登場人物
柊 朱音(ヒイラギ アカネ)
6月生まれ 中学1年生
朱音の両親は遊び人だった。子供を授かったと知ると父は逃亡、思い詰めた母は朱音を産んだ後自殺した。母の親戚たちは朱音を腫れ物扱いし、施設に預けた。
父は吸血鬼、母は人間。人間と吸血鬼のハーフの朱音は腰まで伸びた白い髪、赤い目、血を飲むために発達した歯。とても特徴的な見た目をしていた。
朱音は大人も見惚れてしまうような美しい容姿をしていた。しかし、子供の世界は残酷で施設や小学校では周りと違うという理由で酷いいじめにあった。
五十嵐 幸(イガラシ サチ)
12月生まれ 中学1年生
3人姉妹の末っ子。貧乏な家庭で育った。父はアルコール依存症、母は体を売って家庭を支えている。二人の姉はすごく優秀で小さい頃から比べられてきた。
父親には殴られこき使われ、母には姉達と比べられ蔑まれる。姉達も幸への虐待は見て見ぬふり。幸は父親に殴られないために人の顔色を伺うようになり、八方美人な性格になった。
家庭での立場とは裏腹に幸はクラスの人気者。色んな人に愛想を振りまいて疲れていた。
4月、今年の桜は早く散ってしまった。入学式にはもう咲いていない。
朱音は恐る恐る教室のドアを開けた。視線が集まってくる。好奇の目線、朱音は正直うんざりだった。
教卓に置いてある座席表を見て自分の席を確認する。足早に席へ向かって座る。この間も好奇の目線が朱音へ注がれている。
居心地が悪くなった朱音は机に突っ伏した。
『ねえ、あの子髪白くない?』
『え、染めてんのかな?しかも目も赤いし』
『変な子だねー笑』
『あんま関わらない方がいいんじゃない?』
女子は朱音に聞こえるような声でそんなことを話している。
朱音は中学入学早々に孤立してしまった。
登校も、昼休みも、下校も1人。施設に帰ったらいじめられる。でも朱音にとってはそれが普通だった。
そんなある日、朱音は1人の少女に話しかけられた。五十嵐幸と名乗った少女は他人に興味が無い朱音ですら知っているクラスの人気者だった。
幸『髪の毛サラサラで綺麗だね。なんかお手入れしてるの?』
朱音『…別にしてない。』
幸『そうなんだ〜!じゃあ生まれつきのもの?!めっちゃ羨ましい!笑』
『たしか..朱音ちゃんだよね?よかったら仲良くしたい!』
幸は優しく笑いかけた。
朱音はどうせこの子も自分の事を知ったらすぐ離れていくと思っていた。でも褒められて少し嬉しかった。
朱音は小さく頷いた。
幸『やったあ!これからよろしくね。』
『幸〜!体育一緒に行こー!』
幸『あ、ごめん笑 今日から朱音ちゃんと一緒に行く!』
『あっ..そうなんだ笑』
女子達は顔を見合わせてぎょっとしていた。
幸は気にする様子もなかった。
幸『朱音ちゃん!行こ?』
朱音は困惑しながらも一緒に行くことにした。
幸と友達になってから1ヶ月がたった。未だに自分なんかと一緒にいてくれる幸を朱音は不思議がっていた。
幸『朱音ちゃん!よかったら呼び捨てで呼び合わない?なんか気使ってるみたいじゃん?笑』
朱音『いいよ。幸..?』
幸『朱音!やっぱこっちの方がしっくりくるわ!笑』
幸はいつもニコニコしている。不気味に感じるくらいに。
『あ!そういえばオシャレなカフェ見つけたんだけど放課後そこ行かない?』
朱音『…。』
幸『えっどしたの?もしかしてカフェやだ?!』
朱音『そうじゃなくてさ、』
幸『うん..?』
朱音『なんでこんな私なんかと仲良くしてくれるの?』
幸『…え〜いきなりだなあ笑』
『私が仲良くしたいだけ。理由なんかいる?』
朱音『..わかんない。』
『私って変じゃん。私なんかと一緒にいたら幸だってほかの女子に色々言われるんじゃないの?』
幸はムッとして言った。
幸『ねえ、それ私と友達辞めたいってこと?』
朱音『いや..そういうわけじゃ』
幸『だったらさ、周りの目なんか気にしないでいいんじゃん。私なんかとか朱音が好きで友達やってる私にも朱音自身にも失礼だよね?』
『二度とそんな言葉使わないで。』
いつもの幸の顔じゃなかった。
朱音『ごめん。私幸と友達になれて嬉しいよ。』
幸『わかればよろしい!カフェ行くよ〜?』
幸はまたニコニコしたいつもの顔に戻った。
幸『グランデノンティーマンゴーパッションティーフラペチーノアドホワイトモカシロップアドホイップクリームで!』
朱音『…?!』
幸『…??朱音何がいい?』
朱音『えっ..よくわかんないから幸頼んで〜』
幸『おっけー!じゃあさっきの2つください!』
朱音『……。』
幸『ひぃ〜やっぱおしゃれなカフェって高いよね。1ヶ月分のお小遣い使っちゃった..。』
朱音『あんな呪文みたいなトッピングたくさん付けるからだよ。』
幸『へへ..たしかに笑』
幸はいつも美味しそうに食べ物を食べる。
幸『…。何見てんの?笑私食べ方汚い?』
朱音『いや、そんなんじゃない!』
幸『じゃあなに?』
朱音『いや..いつも美味しそうに食べてて…ゎぃぃなって..。』
幸『えっなに?!聞こえなかった。』
朱音『だから!かわいいって言ってんの..。』
幸『ぶっそれぐらいで顔赤くしないでよ笑』
ありがと。朱音も可愛いよ。』
朱音『….。バカにしてる?』
幸『ええー?!なんでよしてないしてない!笑』
『よちよーち笑』
朱音『やっぱりバカにしてんじゃん..。』
幸『ふぅー食った食った!』
朱音『言ってもジュース1杯じゃん。』
幸『..まあね!笑』
幸『ねえ。私と幸って友達になってもう1ヶ月くらい経つじゃん?』
朱音『うん。』
幸『私って朱音のこと全然知らないなって。もう私達親友くらいには仲良いじゃん?』
朱音『…うん。』
幸『教えてよ、朱音のこと。』
朱音『別に..話してもいいけどひかない..よね?』
幸『引くわけないじゃん!私を信じて?』
朱音『ありがとう。そのかわり幸の事も教えてね!』
幸『…え、めっちゃ壮絶じゃん。』
『幸の目が赤くて髪が白くて歯が鋭いのも吸血鬼のハーフだから..?』
朱音『まあ、たぶん。』
幸『じゃあ血も吸うの?』
朱音『我慢してるけどね。』
幸『..そうなんだ。』
朱音『驚かないの?』
幸『そりゃ驚いてるよ!』
『でも朱音が嘘つくわけないし嘘つく理由もないし..。』
朱音『幸は優しいね。信じてくれてありがとう。』
幸『んう〜…。今日も施設に帰るの?』
朱音『そこしか家ないからね。』
幸『辛くないの..?』
朱音『もう慣れたから。』
『じゃあそろそろ門限すぎちゃうし帰っていい?幸の話はまた今度聞くね。』
幸『…だめ。』
朱音『…???』
幸『今日は帰っちゃだめ!』
朱音『怒られちゃうよ。帰らせて。』
幸『だめ!!辛いのに慣れちゃうとか悲しすぎるよ。』
『とにかく今日はダメだから!!そんなとこ絶対帰らせないからね。』
朱音『ねえ幸、ほんとに帰らなきゃダメなの。』
『私の事思うなら帰らせて?』
幸『…..絶対だめだから』
うるうるした目で茜を見つめる幸。
朱音『…..もーー!そんな目で見ないでよ。』
『わかったよ…。今日だけね。』
幸『ありがとう..。』
朱音『で、今日はどこで泊まるの?』
幸『あ、どうしよ..。』
『うちの家来る?諸事情で深夜にならないと行けないけど。』
朱音『..?諸事情ってなに?』
幸『まあ..うん..えへへ。』
朱音『..???』
幸『まあ..その話は後でするから!』
『とりあえず近くの公園で時間潰そっか?』
2人はベンチに座った。
朱音『で、諸事情ってなんなの?』
『へえ..家族が寝るまで帰れないってこと?』
幸『まあ..そういうことですね。』
朱音『幸も結構壮絶じゃん。』
『相談してくれれば全然乗るのに。』
幸『それはこっちのセリフ!』
朱音『お互い様だね笑』
鈴虫の音が静寂を壊す。
気まずい空気が流れてる。
幸『..ねえ』
朱音『なに?』
幸が目をぎゅっと瞑って首を差し出す
朱音『..?!な、なに』
幸『血..吸いたいんでしょ?』
『さっきから私の首ばっかり見てるじゃん。』
朱音『..そんなことないし。』
幸『朱音のばか。ヨダレ垂れてる。』
朱音『う…。』
『ほんとに吸っていいの?』
幸『朱音ならいいよ。』
朱音『わかった、ありがとう。』
『体の力抜いてね。』
幸は涙目で再び首を差し出す。
朱音『幸のばか。体に力入れすぎ』
幸『..ごめん緊張してて』
朱音『……いいこ。じゃあ吸うね。』
朱音が幸の首に噛み付く。
幸『ん..いたい』
朱音『我慢して』
数分間血を吸い続ける。
幸『ちょ、吸いすぎ吸いすぎ!!』
朱音『ごめんごめん、久しぶりの血で笑』
『好きな子の血が美味しいって本当だったんだ。』
幸『….え?』
その瞬間幸はくらっとして朱音の胸にへたりこんだ。
朱音『ごめん、やっぱ吸いすぎた。』
幸『う..くらくら..する..。』
『ね..えさっきの..どういうこと..?』
朱音『うるさい。』
朱音は幸の体を持ち上げてキスをした。
幸『….?!!』
朱音『大好きだよ。』
ファーストキスは鉄の味がした。
6月のピンクの満月が2人を照らしていた。
あとがき
読んでくださりありがとうございます!
よければその後の話も見てくださいo( >_< )o
コメント
2件
幸ちゃんのビジュが好きすぎる🥺 次の話も楽しみです!