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リスたちから逃げきって、ほっとしたのもつかのま。森を抜けた先の坂道を登ると、日なたの光が強くて、
卵がじんわりと温かくなってきた。
「…あれ? ちょっと熱いかも」
抱えている腕のあたりが、ほんのり汗ばむ。
わたしは木陰に入って休もうとしたけど、
坂道はあと少しだし、このまま行こうと思った。
ところが──
ぽこっ…ぽこぽこ…。
卵の中から、なんだかスープが沸いてるみたいな音がした。
「えっ、えっ!? ゆで卵になっちゃうの!?」
わたしは慌てて両手であおいだり、
胸から少し離して持ってみたりしたけど、全然おさまらない。
坂の上では、お祭りの旗がひらひらしている。
──でも、このままじゃ、卵が…!
そのとき、丘のふもとに小さな泉が見えた。
水は冷たくて透きとおっていて、
昼間なのに星の形の光がゆらゆら浮かんでいた。
「ごめんね、ちょっと冷ましてあげるね」
わたしは卵をそっと水にひたした。
すると、卵の表面の金色がいっそう輝き、
中からきらきらの粉がふわっと舞いあがった。
それは風に乗って空へ昇り、
遠くの青い空にとけていった。
──この卵、ただの飾りじゃないかもしれない。