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#恋愛
ばたっちゅ
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モブD
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アルダーと一緒に屋敷の入り口に向かうと、一人のふくよかな男がこちらを見て頭を下げた。
「どうか……どうかこのバオバブをお助けください! 凄腕の便利屋ユウト殿!」
彼はバオバブ。商業ギルドを束ねるギルドマスターだ。高級そうな服に豪華なアクセサリー。いかにもという金持ちだ。
「いや、俺はただの便利屋ですし……どうして俺なんすか? 料理対決なら終わりましたけど」
「料理だけではありませぬ!」
バオバブは顔を上げ、興奮気味に捲し立てた。
「昨日街でユウト殿を見かけた時に、同行していた女性剣士がとっていたあの大剣……! 非常に美しく手入れされていた……! 曇りのない刀身、そして柄も鞘も完璧な調整がされていました。あれは……ユウトどのが手入れしたのですか?」
「まぁ……前に埃まみれだったのを磨いただけっすけど」
「素晴らしい!!!」
バオバブが突然叫ぶので、思わずビクっとしてしまう。
「あのレベルのメンテナンスができる職人は、国を探してもそうおりません……!」
「は、はぁ……」
「料理だけでなく武具の手入れまで極めているとは……!」
(いやいや、そんなに難しいことか?)
俺は内心ツッコミを入れた。すると、バオバブは俺の手に縋り付く。
「実は我がギルドの巨大倉庫が不法投棄とギルドメンバーのずさんな管理のせいで魔物が湧き、恐ろしいダンジョンと化してしまったのです! 新しい冒険者にも臭いと危険を理由に断られてしまい……このままではギルドが倒産してしまいます! どうかユウト殿の力でなんとかしていただきたい!」
恐ろしいダンジョン。臭いと危険。想像するだけでも寒気がする。
(絶対に関わりたくねー!)
「報酬次第っすね。規模にもよるっすけど、例えば三百Gとか」
さすがにその値段は払えないだろう、と思って答えた瞬間。
「そんなお安い金額で! あなたは救世主様ですか! 是非、お願いします!!」
「え……」
(嘘だろ……)
三百Gなんて言ったら、前世の相場で言えばとんでもない金額になる。それにこれだけ頼られているのは悪い気はしなかった。
――
と言うわけで、俺はアルダーと一緒にバオバブに案内されて商業ギルドの巨大倉庫へとやってきた。
「ここです……」
バオバブが震える手で倉庫の大きな扉を開ける。
「うおっ……」
俺は思わず鼻をつまんだ。目の前に飛び込んできたのは、天井まで届きそうなほど積み上げられた武器や防具の山。薬の瓶が大量に入った木箱も並んでいる。そして鼻を突く強烈な腐敗臭とカビの臭い。
(な、なんだこれは……)
よく見ると、剣や鎧の山に混ざって、何故かドロドロに腐ったキャベツやトマトのような野菜の残骸が散乱している。
(なんで武器の倉庫に野菜がぶちこまれてるんだよ! 物の管理がデタラメすぎるだろ!)
「ギルドの冒険者に卸すための武器や防具が大量にあるはずなのですが……どこに何が置いてあるのか全くわからず……」
バオバブが申し訳なさそうな声で倉庫に向かって歩きだす。
「長年放置されたゴミや埃が瘴気を出し、倉庫自体が変異してしまったのです」
(野菜が腐ってるだけだよ!)
「もはやここは、危険な魔物の巣窟……」
ガサガサッ!
倉庫の奥から音がする。アルダーが剣を抜き、警戒した。
その時だ。大量に重なった箱の隙間から、犬ほどの大きさの巨大なネズミのような姿をしたモンスターが飛び出した。
「チチチチチチィ!」
「危ないっ、ユウト殿!」
アルダーが素早く踏み込み、一太刀でネズミのモンスターを斬り伏せた。
「ひぃぃぃぃぃっ! やはり無理だ、凶悪な魔物まで……っ!」
バオバブが腰を抜かして悲鳴を上げる。アルダーも険しい顔をした。
「この倉庫……瘴気が濃い。魔王の仕業かもしれませんね。これほど巨大な魔物が繁殖しているとなると、もはやここは立派なダンジョンですね。中隊規模の討伐隊を組まねば危険すぎる……」
(いや、生ゴミを放置したからデカいネズミが出ただけだろ)
俺は一人、全く別の感想を抱いていた。倉庫を見上げ、俺は静かに歩み出た。倉庫の奥行き、武器の数、木箱の量。動線の幅、換気口の位置、足の踏み場もない物、不衛生な生ゴミ、悪臭……
(典型的なゴミ屋敷だな)
ふとカイザーの部屋を思い出す。あの不衛生な黄色い液体の入っていたペットボトルを思えばマシかもしれない。
(ふっ……、腕がなるな)
俺は木の枝を拾い、地面にスラスラと数字を書き計算を始めた。
「ユウト殿……? 何をしているのですか?」
「工数をだしてるんすよ」
「コウスウ……?」
不思議そうな顔をするアルダーをよそに、俺は頭の中で完璧な見積もりを弾き出した。
(ざっと見て廃棄物四十トンくらいっすかね。大型の搬出口はあるから動線を確保して分別すれば……)
俺は振り返り、バオバブに向かって告げた。
「バオバブさん、ギルドの中で手伝ってくれる人はいないっすか?」
「濃い瘴気のある倉庫に入りたがる者はいません……」
「いや、倉庫の外でいいっす。外に出した荷物を運んだり整理するだけっすから」
「瘴気に触れないなら……十人ほどなら手配できますが」
「ありがとうございます」
次はアルダーの方を向く。
「アルダーさん、良かったら手伝って欲しいんすけど」
「ユウト殿のためならもちろんです!」
俺は再度地面の数字に向かった。しばらくして立ち上がり二人に視線を移す。
「バオバブさん、作業に必要な日数がわかったっすよ」
「ほ、本当ですか!? これほどの魔窟……手伝いを出してもやはり数ヶ月は……」
「いや、十日っすね」
「……は?」
バオバブとアルダーが揃ってポカンと口を開けた。
「と、十日……!? 十ヶ月の間違いでなく!?」
「そんなにギルド動かせなかったら商売あがったりでしょ。十日あればここを埃一つないピカピカの倉庫に戻して、ついでに在庫のリスト化まで終わらせるっすよ」
信じられないものを見るような目の二人に向かって、俺はニヤリと笑った。
「さて、今日は準備をして……明日から本番っすね!」
コメント
1件
読み終わりました!めっちゃ面白かったです🤍 みんなが「凶悪ダンジョン」「中隊規模の討伐隊が必要」って大騒ぎしてるのに、ユウトさんだけが「ただのゴミ屋敷っすね」って冷静に工数計算し始めるギャップが最高でした。腐った野菜でネズミが湧く、って現実のゴミ屋敷そのものなのに、異世界の人が瘴気とか魔物とか大げさに言うのがもう……笑いました。 「カイザーの部屋を思い出す」のくだりで過去話と繋がるのも良いですね。ユウトさん、前世の経験がここで生きてるんだなって。10日で片付けるって啖呵切ったラスト、続きがすごく気になります!