彼の世界を見たかった
彼が愛される度に
愛しくなっていたはずなのに
あの時の彼は彼じゃない
違う人だ、そう解釈しても
現実は簡単に許してくれない
それでも私は願ってしまうのだ
そんな私を許してくれ
さみしがりやな私を置いていくのか
彼にしか出来ない何かがあるのだ
それを解釈させてくれ
愛しき彼は、今どこにいる?
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あなたを忘れた僕を
あなたは嫌わないだろうか
あなたを愛せない僕を
あなたは見捨てないだろうか
あなたの事を見れない僕を
あなたは優しくするだろうか
あなたの事を好きな僕を
あなたは僕を呪わないだろうか
あなたを無駄にした僕を
あなたは逃げだすのだろうか
ああ、またこの気持ちが溢れる
気分が悪くなって心が痛い
胸の奥から叫ぶように感情が出る
右から耳に入るバイクの音が
左に当たる冷たい風が
僕の事を憎らしく思っているみたいで
自分のことさえ、分からない僕に、
「あなた」という存在がいる
僕よりも大きく存在を残した
あなたという存在は僕1人じゃ
分からなくて、ただ迷走するだけ
とはいえ一緒に考えてくれる人など
ひとりも居ないから、これは末路
微かな僕が心と共鳴する
体と一体化しようとしてくる
髪の先まで足の爪先まで
僕を苦しめようとしてきた
僕はそれが嫌でとにかく避けたくて
がっぽり空いた穴を埋めようとする
僕にはあなた以外の思い出はなく、
何も思い浮かばないのでとにかく
あなたを必死に埋めさせている
きっとこの埋めをするのが、
あなただからきっとダメなんだろう
だから、あなたが僕から抜けない
あなたは、僕を許してない
たった1人のワンルーム
僕はうわの空だ
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ある日、隠されていた僕の家は
色が落ちて隠せなくなった
そして誰かに見つかる
ぴんぽんと、インターホンが鳴る
その音はぐさっと心を貫いて
心から血液が流れ込む感覚がした
インターホン越しにいるのは
たった一人の女性だった
誰かも分からないから怖くなり
僕は無視をしようとしていた
だけど、そのたった一人の女性が
穴を埋めてくれる気がして
気がついたドアの前に立っていた
はい、とひとりの女性に言う
扉の前に立った女性は
長い髪の毛をはらい、言った
その髪が僕の心臓をえぐりだして、
苦しめるようにキツく締め付けた
何度も、見たことがある
心を盗まれてしまった
影が僕の後ろに伸びていく
彼女はあなたではない
そう思っているけれど、
あなたは長い髪だろう
ぎゅっと震え出すように
恐ろしくなったのか喉が鳴る
大袈裟に、今まで
ないように、鳴りだす
彼女がここにきた魂胆は
最近ここに引っ越してきたらしく
とにかく怪しがっていたそう
こんな所へ引っ越すのは変人だ、
と思ったが彼女は真面目で、
僕のことを気にかけてくれた
1度も家を出るところを
見ていないと不安に思って
インターホンを押すか迷っていたみたいで
僕のことが大丈夫か知れて喜んだらしい
頬を赤らめながら話す彼女は
胸を抑えて上に羽織った上着を
下にさげて礼をした
これからよろしく、と言う声は
恐ろしく澄んでいて綺麗だった
あなたで埋められていた記憶は
彼女のおかげで色がついていき、
あなたという存在が霞んだ
あなたは僕の知らないどこかに居て、
僕は今それを忘れて楽になりたがる
たまに気付く
今、いけないことをしてる
僕は忘れてはならない思いを
手放そうとしていることに
ハッと気が付き、脳内をかき混ぜる
思い出せないあなたが
ずっと頭にいたって苦しむだけ
それでも僕はあなたを求める
あなたは僕を求めている
炭酸を口につけながら喉に通し、
あなたで潤った喉が甘い炭酸に
拒否して胃もたれしている
生クリームをたっぷりかかった
ショートケーキを、幼少期に
食べたことを思い出し微笑ましくなる
あの時はお腹が弱くって
よく胃もたれをして寝込んでいた
僕が唯一覚えている記憶
ショートケーキと、あと、
母親と父親が無理心中をした事か
今は痛くも苦しくもないが
当時の僕は何もわからずで、
ただ泣き崩れる祖母と祖父の背中を
摩っていることしか出来なかった
みんな黒い服で耳を殺す
芯の通った段々弱々しくなる音が
耳に永遠と残って殺害する
あの記憶が嫌ほど蘇って
気が向いた時に帰っていく
記憶は気まぐれだ
だからこそ、あなたの記憶も
「いつか」出てくるはず
彼女が度々僕の家へ訪問し
色々なことを話していくうちに
彼女は僕を好きだと言った
僕はその好きが分からず
分からないまま うん と応えた
彼女は顔色を変えない僕に
引っかかったのか一瞬表情が曇る
けれどすぐに得意のにぱっとした
可愛げのある花のような笑顔を貼る
ありがとう、よろしくね
そう優しく僕にかけてくれる言葉は
何時しかあなたを殺す気がして
恐ろしくなってしまった
廃人のような人生は一変した
明るい人生が彼女と共に産まれた。
彼女が来た時から色はついていた
見つめてくる度に貫く心
その心から溢れるのは幸せだけで
僕の胸を大きく満たしてくれた
あなたを忘れて
僕は夢で何度も出たあなたを
シカトしてただこの幸せを
噛み締めて生きていた
それに、勉強というのもした
しゃべるのもままならないし
文字という物も理解しかねる
僕は母と父を失って、
祖母に引き取られていたが
祖母は今病院で癌を治療中
祖父は僕を育児放棄して
まだ幼い僕に食べ物すら恵まれず
全部 適当に 色々されていた
そんな時に来たのが施設の人で
僕らの事情を知って気になり
僕らの元を訪ねてきたらしい
祖父は1人になりたいと
しだいに僕を嫌っていたので
競馬を見るために出かけた祖父には
内緒で僕は施設の人に引き取られた
施設はびっくりするほど綺麗で
古い床ももろい天井もない
これは鉄?木?それともコンクリート?
僕には未知数だった
そこで初めて、施設に入って
「家」というものを知った
彼女は熱心に僕に勉強を教え
とりあえずの基礎を大まかに教えた
施設では知らない言葉だらけ
施設はほとんど身寄りのない子供たちで
できるだけストレスがないようになる
だから不登校も自由
行きたくないといえば行かない
嫌だと拒否したらそのまま受け入れる
そんな僕らを下手に配慮した
ルールを貼っつけていた
僕はそれが嫌いだった
嫌いだったから、僕は色を捨てた
色がなくなってしまえば
誰にもみられないようになる
色褪せてしまえば
人間という資格を失う
僕は苦しみを彼女に伝えずに
ただ笑顔でいた
彼女の色が綺麗だったから
彼女に染まるのが好きだった
彼女の色が色褪せることはない
だって彼女の色は色褪せた白だった
もう色褪せてしまっていたから
これ以上酷くなることは無い
酷くならない為には最後まで堕ちて
取り返しがつかなくなってしまえば
僕は彼女と溺れている
これが彼女の言う焼け焦がされる愛だ
それは愛だ
僕が唯一飢えていた愛だ
彼女は僕と過ごすのが苦痛になるまで
僕と一緒にいてくれると言った
僕が木が生い茂る山奥に行っても
彼女は必ず見つけ出して愛してくれて
僕がどこかへ行ってしまっても
彼女は僕を諦めずに生きてくれる
それが何よりも嬉しくて
あなたを次第に無くしていた
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彼女と過ごして、何年経ったのだろうか。
彼女は僕が次第に僕を
取り戻しているのを喜び、
彼女の事情を話した。
彼女は社会に疲れて
ここまで逃げてきたと言った
苦しみから逃れるために
誰かを心から愛すために
誰かに尽くしたいと思っていた時
僕のことを見つけてくれたらしく、
僕を見た時に、こう思ったそうだ。
愛して尽くして殺してみたい
心に潜む何かを殺してやりたい
僕の中に居る人を殺してあげたい
そう言った。
殺してやりたい相手言うのは
僕で言う「あなた」で、
あなたは確かに彼女に殺された。
あなたは僕の元へ、
来なくなってしまったからだ。
僕はそれを知って、なんて
綺麗なんだろうと思った
苦しみを解消するんじゃない。
僕からあなたを殺してくれた。
どうにも分からない歯がゆさを
心の臓まで殺してくれたんだ。
僕はその快楽がたまらなく
愛おしくて麗しいほど輝いている
彼女がより尊く感じた
いつしか彼女に殺される、
その麗しい姿のまま、
全てを投げて殺してくれる。
僕はその日を待った。
その日が待ち遠しかった。
小さな頃に感じれなかった愛を
今まさに僕は持っている。
こんな快楽を手放しては損。
君らを考える暇もないのだから。
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彼女の色が消えた
驚いた
僕から色がさーっと無くなった
まるで色のぬけた塗り絵みたく
僕というキャラクターが褪せていく
太い縁どりだけを残し、
僕の内臓まで心臓まで褪せた
違う、彼女の白色は
そんな色なんかじゃない
気付けば彼女は居なくて
終わりを告げてくれる海のように
彼女は僕に終わりだと言った
違う、待ってくれ
幼少期の何者にもなれない自分を
思い出して心を侵略していく
苦しませないでくれ
残酷に殺さないでくれ
笑顔にならないでくれ
残酷を突きつけないでくれ
心から汗が流れる
あなたの死体が浮かび上がる
彼女が殺したあなたが、
僕の中でゆっくり浮かんだ
あの日の快楽が僕を殺して
過ちを突きつけ殺した
無造作に蹴りあげ殺して
僕を刺して、愛されないまま
僕を解釈せずに
彼女は僕を離れるのか
僕は色褪せたことに苦しみを覚え
現実から逃げるようになった
逃げたくて逃げたくて
ただ突きつけられるのが怖くて
苦しみを怯えた
恐ろしかった
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気付いたら僕は真っ黒になって
真っ黒な色がついていた
誰も、僕を苦しめない
僕は声が出せなくて誰とも
関わりたくなくて逃げている
遂には追い詰められることも
何も知らずに、ただ逃げて
僕を、解釈してくれる人は居なくて
誰も僕を許さず解釈してくれない
嫌だ
僕は、僕はただ
誰かに侵略される快楽が欲しいのだ
解釈はいらない
僕は、ただ、ただ
あなたを許さずに生きて
彼女を苦しめた事に気付きたいのだ
許さなくていいから、
僕にそれを突きつけてくれ
苦しませてくれないか
辛いから、苦しいから
突きつけられなくて、
何も出来なくて矛盾して
苦しんでいるから
もう誰かに苦しめさせられて
もう一度殺してくれないか
君さえも、殺めた俺を掴まえて
誰かの中で死なせて
いつの日かきっと、を死なせて
流れる文字を止めさせて
楽しませる言葉を偽ってしまって
引鉄を引いてしまって
孤独を飼っていても慣らせもできない
僕を愛してくれよ
コメント
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投稿あざます…🙇♂️ 「忘れた」で、何となく記憶喪失なんだろうな、と思いました。 彼女の色が白、色褪せる…色盲…? 解釈って凄く難しいです…今の自分にできたことはこれぐらい…😭
みんなに解釈してほしくて書いた けど自分でも解釈できないほど 意味わかんないからやばいかも