TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

一つ屋根の下、地雷注意報

一覧ページ

「一つ屋根の下、地雷注意報」のメインビジュアル

一つ屋根の下、地雷注意報

35 - 第三十三話:「たったひと言で、ちょっと近づく夜」

2025年06月02日

シェアするシェアする
報告する

夜。部屋には蛍光灯じゃなくて、間接照明だけ。


テレビもついてない。

互いに別のことをしてる、静かな夜。


俺はソファで本を読んでて、

るかはテーブルでノートに何かを書いていた。

――勉強じゃなさそうだった。


時折、ペンの先が止まり、

スマホをちょっと見て、また書き足して。


そんなふうに時間が流れて、気づけば22時をまわっていた。



ふと顔を上げると、るかもこちらを見ていた。

どっちからともなく、目が合って、


「……今日、どうだった?」


同時に出た言葉に、ふたりで一瞬だけ黙った。

少しだけ笑って、俺の方が先に言葉をつなぐ。


「俺はまあ、ふつう。ちょっと眠かったくらいかな」


るかはうなずきながら、視線を下げる。


「……あたしは、んー……

 授業だるかったけど、ひとつだけ面白かった」


「どれ?」


「社会。先生が意味わかんない例えしてて、みんな笑ってた」


「るかも?」


「……ちょっとだけ」


その「ちょっとだけ」の言い方が、妙にかわいくて、

俺は返事をしないまま、少しだけ目を細めた。



「……そっちは? なんか嫌なこととかあった?」


「んー……なかったよ。

 仕事はふつう。でも、朝の味噌汁が効いたかもな」


「は? それ、地味に褒めてんの?」


「うん。るかの“温めて”が今日のスタートだったし」


「……なにそれ、バカっぽ」


口ではそう言いつつ、るかの口元が少しだけゆるむ。



ほんの短いやりとり。

でも、こういう小さな会話が一番心に残るのかもしれない。


照れも、気遣いも、素直さも、少しずつ混ざり合って、

“ふたりの時間”になっていく。



沈黙が、会話のあとに訪れた。


でも、さっきよりずっと、やさしい沈黙だった。

一つ屋根の下、地雷注意報

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚