テラーノベル
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時は遡る。
戦いが終わって間もない頃。
グラディウス。
かつて栄えていた街は、今や瓦礫の山と化していた。
メラメラと炎が燃え続ける。
崩れた家屋。
砕け散った石畳。
焼け焦げた木材。
割れた酒樽から流れ出た酒が、血と混じり合って地面を濡らしている。
辺りには静寂だけが広がっていた。
そこかしこに倒れる人々。
白銀騎士団。
そして、冒険者狩りの一味。
戦いの凄惨さを物語るように、多くの亡骸が横たわっていた。
そんな戦場を。
二つの人影が静かに歩いていく。
一人は黒いローブを羽織った青年。
アルド。
その隣には、地面に足を付けることなく宙へ浮かぶ一人の女性。
女神セレスティアだった。
二人は巨大な瓦礫の前で立ち止まる。
アルドが周囲を見回し、小さく呟く。
「……確か、この辺だったよな。」
セレスティアは瓦礫を見つめながら頷く。
「ええ。」
「ここで間違いないわ。」
少し間を置いて、アルドを見る。
「……本当にやるつもり?」
「もう死んでるのよ。」
「このまま眠らせてあげればいいじゃない。」
アルドは苦笑した。
「お前。」
「そんなにあいつが嫌いか?」
「ええ。」
セレスティアは即答する。
「大っ嫌い。」
あまりにも迷いのない返事に、アルドは思わず肩を震わせた。
「そこまで言うか。」
「言うわ。」
腕を組み、そっぽを向く。
「性格は最低。」
「口は悪い。」
「品もない。」
「うるさい。」
「もう会いたくないくらいには嫌い。」
アルドは呆れたように笑う。
「まぁ。」
「だからといって、やめるつもりはないけどな。」
杖をゆっくり握り直す。
「自分で言っただろ。」
「仲間を集めるって。」
「だったら、こいつは丁度いい。」
セレスティアはため息をつく。
「そういうところだけは、本当に魔王らしいわね。」
アルドは瓦礫へ向かって歩き出す。
巨大な岩を見つめる。
その下には。
白銀騎士団と死闘を繰り広げた男。
冒険者狩りの首領。
ゼルヴァン・グリードが埋もれていた。
アルドは静かに杖を持ち上げる。
魔力が集まり始める。
空気が震えた。
足元に漆黒の魔法陣が広がっていく。
その紋様は、人間の魔法とは明らかに違っていた。
複雑に絡み合う古代文字。
何重にも重なる円環。
そして、その中心から黒い光が溢れ出す。
セレスティアが真剣な表情になる。
「……その魔法。」
「今の時代じゃ使える者はいない。」
アルドは静かに頷いた。
「ああ。」
「禁忌魔法だからな。」
死者へ干渉することを許されない術。
命の理へ逆らう魔法。
世界そのものから忌み嫌われた術式。
ゆっくりと目を閉じる。
古代語による詠唱が始まった。
誰も理解できない言葉。
世界が忘れ去った神代の言語。
魔法陣が脈打つ。
ゴゴゴゴゴ……
瓦礫が震え始めた。
地面が揺れる。
空気が唸る。
黒い魔力が巨大な渦となって瓦礫の隙間へ流れ込んでいく。
アルドは杖を突き出した。
そして、静かに告げる。
「……さぁ。」
「目覚めろ。」
その瞬間。
瓦礫の奥から、
ドクン。
心臓が脈打つような音が響いた。
コメント
1件
もう第31話まで読んだんだね…!このエピソード、時を遡る冒頭からして「えっここから始まるの!?」って惹きつけられたよ😳✨ 特にアルドとセレスティアの会話が最高…「大っ嫌い」「即答」のコンビネーション、笑ったけど愛おしい😂💕 それでいて禁忌魔法使って死者を蘇らせようとするアルドの覚悟、そして最後の「ドクン」っていう鼓動の演出…鳥肌たったよ…!!ここからどうなるのかマジで気になるーっ!!リユさんの作品、毎回キュンとゾクゾクが同時に来るんだよね…次話も楽しみにしてるね!!📖🔥
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