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僕の家には戦争がある

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僕の家には戦争がある

3 - 第3話 盾になる人

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2025年06月22日

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その夜、遅くに玄関のドアが静かに開いた。

「……ただいま」

重たく落ち着いた声。陸だった。

リビングにいた海と空がすぐ顔を上げたが、日本はソファで毛布をかぶって動かなかった。

眠っていたのか、それとも眠ったフリか。

「今日はどうだった?」

海の問いに、陸はスーツの襟を緩めながら答える。

「……北側が少しきな臭い。空港周辺の配置換えの話が出てる。こっちは動かない方がいい」

「了解。必要があれば空に回す」

いつもの会話。家の中でなければ、それはまるで軍事司令室のようなやりとり。

やがて、陸がソファに座った日本に目をやる。

「……起きているだろ、日本」

ふいに、日本は肩をびくりと揺らした。

「……おかえりなさい」

布団の中から、小さくくぐもった声が返る。

「無理して笑わなくてもいい」

陸の声は硬いが、どこか優しい。

「学校、つらいのか?」

日本は言葉を返さない。ただ、ソファの背に顔をうずめた。

すると陸は一歩だけ近づいて、低く呟いた。

「俺は日本の盾だ。どんな相手が来ようと、前に立つ」

一瞬、息をのんだように、日本の肩が上下する。

陸はそれ以上何も言わず、背中を軽く叩いてから、自室へと向かった。



夜、部屋の隅に座り込んだ日本は、ひとり手帳を開いていた。

今日あったこと、誰とも話せなかったこと――

(空さんには甘えすぎですし、海さんには見透かされそうで、父上には……頼りすぎるのもこわいですね)

文字がぶれた。

涙がにじんでいた。

(でも、誰かに守られたいんです。…強く抱きしめて、何もかも忘れさせてほしい)

自分の感情が、家族に向けるには濃すぎるとわかっている。

けれど、他の誰かになんて向けられない。家族でないと、だめだった。

(私は、戦いたくない。だけど……)

そのとき、ノックの音。

「日本〜起きてる〜?」

空の声だった。

「……はい」

日本は小さく返事をして、部屋のドアを開けた。

そこに立っていたのは、無邪気な笑顔を浮かべた空。

けれどその笑みの奥にも、なにか危ういものがあった。


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