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ご本人様には関係ありません
不思議系の話です
出てくる人に偏りがあります
軍パロ、人外?パロです
今日は、用事があったのでそれが一段落してから噂屋に向かった
時間はもう夕方
今度から気をつけないと
行く機会を逃してしまいそうだ
…何となく、嫌な予感がしたのは気のせいだと頭から振り払う
この時まだ俺は知らなかったのだ
こういう予感はだいたい当たるということ
俺の霊感は驚くほど当たるということを
「アルベルトー…」
いつものように入ると、そこはもぬけの殻だった
この前のように『ここには居ない』ではなく『居るが見えない』に近い感覚
その感覚は中央にあるテーブルに湯気がまだ出ているティーカップがあるのと、
あいつがまだ居るんじゃないかと思えるほどの生活感からだろう
全く、まだ聞かないといけないことがたくさんあるというのに、
あいつは何処に行ったのだ
あいつならば何処かに置き手紙でもしていそうだが
とりあえず周囲を探すことを決めた俺の行動は、
一つの目的ができたものだから速かった
まずはあいつが居たはずの中央テーブル付近を探る
手がかりとなるものがあるといいが
結果から言うと、手がかりらしきものはあった
だがよくわからないというのが現状だ
『それ』は、テーブルの下に落ちていた
一見しただけでは、ただの白い紙だ
だが、紅茶の近くに漂っている湯気に当てるとその手がかりは姿を表した
それは簡潔に書いてあった
『T−1 U-7』
書いてあるのはそれだけだ
本棚の場所だろうか
TとUといえば…
まず、俺はTの場所から探した
それにしても、T-2はおそらくここだろうが…
膨大な量だ
本棚には、見上げるほどの高さがあり
ざっと百はあるんじゃないかと思える本に圧倒される
雑誌のように薄い本から、ハードカバーの重厚な本まで
その中でも一際目を引く本を見つける
真っ赤な背表紙に金の装飾、黒で縁どられた表紙
その本は異彩だった
俺は、その本に手を伸ばした
視界のブラックアウトが始まる
その幹部は総統の右腕だった
その幹部は紛うことなき天使だった
その幹部は…
俺はその日、書記長さんとの書類整理が仕事だった
いつものように朝早く起き、ご飯を食べて、資料室に向かう
俺の仕事は主に資料室の管理、戦争時の作戦立てなど
非戦闘員だからその分書類や資料の仕事を担っているのだ
今日手伝ってくれる彼は真面目なので、わざわざ呼びに行く必要もないだろう
資料室に行くと、彼はもう掃除を始めていた
早いですね、そう声をかけると
彼は自分の部下が作った、彼のペット…トンの像を磨きながら言った
「まあな、掃除もしたかったし」
今日は、掃除はしなくていい
彼が資料の整理をして、俺が掃除をするはずだった
だから昨日のうちにあらかた済ませておいたのだ
ただ、心優しい彼は掃除もしてくれたようだ
俺が掃除をしていたことなど彼ならわかったはずなのに
ありがとうございます、その言葉が勝手に口から出ていた
「俺は気になっただけやから大丈夫や、そろそろ資料の整理しよか」
さりげない心遣いに感謝しながら資料の整理を始める
その時…
バリン
窓が割れて、侵入者が入ってくる
その窓はちょうど、トンの像があったところで
像には割れたガラスで傷がついた
あっと思った時にはもう遅く
彼は隣で激昂していた
「おい」
ドスの利いた声、正面からこれを言われたなら、我々軍幹部ならともかくひとたまりもないだろう
少なくとも俺は言われたくない
隣で震え上がるような絶対零度の殺意を感じて、ちらりとそちらを見る。
彼は隣で激昂していた、顔からは感情が消え伏せて瞳は今にも黒く染まりそうなほどの怒りを隠し、いつの間にか彼愛用の粛清剣を携えて
侵入者には悪いが、自業自得だろう
彼の部下が作った大切な、大切な像を傷つけたのだから
「すまん、ちょっと後ろ向いててくれんか」
そう言われ、怒られたくもないのでさっと彼と反対の方を向く
すると、後ろでバサッと鳥が羽ばたつような、でもそれよりもっと大きい音
侵入者もあっけにとられ、静かになった室内に不思議と大きいがうるさいとは思わないその音が響く
その刹那に、侵入者の悲鳴
嗚呼、また掃除しなくては
「もうええで」
そう言われて振り向く、
彼はいつもの温和な様子に戻っていたが、
彼の周りには、少しの白い羽と、赤に染まった黒い羽が舞っていたことは、誰も気づかないのだろう
彼の怒りをかった哀れな反逆者
敵うことなど無に等しい絶対的存在に手を出したのが運の尽き
彼の正体は…
はっと本が落ちた音で気がつく
俺は、噂を見ていたのか?
今のは、誰だ
W国の関係者だ
懐かしいあの声は、顔は誰だ
お前の思い違いだ
自問自答を繰り返す自分に混乱し過ぎだと活を入れる
これだけ懐かしい気分になったのは久方ぶりだ
嗚呼、また聞かなければいけないことが増えてしまった
はやく噂屋を探そう
そろそろクライマックスです、がんばります
それでは