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翌朝
カーテンの隙間から差し込む柔らかな光で目が覚めた。
シモンズベッドの上質な寝心地のおかげで昨日一日の移動と温泉の疲れはすっかり取れ、体は軽やかだ。
隣のベッドでは瑞希くんがまだ静かに眠っている。
ちらりと露天風呂のある窓の外に目をやると
朝日に照らされた木々がキラキラと輝き、清々しい空気を感じさせた。
着替えてリビングに戻ると、将暉さんと仁さんはすでに起きていて
ソファでコーヒーを飲みながら今日の予定を話し合っているようだった。
「楓くん、おはよう」
仁さんが優しく声をかけてくれる。
「おはようございます!」
と返事をしながら、俺も部屋のコーヒーメーカーで一杯淹れた。
温かいコーヒーの香りが部屋に満ちる。
「ふう…そろそろバイキング行こっか」
将暉さんが立ち上がり、伸びをしながら言った。
「ほら瑞希~、起きて。朝ごはん行くよ?」
瑞希くんはまだ少し眠そうな顔をしていたが、朝食の話になると途端に体を起こした。
朝食会場はすでに多くの宿泊客で賑わっており
活気に満ちた声と、様々な料理の美味しそうな香りが入り混じって、食欲を一層掻き立てる。
「昨日よりこっちのが好きかも」
瑞希くんが思わず声を上げた。
それもそのはず、バイキング台には和洋合わせて30種類以上もの料理がずらりと並んでいたのだ。
彩り豊かなサラダバーには新鮮な野菜が並び、ドレッシングも何種類もある。
隣には温かいパンが並べられたベーカリーコーナーがあり、焼きたての香ばしい匂いが漂っていた。
クロワッサンやデニッシュ、ロールパンなど
どれもこれも美味しそうで、つい目移りしてしまう。
「和食も充実してるな。卵焼きに焼き魚、煮物…」
仁さんが感心したように呟いた。
確かに、和食のコーナーも負けてはいない。
ふっくらとした出汁巻き卵、鮭の塩焼き、筑前煮に湯豆腐。
小鉢に盛られた清物やひじきの者物も一つ一つ丁寧に作られているのがわかる。
ご飯も、白米と炊き込みご飯の二種類が用意されていた。
「俺、洋食から攻める!」
瑞希くんは迷いなくパンコーナーへ向かい、トングでクロワッサンを掴んだ。
将暉さんも微笑ましそうにそれを見ていた。
それはさておきと、俺はまず、温かいスープとサラダから取ることにした。
シャキシャキのレタスにキュウリ、トマト
彩り鮮やかなパプリカを乗せ、和風ドレッシングをかける。
そして、隣にあったベーコンとスクランブルエッグも忘れずに。
仁さんは、和食の煮物と焼き魚を中心に選び、湯豆腐を小鉢に盛っていた。
「なんか最近のさん健康志向ですよね、前までカップ麺日常的に食べてそうだったのに」
なんて声をかけると
「いや、そこまでじゃないから」と笑って
「年考えるとな」と言った。
席に着くと、まずは出来立ての温かいスープを一
口。
じんわりと体が温まる。
将暉さんは、和食と洋食をバランスよく取ってきていた。
ご飯に味噌汁、そして小さな器に入ったカレーまである。
「朝からカレーかよ、マサ」
仁さんが呆れたように言うと、将暉さんは得意げに笑った。
「わかってないね〜朝だからいいんじゃん。楓ちゃんもせっかくだし取ってきたら?美味いよ」
半信半疑で席を立って俺も少しだけカレーを盛ってきて、席についてスプーンで1口食べてみると
確かにこれは絶品だった。
「うわ、おいし……朝カレーいいですね…!」
まろやかなコクがありながら、スパイスが効いていて、朝から食欲を刺激する。
仁さんは、湯豆腐をゆっくりと味わいながら
「ほんと楓くん好きだよね、辛いもの」と満足げに呟いた。
「ふふっ、格別です!仁さんも食べます?」
「……あー…じゃ、ひとくちだけ」
俺がスプーンで掬って差し出すと、仁さんは目を細めてパクリと口に入れた。
「…うまいな」
「ですよねー」
仁さんに1口あげると、引き続き俺はカレーをスプーンで掬ってパクパクと食べていく。
そんなとき、瑞希くんが俺とさんの顔を覗き込むように怪訝そうな表情で見つめてきた。
「ねえ、一応聞くけど…あんたら本当に付き合ってないんだよね?」
急に突拍子もないことを聞いてきた。
「おま、朝から何言って…」
仁さんは驚いているのか口ごもり
俺は苦笑いして「何言ってるんですか」と言いかけたところで
「なんかいつも距離近いし、今だってどさくさに紛れてあーんしてたけど?」
見透かしたような目で言葉を続ける瑞希くんを
いつもなら宥めてくれる将暉さんまでもが
「な~、見てるこっちが恥ずかしい」
なんて言ってくる始末。
「そ、そんなんじゃないですって!仁さんの前だと、つい気抜けちゃうっていうか…」
俺は慌てて否定した。
「へえ、いつか喰われそ」
「へ?ど、どういう…」
瑞希くんがにやにやして言ってきて俺はどう答えていいかわからず、言い淀んでしまう。
そんな俺を気遣ってか、仁さんは
「あんま楓くん困らせんなよ」と、俺たちの会話を区切ってから言った。
俺たち四人はそれぞれ朝食を終え、後片付けを始めた。
食器を戻しながら、ふと横目で仁さんを見る。
彼は涼しい顔をしているけれど
さっきの瑞希くんの言葉がまだ少し頭に残っていて目が離せなくなっていた。
4人で部屋に戻る最中
仁さんと俺の前を歩いていた将暉さんが思い出したように口を開いた。
「あ……そうだ、昨日伝え忘れてたけど今日は横浜銀行アイスアリーナってとこいくから」
「えっ!もしかしてスケートですか?!」
俺は嬉しくて思わず声を上げた。
「そそ、楓ちゃんスケート好きなの?」
「いや、中学生以来で…しかもずっと行ってみたかったとこなので…!」
「そりゃちょーどいいね。チケット取ってあるから4人で楽しも」
そんな会話の後に部屋で身支度を整え
そのあと、時間短縮するために再び将暉さんの車に乗り込み
60分ほどで目的地の横浜銀行アイスアリーナに到着した。
車が駐車場に入り、将暉さんの声が到着を告げた。
助手席の窓から顔を上げると、高速を降りてすぐに見えてきたのは、ひときわ大きな建物群
横浜銀行アイスアリーナだった。
地図で見ていたよりもはるかに巨大で、複数の棟が連なっており
スケート場だけでなく、トレーニング施設なども併設されているという話にも納得がいく規模だった。
駐車場に車を止め、将暉さんが慣れた足取りで建物の中へと進んでいく。
瑞希くんもどこかワクワクした表情でその後を追った。
建物の中に入ると、ひんやりとした空気が肌を撫で、スケートリンク特有の匂いが漂ってきた。
広々としたエントランスホールには、家族連れやカップル、学生グループなど様々な人々が行き交っている。
将暉さんは案内板に目をやりながら、まずはチケット購入が必要であることを示唆し
2階に券売機があることを確認し、4人で2階へと上がっていく。
2階の券売機前には、数組の列ができていた。
券売機はタッチパネル式で、貸靴付きや貸靴なし
時間貸しなど、様々な種類のチケットが選べるようになっていた。
なにやら常連らしい将暉さんが代表して操作し、俺たちの分のチケットを購入してくれた。
受付に向かうと、明るい笑顔のスタッフが迎えてくれた。
購入したチケットをスタッフに見せると、スムーズに通過できた。
場内に入ると、目の前には大きなスケートリンクが広がり、すでに多くの人々が滑っていた。
瑞希くんは「スケート場とか初めて来た…」と言いながら目を輝かせてリンクを見つめていた。
将暉さんは笑いながら
「じゃ、俺がエスコートしたげる」と瑞希くんの頭を軽くポンと叩き
次は貸靴コーナーへ向かうことを促し、自分のサイズに合う靴を選ぶように伝えた。
貸靴コーナーは受付のすぐ隣にあり、壁一面に様々なサイズのスケート靴が並んでいた。
係の人がサイズを尋ねてくれて、それぞれの足に合った靴を出してくれた。
将暉さんは慣れた手つきで紐を締め始め