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侑は変わらず毎週夜にやって来て瑠衣を抱く。
あの同伴以降、瑠衣は、二人の間で何かが変わったような気がしていた。
瑠衣とセックスした後、侑は彼女を労わるかのように身体中に唇を落とし、最後に強く抱きしめながら髪を撫でてくれる。
側から見れば、恋人同士のセックスと言っても過言ではないだろう。
でも、瑠衣の侑に対する想いは、誰にも知られてはならない。
凛華はもちろん、侑本人にも……。
けど、侑には知られてしまったかもしれない。
あの特別な夜、瑠衣は自分から『私を抱いて』 と、侑にせがむように言ってしまったのだから。
「…………愛音? 愛音? 食べ終わった?」
凛華の声で、瑠衣は我に返ると、『あんたどうしたの? ボーっとして』と突っ込まれてしまった。
「完食しました。ご馳走様でした」
「じゃあ帰ろうか」
二人は店を後にし、凛華の車が駐車してあるパーキングまで歩いた。
***
不意に凛華が立ち止まり、後をチラリと見やった。
「凛華さん? どうかしたんですか?」
「いや、定食屋を出てからかな。何者かに後を付けられているような気がするんだよねぇ」
瑠衣も後を振り返るが、これといって怪しげな者はいない。
「とりあえず、行くか」
再び歩き出すが、凛華は明らかに真剣な表情で後方の感覚を探っている。
瑠衣も後ろを気にしながら歩いていると、そこに気を取られていたせいか、石畳の歩道の溝に嵌り、転びそうになってしまった。