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盛大な誕生日のお祝いが眠くなってしまった主賓不在のままでも続く中、柊也とルナールは疲れを理由に宿屋へと戻って来ている。休憩用にと昼間に用意された宿を彼らは今晩そのまま使わせてもらう事になった。宿屋にある露天風呂はこの時間柊也達の為に貸切で、二人以外誰も居ない。
「お疲れ様でしたー!」
柊也は上機嫌な声でそう言うと温泉に浸かりながら手に持つお猪口を上に掲げた。中には宿屋が用意してくれた地酒が入っており、湯の上に浮かぶ木製のお盆には魔法効果で冷たいままになっている酒が入る徳利が乗っている。
「お疲れ様でした、トウヤ様」
ルナールもそう言うと、軽くお猪口を掲げてそっとそれをお盆に戻した。
「お猪口に、徳利に、温泉露天風呂!満月は綺麗だし、景色も素敵だし……もう文句無しだわー」
気持ちよさそうに息を吐き出し、柊也は露天風呂の縁に寄り掛かった。
宿屋にあるこの露天風呂は綺麗に磨かれた岩を並べて造られており、檜で作った屋根もあって、雨が降っても温泉に入れる仕様になっている。低めの柵と植木に風呂場の周囲は囲まれており、奥にはラウルの演出により星の様に明かりの輝く海と、大きな満月が見える。『露天風呂に入るにはとてもいい日だ!』と柊也はにんまりとした笑顔で思った。
「いやー、まさかこんな洋風バリッバリのファンタジー感丸出し世界に、こんな和風の温泉があるなんてビックリだよぉ」
「こればかりは、民族の根底にある欲求が、反転する事を許さなかった部分なのでしょうね」
「ふーん?」
言ってる意味はよくわかんないけど、まぁいいやぁと思いながら柊也がお酒を一口飲み、プハーッとまた息を吐き出した。こうなると、幼顔だろうが小柄だろうが正直少しおじさんっぽい。
「いやぁ……しかも地酒があるとか!最高だねぇ、んー成人していて良かったぁ!」
辛口の地酒をまた一口飲む柊也を見てルナールがちょっと心配そうな顔をした。
「大丈夫ですか?トウヤ様。そのようなペースで飲まれると……それこそ、お酒に呑まれてしまいますよ?」
「んー……そうだね。お酒がこうも美味しいと、つまみも欲しくなるね。あ、ルナールも飲んでるぅ?」
飲み始めてさほど時間もたっていないのに、現時点で既に、柊也の発する言葉に少し脈略が無くなってきている。
「え、あぁ……はい。それよりもトウヤ様、この地酒はアルコール度数が高いので、温泉で浴びるように飲むのはオススメ出来ませんからね?」
ルナールは飲んでいないが、適当に誤魔化して柊也の顔を横から覗き込んだ。顔も体も真っ赤で、温泉効果もあってか、短時間でかなりお酒が回っているみたいだ。お酒を飲むのは好きなようだが強くはないらしいなとルナールは思った。
「トウヤ様、一度こちらに座りませんか?」
温泉の縁部分に当たる岩の上に白いタオルを敷き、ルナールがポンポンとタオルを叩いた。
「おおーいいねぇ。涼しい風に当たりながら、温泉に足を入れてお酒を飲む!ホント素敵だねぇ」
ほろ酔い……よりは、ガッツリ酔っている感のある柊也がルナールの誘導に従い、敷いてくれたタオルに腰掛けて足湯状態になった。
頭に乗せていたタオルを腰元にかけて下半身を隠す。ルナールも隣に腰掛けたが、同じようにはしなかったから色々と丸見えだ。
「風が気持ちいいねぇ、ルナールもそう思わない?」
猫みたいに目を細め、柊也が夜風を楽しむ。海がすぐ目の前にあるので磯の匂いが混じっており、柊也は海水浴なんかも出来たらいいのにと少し思った。だがこれは遊びで始めた旅ではないので酔ってはいても柊也は言葉にしなかった。
「そうですね、とっても気持ちがいいです。私は最近森の中にばかり居ましたから、こうやって磯の香りを感じながら入る温泉はとても新鮮です」
ルナールの長い髪は団子状にまとめているが、半端な長さで後ろにまとめられなかった横髪が風で揺れた。白い肌は温泉の温かさでほんのりと赤く色づき、ちょっと色っぽい。
そんな姿をちらりと横目で見て、柊也は『同性婚……ねぇ』と心の中で呟いた。
「ねぇねぇ、ルナール」
「なんですか?トウヤ様」
お湯でガッツリと濡れ、重くなっている尻尾を少し揺らしながらルナールが返事をした。チラ見しかしていなかった柊也とは違い、ルナールの方はわりと無遠慮に柊也の姿をニコニコとした顔で見ている。ほんのり赤い肌をした柊也はルナールの瞳にとても魅力的に写り、愛らしいなぁと見惚れている中話しかけられ、ちょっと嬉しい。目を見て話せばじっと見惚れたままでいても不信がられない。もっと沢山話しかけてくれていいよ、さぁどんとこい!といった状態だ。
「トラビス、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫……とは?」
振られた話がトラビスの件で、ちょっとルナールのテンションが下がった。
「ラウルに無理矢理ホールドされて連れて行かれてたからさぁ、大丈夫かな?何かあったんじゃないかなぁって」
「まぁ、確かに何かは起きているかとは思いますよ」
今頃ラウルがトラビスに何を勤しませているかなど、あまり考えたくはないなぁと思いながらルナールが頷いた。
「え!何か?何かって何⁈」
(まさか、トウヤ様……本気でわからないのかですか⁈あの場でトラビスがプロポーズされたのを見ていたのに?)
本気でわかっていないっぽい柊也に対し、ルナールが驚いた顔をした。
「……まぁ、今夜は彼等にとって初夜に当たるでしょうから、仲良くやっているのではないかと」
「しょやだから、なかよく……?」
キョトン顔で『それって何だっけ?』と柊也が考える。お酒のせいで鈍くなっている頭では、単語の意味がイマイチ思い出せない。
「どうもわかっていない感じがありますね」
まったくもうこの子は……。そう言いたげな顔をルナールがすると、柊也が首を傾げた。
「こういう事ですよ」とルナールが言ったかと思うと、柊也の頰にチュッとキスをしてみせた。祝いの席の時の様な事故とかでは無く、意図的にワザと軽い音もたててみた。これならば流石に伝わっただろうとルナールが柊也の顔を見る。
「あ……あぁ!なるほどねぇ!」
酔っているせいもあってか柊也の声が無駄に大きくなった。ルナールの唇が触れた箇所に手を当てて、柊也が彼から顔を反らした。
不意打ちだったせいか、やけにそのキスが柊也の心体に響いた。心臓がばくばくと激しく高鳴り、お酒や温泉効果ももちろんあるが、やけに顔も赤い。
「そういえば、結婚するんだもんね。大人だし……そりゃ……あはは」
誤魔化すように無駄に笑い声をあげて柊也が俯いた。
(男同士ということもあってイマイチピンときていなかったけど、『しょや』って……初夜かぁ!)
柊也はちょっとだけ卑猥な想像をしてしまったが、気持ち悪いとかよりも気恥ずかしさの方が大きい。そのせいか『あわわ!』っと柊也が慌てた。知人達の痴態を少し想像しただけだというのに、スライムでの一件までをも連鎖的に思い出してしまい、体が勝手に反応してしまう。この時ばかりは、『何で僕は男なのかなぁ⁈』と自身の性別を恨みたくなった。
そっと体をルナールから遠ざけ、股間をどうにか誤魔化せないかと柊也が頭を悩ませる。
「……トウヤ様は、初心なのですねぇ」
愛らしさに見惚れていたルナールが、柊也の変化に気が付かぬはずが無かった。
柊也の背後からルナールが抱きつく様にくっつき、肩に顎を置く。じっと柊也の下半身を目に留め、見られないのをいい事にうっとりとした顔をした。
「う、初心とか……や、別に……」
だらだらと変な汗が柊也の額から溢れ出る。背中にくっつく肌はとてもたくましく、異性愛者である自分じゃドキドキする対象では無いはずなのに柊也は変に緊張してしまった。
イヤではない、イヤではないのだが、何故かもわからず『イヤじゃない』と思ってしまっている自分の心境をルナールに気が付かれてしまう事は是が非でも避けたい。
そんな柊也の心境を察する事なくルナールの手が彼の前へと伸びてきた。背後から片腕で柊也の腰を抱き、右手で膨らみを作っている白いタオルを大きな手で包む。
「ココが……随分とお辛そうですよ?少し想像してしまいましたか?知人の痴態を」
「そ!そんな訳ないじゃん!」
柊也のあげた声は裏返っていて『はいそうです』と言ってるも同義だった。
ルナールの手を掴み、股間から除けさせようと試みる。難なく手を離してはくれたが、そんな風になっている自分の姿を知られた事が恥ずかしくてしょうがない。
(露天風呂なんかでこんなふうになっちゃって……変態だって思われたかも!ルナールくらいしか僕には頼れる人が居ないのに、最悪だ)
ギュッと強く閉じた柊也の眦から少しだけ涙が零れ落ちた。恥ずかし過ぎて泣いてしまっている事を察し、ルナールの背にぞくっとした快楽が走る。自分は感情のブレ幅が狭いと思っていた分、余計に柊也に逢ってからの二日間の心の動きにルナールは歓喜した。何故こうもこの人は私の心を揺さぶってくるのか、と。
「トウヤ様、そう恥ずかしがらずに。私は貴方に何があろうとも、何が起きようとも、お側にお仕えしますよ」
「……本当に?」
軽く後ろをを振り返り、潤んだ瞳で柊也に見詰められてルナールの体が再びゾクリと震えた。
「えぇ、もちろんです」
「何があっても僕の側に居てね、お願いだよ?」
「えぇ!えぇ!もちろんですよ、この先『もう嫌だ』と言われようが、私はトウヤ様のお側におりましょう」
柊也の言葉に他意があろうが無かろうが、もうルナールはどうでもよかった。柊也にそう言われたという事実だけが重要で、取った言質はもう撤回させる気は無い。
「ありがとう、ルナール」
酔った頭では『ルナールに軽蔑されなかった事が嬉しい!』としか考えられず、互いの格好もど忘れしたまま、背後にいるルナールに柊也が体を預けた。
全裸のまま甘えられてはもう、蜘蛛の糸程に細いルナールの理性の糸が切れないはずが無かった。
「手始めにトウヤ様……私を忠誠心をお見せ致しましょうか」
ルナールなそう言うと、柊也の背後から離れ、彼の前に傅いた。
「え?……何、どうしたの?ルナール……」
落ち着かぬ股間のままなのに、目の前に座られて柊也が焦った。何をする気なんだろう?と慌てる頭で思っていると、ルナールがニコッと笑って柊也の下半身にかかるタオルの中に手を入れてきた。
「ルナール⁈」
焦る柊也の事も気にせず、ルナールが柊也の滾る怒張に顔を近づける。
大声をあげる柊也の静止など気にする気配などルナールには無い。あんぐりと口を開け、唾液で満ちた口をゆっくりと怒張しているモノに近づけていく。
初めて肌を接した時は『お清め』という理由が、その次は『スライムを排除する』という名目があった。触れた唇は事故だったし——でも、コレには納得出来る理由が無い。どう受け止めて消化すればいいのかもわからない事が起きようとしているのに、止められないまま、とうとう屹立がルナールの口内に包まれてしまった。温かく、しっとりとしていてとても狭い。そんな箇所にかぷっと屹立を包まれて、一気に酒に浸っている脳内が溶けた。
「あぁ……すごっ……」
腕で体を支え、岩に向かって倒れないよう堪える。でも嬌声は我慢出来ず、情けないくらい淫楽に染まった顔を柊也が晒した。
柊也の屹立の根元を緩く手で握り、ルナールが口に含んだソレを丁寧に舌で舐める。互いにとって経験の無い行為ではあるが、嬉しくなる程いい反応を柊也が返してくれるのでルナールの腕前がメキメキと上がっていく。
体格差がある為ルナールにとっては愛らしいサイズに見えてしまうモノを余裕をもっていたぶる。口内への挿入を早めたり、遅くしたり。先端の先走りが零れ出る箇所を舌先で舐めながら、唾液で濡れた陰茎部を手で擦り上げたりと、もうやりたい放題だ。
「いぃ、ルナ……あぁ。そんな、ダメッ」
腰が震え、柊也が淫楽に浸る。ダメだとは口にしても『止めて』とは言えない。気持ち良過ぎて止めて欲しいと言うべきだという選択肢がもうすっかり彼の中から消えている。
体を前に倒してルナールの頭に抱きつく。もう絶頂は目の前で、あまりに難なく達してしまいそうになるのを堪えるが、どう足掻こうが保ちそうに無い。
「ルナ……ルナールッ、ダメ!出ちゃうからもう離れてぇ」
口の端から垂れてしまう涎はそのままに、柊也が訴えた。だがルナールには聞く気がない。飲み込む事が出来ない事情がある事を悔やみながら、ルナールは柊也の体を容赦なく追い立てる。
「ダメ、ダメッ!ホントヤバイから——あぁっ、んっ、く……」
しゃぶり続けられ、柊也がルナールの口の中で果てそうになる寸前、彼は弾ける屹立を口から引き抜いた。それでも柊也の絶頂は止まる事無く、吐精した白濁液がルナールの顔に全てかかる。生温かい液体が大量に顔にかかったのに、ルナールは恍惚とした表情をして感嘆の息をついた。
指先でソレをすくい取り、白濁液のついた手をジッと見る。舐め取って自身の一部に出来ない事が残念で、ルナールはガッカリした気持ちになりながらそっと目を伏せた。
はぁはぁと肩で息をしながら、柊也はルナールの姿を複雑な気持ちで見ている。
(何故僕にこんな事をするんだろう?忠誠心を示すとは言っていたけど……コレって忠誠なの?え、何、文化の差ってやつ?あぁ……わかんない、わかんないよ——)
「……トウヤ様、大丈夫ですか?」
ただでさえアルコール度数の高いお酒を温泉で飲み、酔っている状態だったうえ、口淫までされて、もう色々と限界だったようだ。柊也がぐらりと揺れて体が倒れていく。
「トウヤさ——……」
柊也の耳に届くルナールの声が、途中で途切れた。