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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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週末、海斗は湘南の小さなライブハウスにいた。

このライブハウスは海斗が若い頃世話になった老舗のライブハウスだ。

高校時代からバンド活動を始めた海斗達は、大学の時にこのライブハウスでよく演奏していた。

いわばプロとしてのスタート地点と言ってもいい場所だ。


だから毎年この時期は恩返しの意味も込めて、ここで小さなライブをやるようにしている。

毎年楽しみにしている常連客も多く、この日も超満員で大盛況だった。


海斗の出身は神奈川県の大磯町だった。今も実家はそこにある。

メンバーも全員神奈川出身なので、ライブが終わるとついでに実家へ寄るメンバーも多い。

海斗も久しぶりに実家へ寄る事にした。

特に来月からは本格的に忙しくなるた為、今のうちに顔を出しておこうと思った。


海斗がライブハウスから出て来たのは、午後九時を過ぎていた。

海斗が出てくるのを待っていた女性ファン達は海斗が姿を見せると、


「海斗―!」

「キャーッ!」


と声を上げる。

海斗はマネージャーの高村と少し話をしてから車に乗り込むと、エンジンをかけて車をスタートさせた。

女性ファンの前を通り過ぎる際、ファンに軽く会釈をしてから実家に向けてアクセルを踏み込む。


実家までは近かったのですぐに着いた。

車をガレージに入れていると海斗の母が家から出て来た。


「おかえり海斗、久しぶりだわね」


母は笑顔で迎える。


「ただいま母さん。遅い時間にごめんね」

「大丈夫よ。今日は航達も来ているわよ」


家に入りながら母が言った。


航は海斗の兄で実家から歩いて数分の所に住んでいる。

航は地元の高校の教師で物理を教えていた。


「兄貴達久しぶりだなー」


そう言いながら海斗がリビングに行くと、


「おお、海斗お帰り」


と海斗の父が嬉しそうな笑顔で言う。


「父さんただいま、元気そうだね。相変わらず海に行ってるの?」

「おう、昨日も釣ってきたぞ、でっかいのをな!」


と自慢気に言う。

会社員だった海斗の父は定年を迎えた後嘱託で5年ほど働いていたが、去年その仕事を退職し今は釣り三昧の日々を送ってい

る。

その時キッチンから兄一家が出て来た。


「おう、海斗、元気そうだな」


と兄の航が声をかけた。横にいる義姉の洋子も声をかける。


「海斗さんお久しぶり!」

「海斗おじちゃん、今日のライブどうだった?」


高校生になりギターを始めたばかりの甥の星也も来ていた。


「おーみんな元気そうだな。姉さんも久しぶり。星也、ギター始めたんだって?」

「うん、見て、これだよ」


星也は自慢気にピカピカの新しいギターを海斗に見せた。

すると海斗はソファーに座りどれどれ…と星也のギターをいじり始めた。


リビングに皆が集まったところで、母と義姉がテーブルに料理を運び始める。

そして久しぶりに沢田家の宴会が始まった。


話題はすぐにこの間の週刊誌のスクープ記事の話になる。


「お前、早く彼女作れよー。ちゃんとした彼女がいないからあんな嘘記事書かれるんだ」


兄の航が説教じみた事を言うと、今度は海斗の父が、


「海斗、誰かいい人はいないのか」


と、遠慮する素振りもなく聞いてくる。

二人の言葉を聞いた海斗は、


「ああ、ちゃんとしたら報告するから…」


と言ったので、海斗以外の全員がハッとして顔を見合わせる。

そんな家族の様子には全く気付かずに、海斗は呑気に星也のギターをいじりながら星也からの質問に答えてやっていた。


賑やかな宴が一段落した後、父は飲み過ぎたのか早々に寝室へ行った。

女性二人は、後片付けの為キッチンにいる。

星也は隣の和室でバンド仲間とメッセージのやり取りをしているようだ。


リビングに兄と二人きりになった海斗は、兄の航に聞いた。


「今度の土曜ってスーパームーンだよね?」


その言葉に航はかなり驚いている様子だった。


「ああ、でもなんでお前そんな事を知ってるんだ?」


航は探りを入れるように聞いた。


「いや、まあね」


海斗があいまいに返事すると、航はからかうように言った。


「子供の頃、お前は俺が望遠鏡で月を観ていてもギターばっかりだったくせに」

「あの時はそうだったな。懐かしいな」


海斗は懐かしそうに笑う。そして続けて航に聞いた。


「スーパームーンが綺麗に見える場所って、この辺りであるのかな?」


そこで航は何かを察したようだ。


「そうだなぁ、神奈川で満月が綺麗な場所って言ったら、三浦半島かなぁ。あそこは天の川が見える事でも有名だし、星空も凄

いぞ。まあ満月の夜は月明かりが眩しいから星は引き立て役になっちまうけどな」


航はそう助言するとちらりと弟の様子を伺う。


「ふーん、三浦半島か。三浦半島のどの辺?」

「城ヶ島かな。晴れれば『月への階段』が見られるよ」


航はさらに付け加える。


「満月の月明かりが海面に反射して月へ繋がる階段のように見えるんだ。ロマンティックだろう?」


そう説明すると、チラリと弟の反応をうかがう。


「月への階段……か」


兄の説明を聞いた海斗は、そう呟くと真剣な顔をして何かを考えている様子だった。

この作品はいかがでしたか?

90

コメント

4

ユーザー

↓らびぽろちゃん、うん‼️😊 ロマンティックで素敵なシーンが待ちきれなくて....✨🌕️✨ ワクワクキュンキュンしちゃうよね~😍♥️

ユーザー

『月への階段』🌕✨✨✨ もうワクワクが止まらない〜(ꕤ´꒳`ง)ง🤍🎵*。

ユーザー

海斗さんのご実家、和やかなイイ雰囲気....✨ 家族の皆さんも 海斗さんの様子がいつもと違うことに気づいている⁉️🤭💕 スーパームーンの夜に城ヶ島でドライブデートかな⁉️✨🌕️✨ドキドキ♥️♥️♥️

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