専門学校を卒業して、店に就職し、初めて客の髪に触れた時は、『これだったのだ』と腑に落ちる感覚があった。
切り揃えるだけのカットも、生まれ変わるようなイメージチェンジも、見た目の若さを保つ白髪染めも、晴れやかな装いに合わせる髪結いも、疲れを癒すシャンプーすら、自分の生きがいと謳うのに不足はないと思えた。
だから、今こうして次なる客を迎えるために雑誌を選んでいる瞬間すら、愛おしく思える。
同僚からすると、そんな風に考えているなんて俺は少々変わっているらしいのだが、別にそれでも構わない。
構わないからこそ、そう思える仕事だからこそ、――悩んでいる。
いつも通り、きっかり予約時刻の五分前に水戸が店を訪れた。
恐らく今日もそうだろうと待機していたため、すぐさま入口へと周り、彼女を迎える。
「お久しぶりですね、水戸さん。……先日はありがとうございました」*******
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