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木の上から、ちっちゃな声がした。
「それ、なあにー?」
「ぴかぴかしてるー!」
見上げると、三匹のリスが枝に並んで、
まんまるの目でわたしと卵を見ていた。
しっぽはふわふわで、でも動きはびゅんっと早い。
「これはお祭りの飾りにする卵だよ。大事なものなの」
そう言ったのに──
「ちょっとだけ見せてー!」
「ちょっとだけ触らせてー!」
リスたちは枝から飛びおりて、
ぴょん!ぴょん!と地面を走ってきた。
「だめー!割れちゃうもん!」
わたしは卵を胸にぎゅっと抱えて、森の小道を走った。
右から一匹、左から二匹。
しっぽが顔にかすって、くすぐったい。
卵をとられないように、かごを抱えるみたいに手をまるくした。
すると一匹のリスが、わたしの肩にひょいっと飛びのった。
「きゃあ!」バランスをくずして、ふらっとよろける。
そのとき、卵が腕からすべりそうになった──
ぱしっ。
すんでのところで抱え直すと、卵がほんのり光った。
その光にびっくりしたのか、リスたちはぴゅーっと木の上に戻っていった。
「ふぅ…」
森の中はしんと静かになって、
わたしの心臓だけがドキドキしていた。