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#シングルファザー
「しかし、君の手は、変わらず冷たいままだな……」
ファクトリーパーク立川のそばにある、広い公園の四阿のベンチで、美花と圭は並んで腰を下ろしていた。
美花の左手は、圭にしっかりと繋がれていて、胸の奥がくすぐったく感じてしまう。
「うん。何か私の手…………いつも冷えてるみたいなんだよねぇ……」
圭の手の温もりを感じながらも、美花の顔に熱が集中している。
彼と手を繋いでいるだけでも嬉しい。
けれど、美花は、こんなにしっかりと手を繋がれたら、もしかしておにーさんも……と、勘違いしそうになってしまう。
好きな男の人と一緒にいられて嬉しい、けれど…………苦しい……。
圭が、どういうつもりで彼女と手を繋いでいるのか、美花には全く分からなかった。
***
「…………それ……」
圭が、美花の手にしていた結婚式場の紙袋の中が、目に留まったようだった。
中には、花嫁の奏から頂いたブーケが入っている。
丸みを帯びたコンパクトな白バラのブーケは、奈美から奏へ、そして奏から美花に託された、友情と絆の証だ。
「あ。これ、かなチーから直接贈られたんだ。次は美花の番だよって……」
「…………そうか」
薄闇にぼんやりと浮かぶ彼の面立ちが、緩んだように見えたのは、思い過ごしなのだろう。
秋の夜風が美花を撫でるように吹き抜けると、華奢な身体が冷えて、小さな震えが止まらない。
「…………寒いのか?」
「だっ…………だいじょ──」
「全然大丈夫って感じではないな」
彼女の様子に気付いた圭が、光沢のあるブラックのスーツの上着を脱ぎ、美花の肩にフワリと掛けると、細い身体をビクリと跳ねさせる。
「ちょっ…………おにーさん……上着が汚れちゃうよ? それに、おにーさんは寒くないの?」
「俺はベストも着てるし、そんなに寒くない」
今しがた、彼が羽織っていた上着。
圭の仄かな体温が、溶け込むように美花を包み、またも羞恥に追いやられる彼女。
「…………そんなにビックリするほどの事か?」
彼の問い掛けに、美花が照れくさそうな、困惑するような複雑な面持ちを覗かせる。
「…………ビックリするよ。こんな事、男の人にされたの、おにーさんが初めてだし……」
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