テラーノベル
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「おかーさん!ただいま!あのね!今日ね!友達が…」
らだと別れて家に着いたとき、そう大声でドアを開けた。
そしていつもの声がなくて気づく。
「そうだ、お母さん、いないんだった……」
いや、いないんじゃない。
そう、お母さんは死んだんだ。
わかってる。
わかってはいるけどまだ実感がなくて、今でもお母さんはあの箱の中で眠ってて、いつか寝坊しちゃったっていつか起きてくれるんじゃないかって。
期待してしまうのがどうしてもやめられなくて、やめたくなくて。
気分が沈んだような心がここにないような足取りで台所へ向かう。
冷蔵庫からお弁当を取り出してレンジに入れる。
レンジの動く音だけがここにあって、僕は明日が早く来ないかなぁと空中に指で文字を書くように独り言を漏らした。
どこかに色と音を置いてきてしまったようなまま、僕はいつも通りになってしまった習慣をして、布団に入った。
「じゃあ、私買い物に行ってくるから、いい子にしてるんだよ?絵斗?」
「連れてってくれないの〜?!」
「ふふ、絵斗の好きなお菓子と、ジュース!買ってくるから…許して?」
「うう〜ん、わかった!待ってる!」
「じゃあ、行ってきます。」
「うん!行ってらっしゃい!」
これは夢なんだろう。
だって見たことがあるから、そう思っていると視界はバチっとカットが入ったようにまた別の光景を映し出す。
暗くなった周りをリビングルームの窓から眺めていると玄関の開く音が聞こえてくる。
「!お母さん?おかえ…お父さん!今日は早い日なの?あのね今、お母さんが買い物で出かけててね、遅いの!」
「………絵斗…。大丈夫だ、大丈夫だから、大丈夫、大丈夫なんだ…。」
「お父さん…?」
僕を見ると縋りつくように僕を抱きしめて、譫言のようにぶつぶつと大丈夫というのに嫌な予感が走った。
これ以上は見たくない、いつもの夢だ、この続きはきっと…。
またバチっと途切れる。
お坊さんのお経の声と周りのヒソヒソ声がそこを占めていた。
「天乃さんとこの奥さんは事故だったんだって…」
「やぁねぇ…しかも搬送されて病院で家族が誰も看取れなかったんだって…?」
「かわいそうに…しかも、お子さんはまだ7歳なんですって、」
「小学校に入ってばかりなのに…」
「それに夫さんの仕事の事情で今度引っ越しするんですって…」
「それは……」
嘘だ。信じない、みんな嘘ついてるんだ。そう言って至って無垢な目で静かに駄々をこねる僕がいて、数ヶ月もすれば今みたいに嫌でもわからなきゃいけないってわかってくるのにと冷えた目で僕は僕を見る。
ここまでくると僕の心は冷え切って、悴んで夢が過ぎ去ることを祈るしかないけど今回はらだがいるから、会ってまだ初日だけど、らだがいるから。
そう思って目を閉じた。
そうするとらだのあたりの心がすごく明るく、暖かくなって、久しぶりに優しい眠りの中に落ちていった。
コメント
1件
ああ、もう…これ胸にくるね。第1話であれだけ明るかった絵斗くんが、家に帰って「お母さんいないんだった」って気づくシーン、一気に空気変わったわ。夢の中でお母さんとの思い出と、現実の葬式の場面が交互に来る構成が効いてて、7歳の子が理解しないといけなかったことの重さがひしひし伝わってきた。でも最後に「らだ」のあたたかさに包まれて眠れるって描写、めちゃくちゃ救いだった。らだという存在がすでに絵斗くんの心の拠り所になってるの、いいな🔥
#ご本人様とは一切関係ありません
#○○の主役は我々だ!
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