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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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電車が駅に着くと、美月はふいに実家へ寄ろうと思い母親に電話をかけた。

すると美月の母はすぐ電話に出て言った。


「今日は早かったのね。いらっしゃい、ご飯あるわよ」


そこで美月は駅前の洋菓子店でケーキを3つ買い、実家へ向かった。


「ただいま。お母さんケーキ買って来たよ」

「おかえり。あら、お誕生日でもないのにケーキなんて珍しいわね」


母は嬉しそうにケーキを受け取り、一つ皿に取り分けると仏壇へ持って行った。

美月の父は甘党でケーキが好きだった。


「今日はパッチワーク教室あったんだよね」

「そうよ、午後4時までね。今日は生徒さんは5人だったわ」


母は今日作った見本の作品を美月に見せた。

それは上品な色合いの母らしい作品だった。

美月はそれを触りながら不意に言う。


「お父さんとお母さんはどうやって出逢ったの?」

「あらやだ、何? 急にそんなこと聞いて」


母は驚いたように言う。


「ううん、別に。ちょっと聞いてみたかっただけ。たしか同じ高校だったんだよね?」

「そうよ。同じ高校で、お父さんは天文部だったの。文化祭の夜、望遠鏡を出して天文部がイベントを開いていたのよ。そこで

お母さんから声をかけたの」


母はそう言った。


「へえ、お母さんから声をかけたんだ。それは意外」


美月は驚いた様子で続けた。


「で、なんて言って声をかけたの?」

「あの夜は月がまん丸だったのよ。だから『満月ですか?』ってね」


母は当時を懐かしそうに思い出しながら言った。

それを聞いた美月は驚く。

海斗に声をかけられた時と全く同じだったからだ。

しかしその驚きを母に悟られないようにしてさらに聞いた。


「お母さんはお父さんと結婚して幸せだった?」

「そうねぇ…どっちかって聞かれたらもちろん幸せだったわ」


母はそう答える。そして続けた。


「お父さんは優しかったから。それにお母さんが考えている事は言わなくても全部わかっちゃうのよ。不思議でしょ?」


母はそう言って笑った。


「ふーん。お父さんさすがだね」


美月もクスッと笑う。


「お父さん、今頃月面旅行でもしているのかな?」

「そうね、きっと地球の周りを一周しているんじゃない? それとももっと遠い宇宙旅行かしら?」


そんな会話をしていると、夕食の準備が出来上がったので母娘二人で夕食を始める。

美月は久しぶりの母の手料理を美味しいと言って笑顔で食べ始めた。


そんな娘を見ながら、母は何かを感じ取っている様子だった。

美月の母は仏壇に飾ってある夫の写真をチラリと見ると、心の中でこう呟いた。


(あなた、よろしく頼みますよ)


それから笑顔で話す娘との会話をしばらく楽しんだ。




その頃、海斗はバンドのリハーサルを終えてからタクシーで家に向かっていた。

マンションの近くまで来ると、美月のアパート近くでタクシーを降りる。

アパートの前を通る際、二階の美月の部屋を見上げた。

部屋の窓は真っ暗だった。


(まだ帰っていないのかな)


そう思いながらゆっくりと自分のマンションへ向かった。


部屋に戻ると海斗はノートとペンを手にし、ソファーに座ってサラサラともの凄い勢いでメモを取り始める。

その勢いは止まる事なく思いつくままにペンを走らせる。

それはしばらくの間続いた。

海斗はとめどなく溢れ出る今の思いを歌詞に使う為記録に留めたのだった。


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