友人・東の家に、遊びに行った時のこと。
「ちょっと、タバコ買ってくるから、待ってて」
そう言って、東はコンビニへと出向いて行った。
それから5分もたった頃だろうか。
ゴスッ!
締め切った隣の部屋から、異音がした。
(なんだ…?)
私が聞き耳を立てると、音は、はたと止む。
気のせいだと自分に言い聞かせ、テレビの画面に見入っていると、また…
ゴスッ!
いい加減、疎ましくなってきたので、隣の部屋へと続く、襖を開けてみた。
すると、すぐ目の前から
ゴスゴスッ!
これは、さすがに「うわ…」と声が出た。
一体何が鳴っているのかと、暗闇に向け、目を凝らしていると、今度は…
ズッズッズッ!
という重い音。
そして、その音の発信源も確認できた。
それは、目の前にある、畳からだった。
部屋のほぼ中心あたりに、10文字になっている、畳の合わせ目がある。
どうやら異音は、その辺から聞こえてくるようだ。
二、3歩近づいて、その合わせ目を足で踏んでみよう…そう考え、私が歩み寄ろうとした、その時。
ゴスッ!!
一段と大きな音がして、合わせ目にある1枚が、数センチほど、浮き上がった。
「うわわっ!! 」
そう叫んで、リビングへと後ずさる。
角が浮き上がった畳は、それ以降、そのまま静かになった。
ほどなく、玄関が開く音がして、東が帰ってきた。
「いやあ、悪い悪い…ってか、そこでなにしてんの?」
それには答えず、ただだまって、わたしは、浮き上がった畳を指さした。
「ああ、これな。たまあに、浮き上がってくるんだわ」
東はそういうなり、それを足でどずっと踏み込んだ。
それ以来、東の家には行かないことに決めた。