TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

はい、作者です。

急ですが、微妙にGLです。

あと暴力表現注意です。

地雷さんは回れ右。

それでも良い方はそのまま進んでください。




「コールぅ………あと何分で着くの……?」


コクン。コクン。

ユリノは寝そうになりながらもアタシに話しかけた。

皐月賞が終わり、数時間後。皐月賞後にたくさんの記者に押しかけられ、その記者団から逃げるようにウイニングライブを終わらせ、また記者団に追われの繰り返し。ユリノは異常な程にカメラや記者を怖がってた。今日は一緒に行動していたせいか、アタシも巻き込まれたし。

まぁ、なんやかんや楽しかった。だから気にしないけど。


「さあね。あと1時間くらいじゃない?」

「うぅ……」


こんどはアタシの制服を掴んだ。

小さな手で弱々しく。

電車の揺れと同じタイミングで首が動く。

コクン。コクン。コク───ガタンッ!

電車が少し大きく揺れ、ユリノの顔がアタシの腕に当たる。


「うぇ…」

「もう寝なよ……」


アタシは、そう言いながらユリノを引き剥がす。

ユリノは他の乗客もいる中、一人唸り声をあげた。


「疲れてんでしょ?アタシも疲れたし…」

「でも……」


ユリノは背もたれによっかかった。

私は着ていた上着を脱ぎ、ユリノに被せた。


「…ん…………ありがと…」


ユリノはアタシの上着を着た。

少しデカいのか、袖が余っている。

少しというか、かなりデカい。

顔は顎が埋まっていた。


「んふっ……」


ユリノはアタシに寄りかかった。

肩には届かないから腕に顔を埋めた。


(……………可愛いな……ちょっとだけど)


いわゆる萌えだ。

萌ええぇ!ウマ娘ちゃぁぁん!って叫びながら廊下走ってた先輩の気持ちもよくわかる。

少しほっこりしていると、コールドちゃん、と聞き覚えのある声が聞こえた。


「あっ、ルネ。偶然だね」

「皐月賞、お疲れ様。惜しかったね」

「ありがとう」

「……ふふっ、お友達?」

「なに?いきなり……」


アタシとユリノを見て微笑んでいる彼女はルネサンスゼロ。

穏やかな娘でアタシと同室だ。

豊富なスタミナと驚異的な末脚が持ち味のウマ娘で、かなり実力もある。

怪我に悩まされデビューが遅れてしまったが、デビュー戦は危なげなく勝利。世間から注目されつつある。


「いや、仲良さそうだったから……」

「寝てるだけだよ。さっき知り合ったし…」

「え?そうなの?」


ルネは不思議そうな顔を見せる。

そしてユリノの隣に座った。


「………今回の皐月賞、ユリノテイオーっていう白毛の娘が勝ったでしょ?」

「うん」


少しの間があいて、上を仰ぎ言った。


「────あれ、正直“フロック”だと思うんだよね」


フロックとは。簡単に言ってまぐれってこと。

でもそれ、普通本人がいる前で言うかな…。


「ユリノテイオー。皐月賞を勝つ前は3戦3勝。勝ち鞍はデビュー戦、コスモス賞、共同通信杯。全てマイルでのレース、全てクビ差以下。私からの印象はスピードが乏しいウマ娘。運が良くて勝った感じ。まぁ、まだ重賞も勝ってない私が言えることじゃないけどね」

「…………」


ルネはユリノのことを言った。

本人の隣で。


「ほら、皐月賞は最も早いウマ娘が勝つって言われてるでしょ。ユリノテイオーが勝つのは厳しいと思った。で、今日のバ場状態、凄く悪かった。内側の芝は完全に禿げあがってたでしょ?」

「…そうだね。凄い走りづらかった」


アタシも素直に頷いた。

あの中山のバ場はかなりパワーが必要だった、と今更思った。

最終直線の坂プラス、前日の雨の影響でグズグズになったバ場状態。

アタシの脚ではもう限界だった。


「でも、最終直線でユリノテイオーは内を選択した。わざわざ走りにくい内を。バカなんじゃない?って思った。でもそこから抜け出すんだよ。パワー、スタミナは十分だ。さすが、あの皇帝から直々にスカウトされたウマ娘。重バ場とか長距離では脅威になるかもね。まぁ、フロックなのは変わりないと思うけど」


あぁ、結局フロックのままなのね。

というか、ルドルフ会長から直々にスカウトされたって噂は本当なんだ。結局凄い奴なんだな。


「…ところで、この“葦毛”の娘誰?」

「…………」


いやいや、どこからどう見ても白毛……。

しばらく黙ってアタシは正直に言った。


「……ユリノテイオー。白毛だよ」

「…………………え」


ルネはしばらくポカンとして、3秒後にえぇぇ!!?と大声をあげた。

そして立ち上がった。


「ごめん!聞こえてた?!ごめんね!!ごめん!」

「……………うるさ…」


必死に謝るルネ、大声で起きて不機嫌なユリノという中々にカオスな空間が出来上がった。

すぐ後に、アタシ達の前を職員さんが通る。


「あのぅ……ほかのお客様の迷惑になりますので大声はちょっと……………」


控えめで、ちょっと引いたような顔で職員さんは言った。

それにルネはビクッと止まった。

大量に汗をかいて、ルネは気まづそうに言った。


「…………スミマセン…」


その光景に、クスッと笑ってしまった。




「ごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんね」

「…………この人誰?」

「ルネサンスゼロ。アタシの同室の娘」


僕の質問にコールはすぐ答えた。

このルネサンスゼロって人、僕の隣で永遠と謝ってて少し気味悪い。

僕もこの人にフロックと言われて少しムカついていたけど、ここまで謝る必要はないと思う。


「………ルドルフ会長にスカウトされたっていうのは本当なんだね。ただの噂だと思ってた」

「ん、今日の記念写真もルドルフさんと撮ったよ」

「今日もってことは、共同通信杯の時も?」


僕は、うんと一つ頷いた。

ルドルフさんは入学時から良くしてくれている。途中で転入してきた僕に気を使ってくれたっけ。


「ルドルフさん喜んでくれたよ。今日はもちろん、デビュー戦の時も、僕が勝ったレース全部」


コールはへーとだけ言ってルネサンスゼロの方を見た。


「………ルネ、ユリノ気にしてないから、そろそろやめなよ」


苦笑いして言った。

ルネサンスゼロはまたビクッと止まった。


「あっ……そうなの?」

「………うん」


僕はこくりと頷いた。

というか、コールって意外と優しいんだな。なんか、もっとヤンキーみたいな……僕の苦手なタイプの娘だと思ってた。

…………?なら、なんで僕はコールに友達になろうって話しかけたんだっけ……。


「───聞いてる?ユリノちゃん」

「えっ?」


何か僕に向かって話をしていたのかな。でも、徐々に薄くなっていた意識では、ルネサンスゼロの声は聞こえなかった。


「ごめん、なんの話?」


僕がそう聞くと、ルネサンスゼロはだから〜と話を続ける。



「ユリノちゃんのご両親って、どんな人?」



……………え?


「いや、ルドルフ会長と何かしら繋がりがあるかもしれないからだって」

「うん!どんな人なのかな〜って。気になっちゃって!」


少しの間、体が止まって息が急激に荒くなった。







































『なんでアンタはこんな奇妙な見た目に生まれたのよ!!?』


耳を引っ張られて、赫い血が滴った。


『その目もその髪もその耳もその尾も!!全部全部全部全部目障りなの!!』


女は僕を踏んだり蹴ったり。まるで蹴鞠のように。

僕の軽くなった体は跳ねて転がった。


『アンタなんて産まなければ良かったわ!!』


そうやって、僕の脚を二度折った。

だが女はしばらく黙った後に、僕の目の前に腐った林檎を落とした。

どす黒い赤色の林檎を。


『…はい、今月の食料。これで適当に生きといて』


女が出ていった後、僕は林檎に齧り付いた。

今月の林檎は甘くて美味しい。

いつもはカビだらけの林檎だけど、今月のは比較的綺麗だ。


…………。

……………………身長より長くなった髪をまとめる。

さっき引っ張られて血が出た耳を撫でる。

それとついでに、僕の頭を撫でる。

あの女は、よく頭を撫でて僕より髪が黒くての短い子を褒めてた。だから、僕もそうやって自分を褒める。


よく頑張ったね。よく今日も死ななかったね。

よく今まで生きてきたね。よく何も反応しなかったね。


親という存在がいない以上、僕を褒めてくれる相手は誰もいない筈だから。

だから、自分を撫でていい子いい子と言い聞かせる。

少しでも、自分の気が楽になるように。




あの後、ユリノは少し涙を流してアタシに抱きついた。ルネはそれを見てあわあわする。

ただそれだけなのに、アタシの胸は酷く締め付けられた。

ルネとはさっき別れた。ユリノは相変わらずアタシに抱きついたまま電車を降りた。

横浜のところで降りたから、人がいっぱいいた。年上の派手な女の人に可愛いー!と言われていた。

まあ今は、漆瀬トレーナーが入院してる病院だけど。


「失礼します」


ガラガラと、病院のドアを開ける。

ベッドの方には一人の男の人。おそらく漆瀬トレーナーだろう。

あとそれともう一人、漆瀬トレーナーに向かって何か喋っている男の人。おそらく看護師の人だろう。


「まっさか、あのちっちゃいユリノちゃんがGI勝てるとは思わなかったわ!お前もすげぇよなぁ」

「はいはい…………あっ、もしかしてユリノの友達?ユリノは…」


漆瀬トレーナーはアタシに抱きついているユリノを見つめて、男性看護師は不思議そうにアタシたちを見つめた。


「…………ユリノ」

「…!兄さ…」


ユリノは漆瀬トレーナーので声に顔を上げた。そして、漆瀬トレーナーに向かって早歩きした。

漆瀬トレーナーは優しい声の人だ。


「昔のこと思い出しちゃったの?」

「?どういうことですか…?」


アタシが聞くと、漆瀬トレーナーはあははと笑って言った。


「ユリノはね、昔から感情を表すことがほとんどなくってさ。喋ることもなくって。今も、ユリノは喋ったり感情を表に出すことは苦手で。でもね、昔のこと思い出した時だけ泣いちゃうから……」


漆瀬トレーナーはユリノの頭を撫でて言った。


「んー。まぁコイツはシスコンだし、よく分かんねぇつーか……。俺も妹いるけど、ツンデレなだけだしな〜」

「うるさい。俺はシスコンじゃないし」


中学生のような言い争いを繰り広げる二人。

というか、この人は誰なんだというアタシの疑問に答えるように、男性看護師は言った。


「ああ、俺は秋月伊織!悠とは幼馴染」


そう言って笑顔を見せる伊織さん。

漆瀬トレーナーはユリノの頭を撫でている。


「あっ、お花どうぞ」


そう言ってお花を渡し、椅子に腰掛ける。


(………この二人、ほんとに血繋がってるのかな)


少し失礼なことを考えてしまった。

けど、実際似てはいない。髪の色は反対だし、顔立ちも似てない。性格も。何より、ウマ娘と人間なんて。


「…お母様は、ウマ娘ですか?」


思わず口に出た言葉にハッとした。

漆瀬トレーナーは少し黙って、笑って言った。


「俺の方はウマ娘で、ユリノの方は人間。血は繋がってないと思う」

「俺は人間!」


あぁ、失礼なこと聞いちゃったな。というか、伊織さんには聞いてないです。

…………血繋がってないんだ。

じゃあ養子とか?どっちがどっちだろう。


「俺の人間の方の母さんがね、酷い暴力女でさ。ユリノの家に養子に出されてね。15年前かな」

「………それ言わないで」


ごめんと、漆瀬トレーナーはユリノに向かって言った。


「…………まぁ、二人共お疲れ様」


そう静かに言った。




「ユリノ、生徒会室に呼ばれてる───」

「ひっ……!?」


後ろから話しかけられ、思わず──いや、いつも通りに肩が縮こまる。

後ろを振り返ると、容姿端麗な僕の友達?が不思議な顔をして立っていた。


「せ、生徒会室ね。わかった」


そう言い、鞄を持って生徒会室に向かう。

っと、その前にコールのいる教室に顔をだした。


「コール!生徒会室呼ばれたから遅くなる!」

「!?何!?」


そう言ってそこから立ち去った。

ところで、なんで僕が呼ばれたんだろ。

……………もしかして、皐月賞勝ったからご褒美とか……。


そう思い、少しウキウキしながら生徒会室に行った。

白の花の花言葉 【ノベル】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

60

コメント

12

ユーザー

競走馬のユリノテイオーの秘密② 出身牧場は相当貧乏な牧場で、カイバの量は少なく、その上ところどころ腐っていた。ユリノテイオーは食べるのを拒否していたので、馬体は牝馬に見劣りする程だった。ウマ娘としてのユリノテイオーも成長期になってもまともな食事をとることができず、胃は小さく身長は伸びなかった。

ユーザー

俺のノベルで出してる主人公のスクーデリアローマをえびふらいさんのストーリーにも出してくれないかな? ・スクーデリアローマ 無敗の三冠ウマ娘を目指しており、通称 紅き跳ね馬。 いつかユリノテイオーも俺のノベルで出したいんだけど、許可の承諾お願いします!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚