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彼が電話に出なくて残念、というため息なのか、それとも、豪が電話に出なくて良かった、と安堵のため息なのか、奈美にもよく分からない。
(私からメッセージでさよならを伝えて、彼のIDを消したのに、彼と一体何を話せばいいのかな……?)
奈美は、豪の電話番号を見つめながら、ぼんやりと考えていた。
翌々日。
今度は、もう少し遅い時間帯に電話をしてみようと、奈美は帰宅後、シャワーと夕食を済ませ、パソコンを開いてネットサーフィンした。
スマホの時計は、もうすぐ二十一時になろうとしている。
(今週三度目のドキドキタイムが、やって参りましたよ……)
どこか投げやりになっている自分に微苦笑しつつ、彼女は、通話履歴から豪の携帯番号をタップした。
何度も聞いた呼び出し音を、息を潜めて彼が電話に出るのを待つ。
五コール目、六コール目、七コール目………。
ドキドキしつつ、コール数をカウントするけど、彼が電話に出る気配は、ないように感じた。
十コール目で、通話終了ボタンをタップし、奈美は落胆した表情で画面を見やる。
仕事で忙しいに違いない。
彼女は半ば無理やり、思い込もうとしている。
(やっぱり豪さん、怒ってるのかな。私から、さよならって言ったわけだし、調子のいい女って思われても、仕方がないよね……)
三度、奈美から電話して、彼が出なかった事に、心が打ちのめされそうになってしまう。
マイナスな事ばかり考えている自分に、彼女はウンザリしていた。
(少し日を空けて、冷静になったら、彼に電話してみよう……)
奈美は、気を取り直して二十三時にベッドに潜り込んだけど、なかなか寝付けず、眠れない夜を過ごした。