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兄の航はトイレに行くふりをしてリビングを出ると、慌ててキッチンにいる母と妻の元へ向かった。

二人はお喋りしながら食器の片づけをしていた。


「母さん! 母さん! 海斗がなんか変なんだよ! 近々良い報告があるかもしれない」


航は興奮して言った。すると母も、


「私もそんな感じがしていたわ」


とニコニコ嬉しそうに言う。

すると航の妻の洋子は少しはしゃいで言った。


「海斗さん、すごく穏やかになった気がしません? あれはきっと何かあったのよ!」


そこで三人は飛び跳ねる。

その後も三人はヒソヒソと海斗の話で盛り上がった。



それからしばらくして、片づけが終わると航の一家は家に帰って行った。


海斗は今夜実家に泊まり、明日の朝一番で帰る予定にしていた。

海斗が風呂から上がりキッチンで水を飲んでいると、母が言った。


「お母さんはね、お父さんと結婚して本当に良かったと思っているわ。お父さんは本当にいつも優しいの。それは何年たっても変わらないわ。海斗がもし結婚する時は、何年経っても、相手がおばあさんになっても、ずっとずっと変わらず優しくできる相手を見つけなさい」


母はそう言って穏やかに微笑んだ。


「じゃあお母さんもお風呂に入るわ」


そう言ってキッチンを後にした。


海斗は母親がいきなりそんな事を言ったので驚いていた。


「ずっと変わらず……か」


海斗はコップの水を持ったままリビングへ移動し、窓から夜空を眺めた。

すると夜空には上弦の月が煌々と輝いている。


海斗はソファーに座って手にしていたコップをテーブルへ置くと、携帯を取り出して美月にメールを送った。


件名は、【今日は実家に泊まりです】

本文には、【上弦の月が綺麗だよ】


と、一言だけ添えた。



その頃、美月はアパートで料理の本を見ていた。今度のパーティーで何を作ろうか考えている最中だった。

その時メールの着信音が鳴った。海斗からのメールを見て美月は微笑む。

美月は葉山へドライブに行った時に、海斗の実家が大磯だという事を聞いていた。そして昔世話になったという小さなライブハウスの事も。そして今夜そこでライブがある事は昨日のメールで教えてもらっていた。


美月は窓辺に近づき夜空を見上げた。するとちょうど建物の隙間から明るく輝く月が見えた。

美月は海斗に返信を打ち込む。


件名は、【ライブお疲れ様でした」

本文には、【ご実家に寄られてご両親嬉しかったでしょうね。月、私も観ています】


と返した。


海斗がコップの水を飲み終わった時、美月から返信が来た。

それを見て、海斗は嬉しくて思わず微笑む。


(離れていても、月が二人を繋いでくれているんだな)


そんな事を思いながら、海斗はとても穏やかな表情で静かに月を見上げる。

廊下にいた海斗の母は、そんな息子の様子をそっと笑顔で見守っていた。

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コメント

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ユーザー

私も皆さんのコメントに共感です!🥹あと、お母さまの言葉にハッとしましたね〜。

ユーザー

↓✨🥹御三方のコメントが素晴らしい👏 御三方に同感しまくりです(*´艸`*)🍀✨ お母様と奥さまに伝えに行く航さんがカワイイ😆海斗さんを見守るお母様も素敵✨🥹

ユーザー

↓↓お二人と同感です✨ たとえ何処にいようとも 空は繋がっていて、同じ時間にそれぞれ違う場所で同じ月を眺める二人🌙✨ 愛し合う二人の心も 空と同じように、どんなに離れていても繋がっている.... あ~、何て素敵なんでしょう✨ウットリしちゃう~♥️♥️♥️

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