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羽海汐遠
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蒼羽@不定期投稿
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シプリートは仲間を集めるのだが、どうやって話しかければいいか分からない。特にドアから顔を出している、青髪のメガネの弟に話しかけるのは至難の業だ。
深呼吸をした後、話しかける。
「えーと、その……」
「呼び出しておいて、何?」
白と紫のオッドアイで睨まれてしまい、心臓が掴まれたような恐怖を感じてしまう。口調もかなりキツくて、縮こまる。
シプリートは強い口調の人間が苦手なのだ。
「用がないならさっさと目の前から消えてくれ。城が壊されたんだ。修理を業者に任せないと」
「そ、そのことなんだけど……」
「何?はっきり言えよ、兄さん」
「僕と結婚したエミリが何者かに連れ去られた!ドミニック、一緒に来てくれないか?」
でかい声でそう言うと、彼は耳を塞いでいた。呆れている様子だ。
「声デカすぎ……。TPO(時・場所・場合)を弁えろよ」
「ごめん……」
「普通に嫌ですよ。なぜ兄さんの嫁さんを助けるために、協力しなければいけないんですか?他の人に当たってください。兄さんのような魔法が使えない無能とは、一緒に行きたくありません」
「えっ!?お前の水能力すごいのに……そっか、わかった」
眉を下げて悲しげな表情でその場から去る。
彼はその様子を見て声をかけようとしていたが、シプリートは無視をする。
弟のドミニックは一度考えを決めたら、それを突き通す性格だ。しかもドミニックとは昔から仲が良くなく、たとえ剣術が上手くなっても誉めることが一度もなかった。つまり少しナルシストな一面があるのだ。
何を言っても無駄なので、諦めて三男と末っ子、長女や次女にも頼みに行こう。流石に両親は国の安泰を支えるのに忙しいので、仲間になってくれないだろうが。
急いで赤いカーペットを踏んで階段を降り、一階へ向かう。
色々と部屋を調べていたら、大柄の三男は大広間に居た。テーブルの上には美味しそうな食べ物がたくさん乗っている。それを手で掴むという下品な食べ方をしていて、皿まで食べそうな勢いだ。服は油まみれになっている。
どうやら城が揺れたことに気が付かなかったらしい。オヤツのドーナツを食べながら話しかけてくる。
「なんだー、おいらになんかようかいな?」
「その……えっと……僕の嫁のエミリがロボットに攫われたんだ!助けて欲しい」
「んんー、それは大変だな。よし、助けてやるぞ。いっぱい飯を食えば、力も湧いてくるしな!」
明るい顔で、グッドマークを示してくる。三男ザールは次男と違って助けてくれるようだ。
彼はかなりの食いしん坊でなんでも食べてしまうため、彼を仲間にするなら食べ物がたくさん必要になる。大変ではあるが、父上からもらった資金を活用すればたくさん買えるはずだ。
ザールは全て食べ終え、シプリートはその横で食事を摂る。
少食なのでそんなに食べられないが、野菜の入った香ばしいミルクスープに切られた固いフランスパン。こんがり焼けた骨付きのチキンを食べる。
特に肉がジューシーで、ほっぺたが落ちそうなほど美味しい。たくさん食べてしまう。
それを見た彼はとても上機嫌な表情を浮かべた。
「おお、今日はたーくさん食べたな!たくさん食べるやつは好きだぜ!」
「実は仲間を探そうと思って。もしかしたら相手が強いかもしれない」
「そうかそうか。おいらが一緒に説得してやるぜ!」
そう言われて、安心してしまう。
シプリートは弟のドミニックのように馬鹿にされるかもしれないという気持ちが強く話すことに抵抗があるので、話し上手なザールが仲間についてほっと息をつく。
彼は椅子から腰を上げて、ゆっくり歩く。太りすぎたせいで、明らかに歩くのが遅い。これでは冒険をするどころか、足手纏いになってしまう。
ザールはハアハアと息を吐き、苦しそうにしていた。無理に歩かせるわけにもいかず、結局一人で仲間を探すことにする。
とても残念そうに眉を顰め、その場で膝をつき両手を床につける。
「すまんなー。食べ物が美味しすぎるのがいけないんだ。頼りにならないから、やっぱり運動するか……」
「散歩も運動することなるよ!」
「ナイスアイディア。よっしゃ!いっちょ鍛えてくるぜ!」
そう言ってゆっくり立ち上がり、自分のペースでどこかへ向かっていく。恐らく体力をつけに行ったのだろう。
「一人になっちゃったけど、お姉様と妹に話しかけるか」と、呟いて恐怖のあまり顔が青ざめる。アイツら二人に話しかけるとか無理だわ……。
渋々赤いカーペットが敷いてある階段を上って、二階にある姉のフローリスの寝室へ向かう。
白い壁の廊下を歩くと、途中で赤毛を二つに結んでいるお姉様と遭遇した。
フリフリの黄色いスカートに、首からはオレンジ色のダイヤを模るペンダントを下げている。
ニヤニヤしながら上機嫌な様子で話しかけてきた。
「あらあら、シプリートじゃない。この美しくて可憐なアタクシに何か御用かしら?」
美しいと自称しているが、顔にはそばかすがあり鼻もお団子なのでそんなに美しくはない。ブサイクとはいえないが、八方美人な性格なのであまりモテない可哀想な女だ。
弟のシプリートは大嫌いで、大人とは思えない対応をしてくる生意気なところがある。
嫌だが、早速事情をボソボソと話す。
「えっと……その……嫁のエミリをロボットから救って欲しくて」
「ふん。そんなもん、ちゃちゃっと一人で行って一人で解決すればいいでしょ。アタクシのような可憐なレディは戦いになど行きませんわ」
「その通りですよ、お姉ちゃん!!」
背後から茶髪のミディアムヘアの次女リリアンナがひょっこり顔を出して、両手でピースする。二人で廊下を歩きながら会話中だったらしい。
彼女はフリフリの青色のスカートに身を纏っていた。
リリアンナと初めて出会った時は明るくて優しい女の子というイメージだったが、今は姉と一緒にいることが多くなったせいかたくさん嫌味を言うようになった。環境って大事だな。
「つーかシプリートって、ほんと弱くて嫌になりますわ!男なら強くあるべきですよ!」
そう言われてムッとしたが、ここで怒ると彼女は大きな声で泣き出すだろう。当然泣き真似なのだが、本当に厄介である。
しかも二人の甲高い笑い声には、イライラさせられる。
「そういうわけだから、ワタクシたち二人は助けになど行きませんわ」
「ええ、二人で話していたほうがいいもの。男は男同士で話せばいいのよ」
二人はそう言って、その場から離れて階段を降りていく。やはりこの二人は苦手だ。
はあと深いため息をつき、最後に末っ子のアンジェに助けを求めることにした。
こんなに時間かけていては、姫が死んでしまうかもしれない。本当はこんなことせずにすぐ行けばいいのだが、やはり血生臭い戦いになりそうなので仲間は必要だ。
そのまま廊下を歩いて右に曲がり、また前に進むと背が低い青いロングヘアの女の子が面白くなさそうに椅子に座っていた。両脚をユラユラさせている。彼女こそ末っ子のアンジェだ。
彼女が一歳の時からこっそり部屋から抜け出してよく遊んでいたので、姉弟妹の中で一番仲が良いのだ。
「よ、アンジェ」
そうにっこりと微笑んで声をかけると、彼女はパッと明るい笑顔を見せる。
「シプリートお兄様!」
「何をしていているんだ?」
「城が壊れるかもしれないって言われて、ここにいろって。意味わからないでしょ?普通机の下に隠れろって言わない?」
「ハハ……メイドさんらしいや」
「ねえねえ、また一緒に遊ばない?」
椅子から立ち上がって、シプリートに抱きつく。
ラベンダーのいい匂いがして、心が落ち着くし胸がバクバクと高まる。妹は可愛いな。
焦る気持ちが現れて、肩に両手をつける。
「いや、そんな時間はないんだ!実は僕の嫁のエミリがロボットに連れ去られたんだ!」
「えっ!?嘘……。あんなにお兄様幸せそうだったのに!それを壊すなんて酷い!アタシも手伝う!」
彼女は元気よくそういうと、彼女も仲間になった。アンジェは頼りになるし、昔からシプリートを募っていたのでこうなることは分かっていたがな。
だが、彼女はまだ幼く魔法も学んだばかりで弱い。力になれるかわからないが、頼もしいのには変わりない。
彼女が成長できる冒険になれたらいいな。
旅に出ると両親に話したら、資金をたくさんもらう。
豪華な城の外に出ると、そこにいたのは弟のドミニックだった。彼には何回もいじめれていたので、正直関わりたくない。
ドミニックは後ろを振り向いたが、視線を合わせることはない。彼は頬を少し赤らめていた。
「じ、実は……エミリを助ける協力をしに来た。べ、別に助けたいわけじゃないが、兄さんが俺の魔法を誉めてくれたのが理由だ。仲間になったわけじゃないからな」
彼は照れ隠しをしているようだ。
本当はシプリートのことを兄弟として好いているが、恥ずかしいのでツンツンしたデレが発動しているのだろう。相当嬉しかったに違いない。
こうして弟ドミニックも一緒に行くこととなった。そこへ住民に聞き込みをしていた、メイド服を着ているカロリーヌが帰ってくる。
「仲間は集まりましたか?」
「うん、三人だよ。ザールは修行中でもうすぐ来ると思う」
「体力作りは、必要ですものね。ファンファーレならぬファイトですね」
「まー、確かにそうだな」
「ねえねえ、お兄様!こんな女を置いて早く見つけに行きましょう!」
アンジェが嫉妬でイラついた様子を見せていた。カロリーヌと話していることが気に食わないのだ。腕を握りしめ、その場から去ろうとする。
その腕にある両手を振り払い、彼女にロボットの行方を尋ねる。するとその場で膝をつき、土下座した。
「申し訳ありません。情報は得られませんでした」
「わざわざ畏まらなくていいよ。仕方ないな、このメンバーで地道に探そう!」
「はい、そうしましょう」
彼女が立ち上がると、水色のメモ帳が落ちていた。アンジェがそれを拾うと、そこにはこう書いてあった。
「ロボットはカノーカ王国方面へ向かっていた」と。
どうやら情報が得られないと言っていたのは嘘だったようだ。なんでだよ!やはり天然なカロリーヌらしいな。
現実主義者のドミニックはそれに怒りを露わにする。
「おい、メイド。嘘はダメだろ。本当のことを言えばいいんだ」
「私の名前はメイドではありません。カロリーヌです。高カロリーとでもお呼びください」
「ええ……」
「嘘もたまには必要です。しかし嘘を使いすぎると狼少年の物語のようになってしまう。もう嘘は申し上げません」
狼少年とは狼が来たと何度も住民に嘘をつき、最終的に狼に襲われたが知らせてもまた嘘だと思われて助けてもらえず絶命するという話だ。こうなれば、もはや皆から信用されなくなる。
黒いスカートの裾を掴んで、可憐にお辞儀する。
彼女は嘘をつきたくてついたわけではない。カロリーヌは仕えてからどこか抜けており、こういうことはよくあったので疑問に思うことはない。むしろいつも通りで安心している。反省もしているようだし、許してあげよう。
彼女自身シプリートを死なせなくなかったからという理由があるのかもしれない。
楽しく会話をしていたら、太っている男が走ってやってきた。ゼエゼエと荒い呼吸をしているザールだ。
鍛え終えたらしいのだが、初めて出会った時とあまり変わっていない。短時間だから無理もない。随分意気込んでいることだけはわかる。
「ハアハア……さて、いきましょう!」
「おー!!」
この言葉を筆頭に、皆は手を挙げて意気込んだ。
こうして彼らは、ルミリア国を離れて貿易が盛んなカノーカ王国へ向かったのだった。
コメント
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うわあ、読んだ読んだ!シプリート、みんなに断られまくってて切なかったなあ…。でも最後にドミニックが「誉めてくれたから」って来てくれたの、めっちゃツンデレで可愛かったよ!照れてる感じが伝わってきて、こっちまでニヤける🥀 カロリーヌの天然なところもキャラ立ってて好き。でもお姉様たちの態度はムカついた…ひづみさんの描くキャラ、みんな個性強くて面白いね!次も楽しみにしてるね🤍