テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
さらに一年後。
優子は、自身の皮革工房『レザークラフト ゆう』を設立。
自分自身の名前と、『革製品を通して、縁を結う』『私の製作したレザーグッズが、あなたにとって大切な存在になって欲しい』という意味と願いを込めて、敢えて平仮名で『ゆう』と名付けた。
店舗を構えるのではなく、オンラインショップに限定し、現在住んでいるアパートで製作するスタイル。
サイトを立ち上げるために、彼女は、デスクトップパソコンを購入し、ホームページの制作方法、さらに、商品をより良く見せるために、初心者向けのデジタル一眼レフカメラと、写真の撮り方の本を購入して独学した。
優子の製作する革製品も、スマートフォンを入れるポシェットやストラップ、文庫本サイズのブックカバーや栞など、バリエーションが増えていく。
(色々勉強しないといけない事があるけど、何かを学ぶ事って、実は面白いのかも……)
サイトを立ち上げたばかりの頃、閑古鳥が鳴いていた優子のオンラインショップも、洗練されたサイトに変化していくにつれて、口コミで評判が広がり、顧客も増えた。
ハンドメイド作品の販売サイトで活動していた頃に、優子の商品を購入してくれた客が、彼女のオンラインショップを見つけ、SNSを通して広めてくれたのだろう。
(地道に一歩ずつ、やるべき事をやってきて、良かったよ……)
優子は、受注一覧表を見ながら、感慨深げに笑みを滲ませるのだった。
オンラインショップを開設して半年後。
彼女が、たまたまネットサーフィンをしている時に見つけた、『エストスクエアマルシェ』の公式サイト。
画面をスクロールしていくと、ページの一番下に『出店者募集中!』とあり、優子は迷わず申し込んだ。
サイトも軌道に乗り始めた事もあり、彼女は、対面販売で、自身の製品がどれくらい売れるのか、挑戦してみたくなった、というのが一番の理由である。
オンラインショップの受注製作と併せて、エストスクエアマルシェ出店に向けて準備を開始。
主力の二つ折り財布は数点だけ販売し、ストラップやキーリング、スマートフォンポシェット、ブックカバー、栞など、比較的手に取りやすい価格帯で、多く生産できる小物を販売する事にした。
居酒屋のアルバイトも継続させながら、マルシェ当日までの半年間、寝る間を惜しんで製作に励む日々を送る優子。
出品する全製品を完成させ、検品を終えたのは、マルシェ開催日の二日前。
「ようやく…………できたよ……」
優子は、安堵の表情を浮かべながら、大きなキャリーケースに商品を丁寧に入れ、準備を終わらせた。
***
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!