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「泣いた……恥ずかしかった……怖かった……でも、誰も助けてくれなかった……」
その瞬間、クラス中の空気がさらに重くなる。
「は? 当たり前じゃん。 お前一人で何やってんの?」
「なにその弱い言い訳。友達とかいたんじゃねーの? いねーの? まじで?」
誰かが紙を叩き、笑いながら煽る。
「助けてくれる奴がいなかったんだろ? だから泣くんだよ。クソだな」
「うぜー、泣くなら黙ってろよ。見るのもイヤになるわ」
「おいおい、友達がいないのか? お前って本当に孤独すぎて面白いな」
遥は言葉が喉に詰まる。心臓はギリギリと締め付けられ、目の前の嘲笑と罵声が身体に突き刺さる。
(……誰も……本当に、誰も……)
でも、日下部の顔がちらつく。もし日下部に手を出されることがあったら……と想像するだけで、吐きそうになる。
涙が溢れそうになるが、こらえる。声を出さないように、身体を縮こめて、必死に耐える。
「……友達は……いなかった……」
そう答えるたびに、誰かが口を挟む。
「お前、マジで惨めすぎるだろ。ていうか、何年生だよ? それで泣いてんの?」
「家族は? 兄弟は? あー、そんなのもいねーんだろ。 そりゃ泣くわ」
遥は顔を伏せる。言葉にするたびに、屈辱と痛みが体に重くのしかかる。
「……家族は……いた……でも……」
「でも? まだ言い訳すんの? 話になんねーな」
「だーかーらー、誰も助けてくれなかったんだろ? お前のせいじゃねーかよ」
身体の震えが止まらない。
言葉の一つひとつが刃のように突き刺さり、教室全体に笑いが広がる。
教師は黙って見守るふりをしながら、実際には点数や順位をメモしている。加担しながら、逃げ場のない状況を完璧に演出しているのだ。
遥はただ、声を押し殺し、日下部を思い浮かべる――あいつがここにいたら、きっと自分の前に立って庇うだろう。
その想像だけが、唯一残された心の支えだった。
しかしそれでもクラスメイトは止まらない。
「泣くな、恥ずかしくねぇのかよ、マジでうざい」
「友達もいねー、家族もいねー、ただの惨めなクズじゃん」
遥は、これ以上の痛みも屈辱も耐える覚悟を決める。
そして、内心で激しく叫ぶ。
(もう……これ以上、日下部に……関わらせたくない……)
この嘲笑と罵声の中で、遥は耐えながら、自らを“代償役”として押し込める。
日下部の存在が、唯一の拠り所であり、同時にさらなる恐怖でもあった。