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第二話 記録通り
現場は、思っていたより静かだった。
規制線の向こうに集まっているのは、数人の野次馬と近隣住民。
怒号も悲鳴もない。ただ、ひそひそとした声が漂っている。
「ここです」
鑑識の一人が短く告げ、規制線をくぐらせた。
室内は整理されていた。
倒れた家具はなく、割れたガラスもない。
——きれいすぎる。
被害者は居間の中央に仰向けで倒れていた。
手足の位置、顔の向き。
まるで配置されたように整っている。
「……生活感、ありますね」
「あるな」
それだけだった。
被害者のそば、テーブルの上に小さな花瓶が置かれている。
事件現場には、いつも花があった。
ロベリアの花だ。
——だが、違う。
花瓶に挿されていたのは、黒百合だった。
「……先輩」
「なんだ」
「花、違いませんか」
「花は花だろ」
鑑識が言う。
「被害者、外傷なし。死亡推定時刻——」
「記録通りだ」
壁際の時計が目に入った。
16:45。
再現されている。
だが——何かが、ずれている。