テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
芙月みひろ
#裏切り
537
Scene49(有莉澄視点)
先輩の「続き、聞いていただけますか」という声が
まだ胸の奥に残っている。
カップを置く音が、
やけに大きく感じた。
「……はい。聞きます。」
自分でも分かるくらい、
声が少しだけ震えていた。
緊張じゃなくて、
期待のほうが強い。
先輩はゆっくりと息を吸う。
その仕草が、
さっきよりもずっと覚悟を帯びている。
「あなたに……
どう思われたいのかを考えていたら、
返事が遅くなることが増えてしまって。」
その言い方が、
どこか照れているみたいで、
胸がまた跳ねる。
「えっと……
そんなに気にしてたんですか?」
丁寧語なのに、
声が少しだけ近い。
先輩は小さく頷く。
「はい。
あなたの言葉を読むたびに……
もっとちゃんと返したいと思ってしまって。」
(……もっとちゃんと?
私に?)
胸の奥がじんわり熱くなる。
「そんな……
気にしなくてもよかったのに。」
自然と笑ってしまう。
深刻じゃなくて、
ただ嬉しかった。
先輩は視線を落とし、
指先をそっと組む。
「……気にしますよ。
あなたの言葉は、
どれも大事にしたくなるものばかりでしたから。」
息が止まる。
(……そんなふうに言われたら)
期待が、
もう隠せないくらい膨らんでいく。
「……それって、
どういう意味ですか?」
聞きながら、
胸の奥が静かに高鳴る。
先輩が顔を上げる。
その目は、
さっきよりもずっとまっすぐだった。
「あなたに……
“ただの知り合い”としてじゃなくて、
“僕自身”を見てほしいと思っていました。」
胸が跳ねる。
(……やっぱり)
言葉が出ない。
でも、出なくても伝わる気がした。
先輩は、
ほんの少しだけ息を整える。
「だから……
もう隠すのはやめようと思いました。」
その一言で、
胸の奥が一気に熱くなる。
(……もう、これ……)
期待が、
確信に変わりかけていた。