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ニュースを聞き終えた車内の二人の間が、澱んだ空気に覆われていく。
「ねぇ。このニュース…………まさか……アンタが以前、私に話してくれた……」
「ああ。その『まさか』だ。二つの闇バイトの黒幕が…………ピアニストだなんて、思いもしなかったけどな……。けど……俺を追い回している『送迎役』の連中は…………まだ捕まってない」
ステアリングを掴む拓人の指先に力が入り、感情を抑えた低い声音で言い捨てる。
「…………」
助手席の優子は、返す言葉が見つからないのか、無言のままだった。
「アイツらが警察に捕まるか、俺がアイツらに捕まるか。もうここまで来ると、時間の問題かもしれないなぁ。だが……」
彼が、フゥっと息を零し、フロントガラスの向こう側の景色に視線を送る。
「俺は…………逃げ切ってやるよ」
まるで誓いの言葉のように、拓人は言い放った。
日は既に西へ傾き始め、車窓に映る景色も、徐々に見慣れた風景に変化している。
「さて、東京まであと少しだ。事故らないようにしないとなっ」
「そっ……そうだね。安全運転でよろしくねっ」
どんよりとした雰囲気を払い飛ばすように、拓人は、敢えて明るい声色で女に声を掛けると、優子も釣られたように答えた。
***
渋谷の拓人の自宅に着いた頃には、空が闇に染め上げられていた。
まる一日のロングドライブに、二人は彼の部屋に入るなり、荷物も玄関に放置したまま、ソファーに倒れ込む。
「やっと帰ってきた、って感じだな」
「やっぱり、東京は落ち着く……。でも、ずっと運転しっぱなしだったよね? お疲れさま。ありがとう」
疲労困憊の拓人は、女から労いの言葉を掛けられた。
「こんなに長時間、車を運転したのは、俺も人生初だな。とりあえず、シャワーでも浴びてくるわ。あんたも一緒に浴びる?」
彼がニヤッと唇を歪めると、女は満面の笑みを拓人に向けた。
「いや、謹んでご遠慮させて頂きます」
「何だよ、つまんねぇなぁ。あ、テレビ見たかったら、スイッチ点けていいよ」
彼が着替えを持ち、バスルームへ向かうと、優子は、暇つぶしにテレビの電源を入れた。