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「…………分かった。ホテルを出たら、東京に戻ろうか」
拓人が女に微笑み掛けると、優子に訝しげな表情を向けられる。
「…………アンタ、不気味なほどに優しい口調じゃない? 何を企んでいるのやら……」
女もベッドから出ると、床に放置してあった下着と服を手早く拾う。
「いや、何も企んでないし」
「ふぅ〜ん……」
「俺…………マジであんたに信じてもらえてないんだな。本当に何も企んでない」
二人は身支度を整えると、チェックアウトを済ませ、ホテルの駐車場へ向かう。
「今から神戸を出発したら、東京に着くのは、渋滞する事も考えて、恐らく夜になるかもしれないな……」
「いいよ。サービスエリアに寄りながら戻っていけばいいし」
「了解。じゃあ出発するぞ」
二人は、拓人の愛車に乗り込み、神戸を発った。
東名高速道路に入ってすぐの事。
拓人の愛車のカーステレオが、ラジオを低いボリュームで流している時、あるニュースを聞いた彼の表情が急変する。
『次のニュースです。昨年十二月、東京の赤坂見附で発生した屋敷放火事件の指示役の女が逮捕されました』
拓人は弾かれたように、眉間に皺を刻みながら、チラッとカーステレオを見やる。
「…………どうしたの?」
彼の様子に気付いた女が、ステアリングを握りながら、厳しい表情を映し出している拓人に声を掛ける。
「悪いんだけどさ、カーステのボリュームを上げてくれるか?」
「あ……うん……」
優子は、ボリュームを上げると、黙ってラジオのニュースに耳を傾けた。
『逮捕されたのは、ピアニスト、島野レナ容疑者三十四歳で、島野容疑者は、自宅のあるオーストリアからインターネットを通じて闇バイトで実行役を募り、放火の指示をしたと見られています』
「…………黒幕が……ついに捕まったようだな」
拓人は大きくも短いため息をつきながら、前方を見据えていると、ニュースは更に続いた。
『オーストリア警察が島野容疑者を二日前に拘束、日本へ強制送還され、今朝、逮捕されました。島野容疑者は黙秘しており、二十代の女性を性的暴行及び拉致監禁の闇バイトで実行役を募集、指示した疑いもある事から、現在、警察は慎重に捜査を進めております』