テラーノベル
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まだまだ夏の香りが残る残暑。秋風の足音が微かに聞こえるか、という季節。
私、山田唯と、友人である高梨花菜は、私の家にお菓子片手に集まっていた。
「やっぱポテチはコンソメだよねぇ〜」
「えのりしおが正義だが」
「お、争うか?ええんか争っても」
「いいぜその喧嘩買ったよ」
度々このようないさかいをしつつも、概ね平和に雑談の応酬は続く。菓子をつまみ、隣でたまに聞こえる尊死の断末魔を聞き流す。いつものルーティンだった。
そんな日常の中、ふと、気になって。隣の友人に声をかけた。
「ねぇ花菜」
「ウッ ビジュ ガ カミッ……ん?どした?」
「推しさんのどこが好きになったの?」
そこまで狂えるその人を、「推したい」と思ったのはなぜなのだろうか、と。気になったのだ。いつも言っている見た目か?それとも、声だろうか?
花菜はそう聞かれると、顔を手で覆い深呼吸をする。
「ッスゥーー……さんじかんまって」
「長ッッッが!?」
「いかんせん狂ってる年月が長すぎてな…」
「本当に最初、いっちばん最初の『いいなぁ』って感じたところ!」
花菜はしきりに首を捻っては顎に手を当て、眉間に皺を寄せながら考えている。熟考、という言葉がぴったりの様相だ。
数分経って、花菜がぱっと目を開ける。思い出した、とでも言うように。
「あ、そうだった」
「なになに?」
「性格だ」
性格か。
その声を聞いて、なんとなく意外だと思った。「ビジュが大優勝」などは頻繁に聞くが、「性格が好き」とはあまり聞かないから。
なんでだろう、と感じている私に気づいたのか、花菜はそのまま語り出す。
「初めて見た時に、『面白い人だな』って思って」
「二回目に見た時に、『丁寧な人だな』って思って」
「三回目に見た時に、『素敵な人だな』って思ったんだ」
第一印象は面白い。第二印象は丁寧。第三印象は素敵。
あぁなんだ、理に適っているし、それもそうじゃないか。
「魅了的だから、あんなにファンがいるんだもんね」
分かりきっていたことだ。何十万人が彼を愛していると思っていたのだろうか。彼の描いて来た軌跡が、何よりもその証明だと言うのに。
彼が魅了的だからこそ、その後を追って応援する人がいるんだから。
「そうだよ。ビジュがどんなに良くても声が良くても、」
「『その人』を推したいって思うには、内面が魅了的じゃないとだもん」
「……深いねぇ」
「そうでしょ、深いでしょ。私の推し、最高なんだよ」
「オススメの動画とか配信教えてよ」
「え、良いの!?!?じゃあまずこれね!まずはこれだけでいいから!」
「に、2時間あまりの総集編…!!」
LINEで共有されたその動画。
面食らいつつも、時間があるときに、ちょっとずつ見ていこうと思った。
羽海汐遠
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コメント
1件
おお、これはいい話でしたね。推しの魅力って確かに外見や声だけじゃないですよね。花菜さんが「面白い→丁寧→素敵」と段階を踏んで惹かれていった話、すごく納得しました。ビジュアルが優勝してても、内面に惹かれなきゃ長くは推せない…その感覚、わかります。お菓子つまみながらの雑談が地続きで、こういう深い会話ができる友達っていいなあ。最後の「2時間総集編」で笑いました(笑)