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讃美歌三百十二番『いつくしみ深き』を歌唱した後、牧師の言葉を耳にしながら、美花は神妙な面持ちで、新郎新婦の背中を眺めていた。
隣にいる本橋夫妻を見やると、奈美はアーモンドアイを潤ませ、豪は感慨深い表情を覗かせている。
美花も、視界が滲み、雫が溜まっていくのを感じていた。
ちょうど一年ほど前、この教会で本橋夫妻の挙式をきっかけに出会った奏と怜が、今、同じ場所で永遠の愛を誓おうとしている。
(幸せの繋がりって…………素敵だよねぇ……)
美花は唇を僅かに緩めると、目尻の涙を指先で拭った。
挙式は、誓いの言葉、指輪の交換へと進んでいき、次は、最大のメインイベントとも言える誓いのキス。
「では、新郎はベールを上げて、新婦に誓いの口付けを」
牧師の凜とした声が小さく響き、新郎の怜が奏のベールを丁寧に手を添えると、ゆっくりと上げながらベールを整える。
互いに眼差しを絡めさせながら、花婿は華奢な花嫁の肩に両手を添えると、触れるように唇を重ねた。
(うわぁ…………かなチーとれいチェル…………素敵っ……!)
映画のワンシーンを見ているような美男美女のキスに、美花の唇が微かに綻んだ。
結婚宣言、結婚証明書のサイン署名、と挙式は粛々と進行していき、讃美歌四百二十八番『またき愛』の歌唱をすると、讃美歌の美しい旋律に、美花の気持ちが昂り、甘やかな痛みが胸中に広がっていく。
「新郎、葉山怜さん、新婦、音羽奏さんは、これから二人で新たな人生を、ともに歩んでいきます。皆さん、大きな拍手をお送り下さい」
牧師が朗々とした声で言葉を結ぶと、メンデルスゾーンの『結婚行進曲』が奏でられ、新郎新婦がバージンロードの上を、ゆっくりと歩き出した。
温かい拍手を浴びながら、奏と怜が参列者に微笑んでいる。
新郎新婦が、本橋夫妻と美花に気付くと、奏は小さく手を振り、怜がこっそりと親指を立てて、サムズアップの仕草を見せた。
花婿と花嫁は、外から溢れる眩い陽光へ向かっていき、溶け込むように姿が見えなくなると、教会の扉が静かに閉められる。
「奏…………すごく……綺麗だったね……」
奈美が頬を濡らしながら、豪を見上げている。
「ああ。あの二人は、素敵な夫婦になるだろうな……」
本橋夫婦は奏と怜を、友人というよりも、親戚の目線に近い感覚なのかもしれない。
「もぉ…………なみプーに釣られて、私もまた涙が出ちゃったよぉ……」
美花は照れながらも、ハンカチで目尻を抑えて、唇に微笑みを滲ませた。
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