テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……え?」
女が驚いた反動で拓人の顔を凝視すると、彼は、苦笑しながら俯き、小鼻に触れる。
「多分、送迎役のヤツらは、俺が警察にチクると思ってるんだろうな。だからヤツらは……俺を口封じで始末したいんだろう。それに、闇バイトのボスは、まだ捕まっていないし、俺も、どんなヤツが黒幕なのかも分からないんだ」
「そ……そんな……」
淡々と語る拓人に、優子は呆然としながら、眉尻を下げる。
「俺は、いつヤツらに捕まるかも分からない。下手したら、あんたの命を脅かす事にもなるかもしれない。それでもあんたは……」
彼は眼光鋭い視線を、女に向ける。
「…………俺と一緒に行くか?」
吊り上がり気味のクールな拓人の目元が、優子の瞳を捉えて離さない。
「無理だって言うんなら、今のうちに引き返した方がいい。あんたとは、これでサヨナラだ」
女は、彼から顔を背け、開け放たれた窓に視線を伝わせる。
「この先、どうするか。あとは…………あんた次第だ」
一緒に行かないか、と言いながら、自分が手を染めた闇バイトの事や、追跡されている事を話し、女に選択を迫る自分は、優子を試す下衆な男だ、と、拓人はつくづく思う。
だが、今の彼は追跡されつつ、命も狙われているのだ。
無関係の女を巻き込み、ただでさえ前科持ちの優子の人生を、破滅の道へ向かわせようとしている。
それでも、優子に来てほしい、と願ってしまう拓人。
(俺…………自分本位だし……やる事が汚い男だよな……)
窓辺を見やる女の後ろ姿を、彼は改めて『いい女』と思ってしまう。
ひとしきり沈黙を通していた優子が振り返ると、拓人に柔和な笑みを湛えた。
「アンタさぁ、何言っちゃってんの?」
「いや…………なっ……何って……」
「ここまで来て、『はいそうですか。じゃあさようなら』って私が言うとでも思った?」
事もなげにサラリとした口調で、優子に口火を切られると、拓人は思わず呆然としてしまう。
「立川を発つ直前、私、言ったよね? 乗り掛かった船だし、アンタに付いて行くって」
「いっ……いや…………そうだけど……さ。追われている身の俺と一緒にいたら……あんたの命にも……関わるかもしんないんだぜ?」
コメント
1件
…優子の運命はどうなって行く?