少し前の話になる……
「……なんじゃこりゃ」
アオイは呟いた……しかし、この言葉ほど今の状況を表現できている言葉はない。
あれから目を覚ますと久しぶりの冷たい檻の中。
だが以前とは違う所はその檻の中を獣人達が品定めする様に見ている事だ。
「まるで動物園の逆バージョンだ……」
格好は初期のボロ布服にエッチな下着。
元々着ていた服は《着せ換え様》として檻の外にラインナップされている。
「……」
アオイの他にも檻が並んでいて、その中に居るのはどれもが人間だ____中には《食用》と書かれた檻もある。
ここは《奴隷市場》……奴隷達を露天販売している場所だ。
「屋台の肉、もしかして人肉じゃ無いよね……?」
外では屋台で肉を焼いているいい匂いが漂ってくるが《食用》の檻が頭をよぎってその臭いを受け付けない。
「改めて思うけど……普通【勇者】のテンプレートって奴隷を買う側でしょ!?なんでこっち側やねん!!!」
アオイは奴隷商からお仕置きを受けた後、冷凍睡眠カプセルに居たので何日経っているかも把握できていない。
「はぁ……」
もう何度、ため息をついただろう……だが、ついにその時が来てしまった。
「35番、お前の買い手が見つかった」
「!?」
檻に布がかけられ暗くなった後、檻が揺れ運ばれて始めた。
「この檻が動く感覚、懐かしいなぁ、次に看守が言う言葉ってどうせ「おい、出ろ」だと思う」
「おい、さっさと出ろ」
「はい、ただいま出ますー」
檻の後ろに付いていた扉が空き、光が差しこむ。
そこを頼りに光に近づく虫の様に歩いて行くと____
「おぉ……?」
出た先は深い森の中だった。
「なんだろう、例えるなら海外のジャングルを少し難易度落としたような森の中?」
檻のすぐ近くではスーツを来た羊の獣人が居る……おそらく今回、アオイを買った者だろう。
「ふむ、近くで見るとまた見栄えが違うな」
「ありがとうございます、マスター」
奴隷歴が長いアオイ……もはやマスターと呼ぶのに抵抗が無くなっていた。
「私の事はオーナーと呼びたまえ」
「はい、オーナー様」
「よろしい、付いてこい」
「了解です」
そして2人は森の中を歩き始めた…………
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……………
「す、すごい……」
アオイはその光景を見て、自分がまだ異世界に来て間もないことを改めて実感した。
「人間の奴隷からしたら確かに珍しい光景だろうな」
その言葉が口をついて出る。
そこはまさに神秘的で、ファンタジーの世界そのものだった。
巨大な大木が立ち並び、その一本一本に扉や窓が取り付けられている、それらは神秘的な町の景色を彩り、その存在感は圧倒的だった。
そして、その町を彩るのは、様々な種族の獣人たちだ、彼らが活気づけるその場所は、まるで異世界への扉が開かれた瞬間を味わっている様。
「そして、ここが私の店だ」
羊の獣人が言った“店”____そこには《カジノヒツージ》とキラキラの装飾がされている看板が特徴的なその名の通り。
カジノだった。
ここは獣人達とギャンブルで有名な国
《アバレー王国》である。