⚠一次創作
⚠GL
⚠曲パロ
「はじめまして!」
澄んだ声が上から降ってくる。
顔を上げると、長い髪の女の子がニコニコと微笑みながら立っていた。
「私、前の席の奈々!あなたは?」
長い髪を靡かせて前の席に座った少女は、そう笑いかけた。
胸がどきりと弾んだ。
「相川…さやか」
「さやかちゃん!友達になろう」
二つ返事で頷く。
その時にはもう君に恋していた。
「よろしくね」
って絞り出した声は、思わず震えた。
仲良くなるのにそう時間はかからなくて、
「さやかちゃーん!」
登校中、私を見つけると手を振って駆け寄ってきてくれる。
心臓が跳ねる。
それを気付かれないように大きく手を振り返す。
こんな平凡だけど幸せな日々が続きますようにって、心の中で願った。
「奈々の髪は長くて綺麗だね」
黒曜石のような黒く長い髪に触れる。
手の中のそれは窓から差し込む太陽の光で煌めいていた。
「へへ、嬉しいな。さやかが言うなら伸ばすよ!」
君はそうはにかんだ。
長い髪を丁寧に梳かして結ってやる。ふわりと甘く香るシャンプーの匂い。
特別な色をした、大切な大切な日々の記憶。
「紹介するね。彼は───」
澄んだ声が知らない名前を呼ぶ。
その手は隣の彼のそれと絡められていた。
「恋人ができたの」
と頬を染める君。
胸がキューッと苦しくなって、胸が熱くなって。
でも君があまりに嬉しそうに笑うから。
君が幸せならそれでよかった。
「あ、いたいた。奈々…?」
君の後ろ姿に声をかける。
振り向いた君は私に近寄り、くしゃりと泣き出した。
「なに、どうしたの?」
「喧嘩したぁっ!」
どうやら恋人と喧嘩をしたみたいだ。
付き合って初めての喧嘩は仲直りまでが遠くって。
(このまま私のものになればいいのに)
なんて自分でも気付かないうちに考えていて。
その気持ちを慰めるように、君の短くなった髪をそっと撫でてみた。
そう、短い髪が好きだと彼に言われた君は、あの長かった髪を切ってしまった。
私の大好きな君は彼のものだと嫌でも感じる。
「大丈夫。奈々の事だし、すぐに仲直りできるよ」
口ではそう言っても、胸には黒いモヤモヤが絡まっていた。
それは酷く残酷な日々の記憶。
私のそんな言葉も虚しく、恋人と別れたらしい君は瞼を腫らしてずっと泣いていた。
君をこんなにも悲しませて泣かせた男を憎らしく思う。
「私なら君を守れるよ」
そう言って震える体を抱き締めた。
夕焼けが私達を照らす。屋上で2人きり。
「私だけの騎士様だね」
と、顔を上げた君の表情は作り笑い。
嘘をつくのがとても下手な人。そんな所までも愛おしい人。
私なら泣かせたりしないのに。
「長い髪のほうが好きだったよ」
ともう一度言ってみると、はにかんだ。
遠い昔を思い出す。
幼かった私のこと。いや、私達のこと。
月日は流れ、結局言えないまま今日になった。
白いドレスを纏う君の髪はショートカット。
「やっぱりショートが奈々には似合うね」
と言ったら涙が止まらなくなった。
「なんで泣くのよ」
と困った顔で笑う。
君は何も知らない、綺麗な変わらぬ声で。
私の方がずっとずっと君のことが好きなのに、君を幸せにできるのは私じゃないから。
分かっていた。ずっと昔から知っていたはずの事なのに、胸が苦しくなる。
君に教えてもらった痛み。
「君の幸せが嬉しくて。…嬉しくて」
涙を拭うふりをして手で顔を隠したまま、大切な大切な嘘をついた。
私の愛した君 / 傘村トータ
コメント
7件
素敵すぎました......曲聴いてみてからまた読んでみようと思います
百合好きのあたしからすればまぢ国宝過ぎです。。。最高😿💞
あーーてまりさまの一次創作の百合‼️‼️😭😭 最高すぎますすきです!! 女の子の片思いとかもうすきです😿💖 設定とか後々の物語とかちょう好みです!!!!