにゃ?」
「うん!」
ニアは嬉しそうに頷いた。
「お花はわたしとリンちゃんで育てたんだよ!」
「へぇ。」
リーナは少し驚いたように花を見渡す。
「なかなかいいじゃないの。」
「……それで〜。」
ニアがもじもじし始める。
「よかったら、リーナちゃんにもライブ参加してほしいなー……」
「なんちゃって……。」
「……。」
リーナは返事をしない。
一点を見つめている。
「り、リーナちゃん?どうしたの……?」
「……あそこにいるの、誰?」
「……にゃ?」
ラテが振り返った瞬間。
「にゃぁぁぁ!?」
「うるさいわよバカ猫!」
リーナが慌てて口を塞ぐ。
花畑の向こうに、一人の少女が立っていた。
雨の中で、傘もささずにじっとこちらを見つめている。
「フロー……じゃないアル。」
鈴凛が冷静に分析した。
「……誰だろ……。」
ニアが首を傾げる。一歩、少女に向かって無意識に足を進める。
「バカっ!?」
リーナが叫ぶ。
「ヤバいやつだったらどうすんのよ!」
「わわっ!」
「でも……見た感じ、普通の女の子だよ?」
「普通の女の子が、こんなところに入れるわけないでしょうが…!」
リーナは頭を抱えた。
「……とにかく、屋敷へ戻るわよ…。」
◆
「……で。」
リーナはソファを指差す。
「ロビーへ戻ってきたら、堂々と座ってたのよ。」
「な、なるほど……?」
テルは曖昧に頷いた。
「全然わからないアル。」
「……うん。」
鈴凛とルカは正直だった。
「……。」
少女は相変わらずにこにこしている。
「こんな屋敷へ堂々と入ってくるやつなんて初めてよ。」
リーナが疲れ切った声で言う。
「そ、それで……。」
フローが優しく、少し戸惑いつつも尋ねた。
「キミは、一体何者なんだい?」
「……。」
少女は微笑んだまま。
やはり答えない。
「この結界を越えられる時点で、絶対おかしいにゃよ……。」
ラテが小さく震える。
「うーん、そうだね…。」
ニアも困ったように笑った。
「なかなか話してくれないわね……。」
リーナはじっと少女を見る。
「……とりあえず、村長に連絡……。」
テルが立ち上がりかけた、その時。
「やめて?」
「……。」
全員が固まる。
「喋ったわ……。」
リーナがぽつりと呟く。
「やめときますごめんなさい。」
テルは光の速さで座り直した。
「……屈するの早いよ。」
ルカの静かなツッコミが刺さる。
「えぇっと……。」
フローは改めて少女へ向き直った。
「キミ、自分が何者かわかるかい?」
「……。」
少女は少しだけ首を傾げる。
「……テルが変なこと言うからアル。」
鈴凛が真顔で言った。
「え、僕のせい?」
その瞬間、ロビーに小さな笑い声が広がった。
見知らぬ少女は、そんな彼らを静かに見つめていた。
少しだけ少女の口元が上がったのは気のせいだろうか。
コメント
1件
第十四話、めっちゃ気になる終わり方だった……! 新キャラの金髪ツインテの子、にこにこしながら何も喋らないのに、テルの「村長に連絡」って言葉にだけ反応して「やめて?」って言ったのがめっちゃ不気味で良かった。 しかも結界越えて堂々と屋敷の中に座ってる時点でただ者じゃない感じがすごい。 みんなの困惑とテルのビビリ方が可愛くて笑った(笑) 次回が待ち遠しいです!
#魔王
青空美空
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ruruha
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於田縫紀
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