晴は私達の思い出をとある衝撃とともに忘れてしまった。その事実が頭の中でまとまり始めたのはあれから1週間が過ぎようとしていた頃だった。思い出を忘れてしまったということは私達が創ってきた楽しい記憶も辛い記憶も一緒に過ごした時間そのものがなかったことになってしまう。しかし、それを阻止しようにもできないと知っているからそれが余計に悔しい思いを助長させる。
「ハァ〜〜」
「陽夏〜大丈夫?最近ずーっとため息ついてるけど」
「なんかあった?」
……………………………。
「おーい、陽夏〜?」
ッハッ!
「ごめんごめんちょっとぼーっとしてた」
「もう〜大丈夫?」
「ちょっと疲れてるのかなぁ?あはは……」
疲れているということでないのは分かっている。しかし、それを話しても晴の記憶が戻る訳ではないのだ。
(どうしようかなぁ~……)
結局その日は特に得策も思い浮かばず全くと言っていいほど進展が無かった。
休み時間の静かな図書室の隅で静花は机に突っ伏して頭の中をぐるぐる回る一つのどうしようもない問題の答えを探していた。
“記憶を失くした”というのは事実として受け止めなければならないことだ。だが、それが意味する真実というのは“思い出を失くした”ということだろう。
(私だけじゃどうにもならないのかな~陽夏は今何を考えてるんだろう)
親友が記憶を失くしたというのに何も考えない彼女ではないだろう。きっと何かできることはないかと悩みに悩んでいるはずだ。まぁどうせ行き詰まってるだろうが。
そして私も今まさに行き詰まっている……。こんな時ドラマなら写真とかすごい思い出の品とか出したら記憶が戻ることが多い。しかし残念ながらここは現実世界なのでそんなうまくはいくはずもないだろう。
(まぁ一応試してみるか)
そんな現実味を帯びない案にわずかな希望を乗せつつ、また案を考え始めるのだった。
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テスト週間終わったので久々に投稿します!!