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侑に強い口調で言い返しながらも、瑠衣は狼狽えた。
彼が、『瑠衣のお腹の子の父親…………俺だという可能性は……ないのか?』なんて言ったのだから。
まだ結婚するかどうかも分からないし、それ以前にプロポーズすらされていない。
全く予想もしなかった侑の言葉に、先生は私との子どもが欲しいのか、などと淡い期待を抱いてしまいそうになる。
「先生は…………私との間に子どもができたら……嬉しいの? 産んで欲しいって……思うの……?」
瑠衣が侑の様子を伺うように問い掛けると、普段、ひと呼吸置いてから話す彼が、珍しくキッパリと言い切った。
「当たり前だろ? 好きな女との間にできた子どもなら嬉しいし、産んで欲しいに決まっている」
「…………そうなんだ」
瑠衣が辿々しく笑みを滲ませて答えると、とりあえず、と侑が前置きした。
「まずは病院へ行って、きちんと検査をしてもらおう。病院は俺も一緒に行くから安心しろ」
「…………分かった」
侑が華奢な身体を抱き、小さな頭を胸に引き寄せながら、そっと頭を撫でる。
この日、瑠衣は目が冴えたまま眠れない夜を過ごした。
***
翌日、瑠衣は娼婦だった頃にお世話になった産婦人科に電話を入れ、診察の予約を入れた。
昨年の十一月以来、クリニックには一度も行っていない。
それまで娼婦だった四年間は、オーナーの凛華に付き添ってもらい毎月通院して性病の検査を受けてきた瑠衣。
今回は、妊娠しているかどうかを検査しに通院する。
診察は二日後の午前に決まり、侑が仕事から帰宅した際に知らせた。
「その日はオフだから一緒に病院へ行く。瑠衣の身体が心配だからな」
「ありがとう……先生……」
侑ではない、父親が分からない子を妊娠していると思われるのに、こうして気遣ってくれる事が嬉しくもあり、申し訳ない。
「瑠衣。無理は禁物だ。家にいて体調や気分が悪くなったら、とにかく身体を休めろ」
「……うん」
瑠衣は侑から顔を逸らし、いつしか目尻に溜まっていた涙を指先でそっと拭った。