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「ここだよ」
凛華が案内してくれたお店は、クリニックから徒歩で五分くらいの場所にある、昔ながらの定食屋だった。
「凛華さんって、どちらかと言うと、オシャレなカフェ飯に詳しそうなイメージがあったから意外かも……」
「そう? オシャレなカフェも好きだけど、こういうお店も懐かしい雰囲気で好きなんだよね。何よりも美味しいし、うちの子たちもクリニックに来た後に何人か連れて来た事あるし」
昭和レトロの雰囲気溢れる店内には、手書きのメニューが壁に貼り付けてあり、瑠衣は店内をキョロキョロと見回す。
二人は散々悩み、オーソドックスな和風ハンバーグ定食を二つ注文した。
「まぁ愛音は、相変わらず響野様に指名されているよね」
「そうですねぇ。こんなに長く指名されるなんて、思いもしませんでしたけど」
料理が出来上がるまで凛華と瑠衣が話す事といえば、侑の事になってしまう。
「響野様って独身なの?」
「独身だと思いますよ」
「独身のイケメンって、ある意味貴重だよねぇ。ってか歳はいくつなの?」
「三十は超えてるんじゃないですかね」
「え? 愛音って響野様に指名されるようになってどれくらい? もう四ヶ月くらいだよね? その割には響野様の配偶者の有無や歳とか知らないんだ?」
「う〜ん、そう言われてみればそうですね。響野様とはあまり話とかしないんで……」
前回と同様、凛華に突っ込まれているが、やはり、侑と瑠衣が師弟関係だった事は言えないな、と思う。
そんな会話をしているうちに、和風ハンバーグ定食が瑠衣たちのテーブルに運ばれてきた。
「いただきます」
「凛華さん、いただきますね」
二人はよほど空腹だったのか、手を合わせた後、黙々と食事を始めた。