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二日後、侑と瑠衣は、彼女が娼婦をしていた頃にお世話になった産婦人科に来院していた。
午前九時に到着し、受付をした後、血圧測定と尿検査を診察の前に済ませ、オンラインの問診票をスマホで回答していく。
周りを見渡すと、幸せそうな妊婦さんが夫婦で来院している姿が多い。
(もし、私のお腹の中に宿った赤ちゃんが響野先生との子だったら……凄く嬉しいんだろうな……)
瑠衣は目のやり場に困ってしまい、徐に俯くと、侑が彼女の前でしゃがみ顔を覗き込む。
「瑠衣? 大丈夫か?」
「…………うん」
心が曇ったままロビーのソファーに座っていると、瑠衣の名前が呼ばれ、二人は診察室へ入っていった。
「九條さん、お久しぶりですね。昨年の十一月以来の来院ですが、元気にしていましたか?」
クリニックの院長は瑠衣に柔和な面差しで挨拶してくれる。
「院長先生、ご無沙汰しております」
少しの間、近況を報告すると、院長先生も娼館の火災や凛華さんが亡くなった事を知っていた。
「星野オーナーがあの火災に巻き込まれ、亡くなった事は本当に残念でなりません……」
沈痛な面持ちで院長先生がポツリと漏らすと、『いつまでも悲しんでいたら、オーナーに怒られてしまいますね』と苦笑した。
「院長先生。実は…………妊娠しているかどうか……調べてもらいたくて……」
院長は、瑠衣の後ろに立っている侑をチラリと見やった後、彼女に視線を戻す。
「妊娠してたら、私は…………堕胎する方向で考えてます」
瑠衣の言葉に、院長先生が僅かに目を見張ると、侑と瑠衣を交互に眼差しを向けた。
「九條さん。後ろにいるのは…………ご主人……ですよね?」
「彼は私の恋人ですが……お腹の中にいる子は、恐らく彼との子ではないんです」
一瞬混乱したのか、院長は眉根を寄せつつ怪訝な表情を見せる。
「ごめんなさいね九條さん、それって……まさか……」
瑠衣は戸惑いながらも輪姦された事を話すと、院長先生が悲愴の色を浮かべながら『…………そんなに辛くて苦しい事があったんですね』と言葉を掛けてくれた。
「…………分かりました。まずはエコーで検査しましょう」
院長は瑠衣を内診台に行くように勧めた。