コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第1話:碧砂の地より
☀️ シーン1:廃墟に降り立つ者たち
昼下がり。
空は曇天、かつて碧族たちが暮らしていた都市は、瓦礫と砂に埋もれていた。
そしてその大地に、2人の影がゆっくりと降り立った。
ひとりは、短髪で陽に焼けた肌の男。ゴーグルを額にかけ、分厚い作業用ジャケットを肩で羽織っている。
腰のツールベルトには、杭打ち道具やフラクタル端末がぎっしり詰まっていた。
「ええ景色やなぁ……こんなボロボロでも、わいには最高のキャンバスや」
関西弁で陽気に笑うその男の名は――ケンチク。
都市を建て直す「シティデザイナー」であり、碧族の再興に命をかける者だった。
隣に立つもうひとりは、長身で背筋の伸びた青年。
黒髪を後ろで束ね、銀縁の眼鏡が知性を映す。
青と白の設計用スーツには、複数の端末コードが揺れている。
「……感傷に浸ってる場合じゃない。今日中に初期マッピング終わらせないと、すずかに怒られるぞ」
冷静に告げるのは――アセイ。
建物内部の設計と防衛構造を担うフラクタルプログラムデザイナー、通称“フラデザ”。
2人の端末に、柔らかくも芯のある女性の声が響く。
「おふたりとも、任務開始より17分が経過。
都市スキャンの開始を推奨します。初期座標、送信中」
声の主は、フラクタル建築支援用AI――すずかAI。
端末越しに響くその声は、設計者たちの“思考の一部になった存在”だった。
「おっと、来よったな。了解や、すずか!」
ケンチクはタブレットを掲げ、空中にホログラムを展開。
瓦礫の地形が透過スキャンされ、立体構造図が浮かび上がっていく。
🚚 シーン2:処理後チーム、現場入り
10分後、旧市街の中心部――そこには3人の作業者たちが先に到着していた。
「お〜い!ケンチクさ〜ん、遅いぞぉっぺ!」
「こっちはもう砂かぶってんだっぺよ!」
「……始めるぞ」
瓦礫を前に並ぶのは、処理後の人達。
ゴウ、ギョウ、キョウ――それぞれ個性的な装備を持つ現場のプロたちだった。
ゴウは筋骨隆々、右腕が重機型の義手となっており、力仕事担当。
褐色の肌に太い声、「〜だっぺ!」が口癖で、豪快そのもの。
ギョウは細身で眼鏡、白衣の下にスキャナーや分析装置を常備。
調査・解析担当で、皮肉まじりの「だっぺね」が印象的。
キョウは中肉中背で、マスクとキャップを常に装着。
無口だが警戒と緊急対応に特化した寡黙なエキスパート。
「うわー、懐かしぃ面子やなぁ。こっから街が生まれるんやで。……それが、最高に燃えるんや」
🛠️ シーン3:最初の一筆、都市は描かれる
アセイが端末で設計ソフトを立ち上げる。
空中にホログラムが広がり、碧色の線が未来の都市を描き始める。
「外郭ライン、風抜けと碧素通気を両立させる設計にする。
それと、塔の中心部に防衛機構を組み込むためのスペースも確保」
「ええやんええやん、外観はワイが美的センスで仕上げたる!どや、“風と碧光が流れる町並み”!」
「そんな抽象的な発注、久々に聞いたな……」
アセイが苦笑しながらも、ホログラム上の設計に即座に反映していく。
すずかAIが静かに告げる。
「設計初期化完了。
都市コード:仮称《碧律09》、構造定義を開始します。
建設士たちへ――ようこそ、再生の地へ」
街はまだ無に近かった。
だが、今この時から、命の都市が始まりを刻む。