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「じゃ約束のものと交換だ」
「あぁ、もちろんだ」
「にしてはお前さんも、すごいよな」
「何がだ?」
「まさか、これをアレに使うなんてな…」
「…まぁな」
「で、今日はこんくらいでどうだ?」
そう言って男はもう1人の男に札束を見せる。
「おぉ!!こんなにくれるのか?!」
「あぁ..」
「じゃあまた頼むよ」
「..こちらこそ」
𓂃◌𓈒𓐍
「おい、見ろよ!!」
「あれが『トランパ・イーミャ・ピラミッド』だ!!」
そう言いながらはしゃぐ友人、悠太。
俺たちは見学旅行で、最古のピラミッド、
『トランパ・イーミャ・ピラミッド』
通称、トイミャ・ピラミッドに訪れた。
案外にも人は少なかった。
そりゃあそうだよな。
もう古いピラミッドより最新の開発の方が
気になるのだろうし。
「波瑠!!早く中入ろうぜ!!」
「あぁ、そうだな!」
中は小寒くて、なんだか変な匂いがした。
「なぁ..変な匂いしね?」
「あぁ..なんか、この匂い遺体の匂いと似てるな..」
中には特に珍しいものは無かった。
「なんか案外つまんなかったな」
「そうだな」
「そういえば帰りにマルメ行かね?」
「いいじゃんいいじゃん!!」
「てかさ──」
家に帰ってきてから俺はあることに気づいた。
それはピラミッドに入った際、
悠太が『遺体の匂いがする』と言ったこと。
普通なら知らないはずなのに、
さも知っているかのように話すのが、
なんだか怖く感じた。
「また明日..行ってみようかな…」
匂いの正体を調べることと..、
あと、
なんだか違和感を感じた気がしたからだ。
やはり、昨日と同じ殺風景。
それに、この鼻をつくような匂い…。
ふと正面を見ると奥に道が続いてるようだった。
見た感じ、左右にも部屋があるようだが、
なんだか足は正面に進みたがっていた。
正面の扉の前に立つと、
扉には『立ち入り禁止』と書いてあった。
「立ち入り禁止…」
そう声を零しながら扉を開ける。
慌てて周りに人が居ないか確認したが、
相変わらず人の姿は無かった。
それのせいか、余計に不気味感が増す。
部屋の中には、ただ1つ棺桶があった。
棺桶の中を開けるのは気が引け、
辺りを歩き回っていると
カチリという音が鳴った。
途端、目の前に石版が現れ、
掠れた文字で何かが書かれていた。
【ここに眠る者は既に決まりし有り、
その名は『えしげおじかい』という。
だが、この名前は正であり、偽でもある。】
そう書かれていた。所々、読みにくい。
それに、
読んでも意味が分からないものがあった。
「んだよこれ…」
そう呟いた瞬間、
後ろから凄まじい風が吹き、
鈍い音が響き渡った。
その瞬間、目の前は真っ暗になった。
𓈒 𓏸𓈒 𓂃
あのピラミッドに行ってから、
波留に送ったメールが返ってこない。
元々、
あいつはメールを既読無視する癖があるが、
電話にも出ず、
家にも居ないなんておかしいに決まってる。
そう思い、
俺は探偵に波留についての相談の依頼を
しに行った。
︎︎𓂃◌𓈒𓐍
探偵になったはいいものの、
探偵への依頼なんて早々来ない。
そんなことを考えながら、
今日もまた、
秘書が入れてくれたコーヒーを飲む。
だが、今日は違った。
カランカランという音と共に、
大学生くらいの男が1人来店した。
話を聞くと、
どうやら友達と一緒にピラミッドに行ったところ、
友達からのメールが途絶えたとのこと。
でもなんだかこの人、
違和感を感じるんだよな…。
「じゃあ色々調べておきます」
「ありがとうございます!!」
「それではまた、後日お呼びしますので」
「分かりました!」
そう言い、男は帰って行った。
その後、秘書から言われて気づいたが
ピラミッドに入って、あの客が友達に言った
一言が何とも恐ろしいものだった。
人殺しをしない限り、
『遺体の匂いがする』
だなんて一言を無意識に言えるはずがない。
本人は気づいてないのか?
ピラミッドの情報は、あまり出てこなかった。
最古のピラミッドだというのに、
大した情報が無いだなんて怪しい。
そんなことを考えつつも、
いつの間にか、あの客に会う日になっていた。
しかし待っても待っても、
あの客は来なかった。
一応、連絡はしてみたが反応無し。
もしかして逃げたか?
それとも…、
あの客の友人のように行方不明とかか..。
それでも答えを握ってるのは多分、
あのピラミッドだろう。
明日、
秘書とピラミッドに訪れることにしよう。
最古のピラミッドの名前は
『トランパ・イーミャ・ピラミッド』
というらしい。
そういえば、
この名前を聞いた秘書の様子がおかしかったが
気のせいだろうか?
最古という割に、中は結構綺麗。
だが、質素だった。
文字や絵などは全く描かれておらず、
それどころか部屋は合計3個ほどしかない。
最初は左の部屋に向かった。
中は強烈な匂いがして、鼻がもげそうだった。
秘書が
「あそこに何かありますよ」
と言いながら指を差した先には、
誰かのピアスと眼鏡が落ちていた。
「これって…あのお客さんが着けてたピアスと似てません?」
「確かに…」
「そういえば、あの客から貰った写真に映っていた友人さんも眼鏡をしていたよな…」
秘書とそんなことを話しながらゾッとする。
「もしかして…」
「ここで死んだのか?」
「そうかもしれませんね…」
「でも、遺体が見当たりませんね」
「違う部屋にでもあるんじゃないか?」
「うーん…、あったとしても隠す必要なんてあるんでしょうかね..」
「お、アレなんだ?」
少し先にでかいブロック状の何かがあった。
近づいて見てみると、
中は空洞で材質は煉瓦のようなものだった。
だが空洞部分には、
ぐちゃぐちゃとした何かが詰め込められていた。
「え…これ..」
「..人骨じゃないですか?」
そう。
詰め込められていた『何か』の正体は、
いくつもの人間の死体だった。
少し、人骨なようなものも見えている。
「これ警察呼んだ方がいいんじゃないんですか?」
「いや…、呼ばなくていい」
「なんでですか?」
「嫌な感がする…」
「嫌な予感..」
「確かに、何か違和感は感じますよね..」
「右の部屋行ってみるか?」
「あそこ嫌な雰囲気しますけど大丈夫ですかね..?」
「でも行くしかないだろ..」
そう言ってビクビクしながら
秘書と右の部屋に向かおうと
部屋から出ようとした時、
壁に何か書いてあるようだった。
壁には『エイドスの部屋』と書かれており、
ちゃんとした日本語で書かれていた。
横には【大事なものは、目には留まらず、映らない。そして大事なものこそが、あるべき場所に送られる。】と書いてある。
「謎解きですかね?」
「あるべき場所…」
「とりあえず、これは置いといて右の部屋に向かおう」
「分かりました」
右の部屋には3つの石版があった。
右側の石版には
【Z4からAを捨てたとき、Wとなる。
その時、AはRとなる。】
と書かれており、
真ん中の石版には
【来る場所から先に花や見や囲とする。】
と書かれており、
左側の石版には
【アガリの笑みを浮かべし者は、いつかゴマを被り、『い』の半分となる。】
と書かれていた。
「全く意味が分からないですね…」
「そうだな…」
「AはRってなんでしょう..」
「AはAなのに..」
この謎を解いたところで何に使うんだ?
もしかして最後の部屋で使うとか..。
じゃあ尚更、解かないといけなさそうだな。
秘書と2人して黙って謎を解くため
考えていると
「Zって遠くから見たら2に見えますね..」
そう秘書が呟いた。
Zが2?
だとしたら24ってことか。
だとしてAはなんだ?
というかWってwestのことか?!
だとしたらこれは『西に○○歩』とかだな。
Rを捨てた時…
もしかして!
「なぁ、スマホのキーボード設定ローマ字だったよな?」
「え?はい..そうですが..?」
「ローマ字と数字のキーボードを重ねた時、Rの下に来るのはなんだ?」
「えーと…」
そう言いながら秘書はスマホを取り出す。
「4です」
「じゃあAは4だ!」
「なるほど..」
「では、24-4で西に20ですか?」
「いや、引くんじゃなくて捨てるんだ」
「捨てる?」
「あぁ」
「答えは『西に2歩進む』になる」
「なるほど!!」
「そういえば私、真ん中の石版の謎を解いてみたんですけれど..」
「『花』と『見』と『囲』って全部同じ画数じゃないですか?」
「七画だな」
「そうなんですよ!!」
「でも『来る場所』の意味が分からなくて..」
「この読み方『くる』じゃなくて『きたる』じゃないか?」
「え?」
「送りがな『たる』じゃないんですか?」
「あぁ、『る』でも読むらしい」
「じゃあ..、北?」
「そういうことになるな」
「北に7歩..」
次々に謎を解いていく中、
最後の石版の謎だけが分からない。
「ゴマってなんだよ…」
「アガリって東のことですね..」
「そうなのか?」
「はい、沖縄で太陽が上がる方角のことを言うそうです」
「なんでそんなこと知ってるんだ?」
「友達が沖縄県出身なんですよ!」
「なるほど..」
とりあえず、進む方向は分かったな。
笑み..、ニコニコ..。
もしかして2525か?
でもゴマってなんだ..?
そんなことを考えていると
「2.5 …」と秘書が呟いた。
「何?」
「この謎の答え、2.5じゃないですか?」
「え?」
「笑みはニコニコで、2525」
「俺もそこまでは分かった」
「だがゴマが何か..」
「小数点ですよ」
小数点?
「そしたら252.5になるんじゃないか?」
「それで『い』の半分ですよ」
「『い』は5のことです」
「5の半分なので、2.5が答えです」
「すげぇな..」
「お役に立てたなら嬉しいです..」
探偵なのに秘書の方が、頭良い..。
なんか嫌だなそれ。
1番奥の部屋には、
ただ1つの棺桶が置いてあった。
「なんだか不気味ですね..」
「あ、あそこに太陽の絵がありますよ!!」
「じゃあさっきのやつを使うってことか..」
「そうみたいですね..」
「さっきの謎の答えを順に言ってくれ」
「分かりました」
「西に2歩」
「北に7歩」
「東に2.5歩」
言われた通りに進むと、カチリと音が鳴る。
すると目の前には、
また石板が床の下から現れた。
【ここに眠る者は既に決まりし有り、
その名は『えしげおじかい』という。
だが、この名前は正であり、偽でもある。】
そう書いてあった。
「えしげおじかい…,ってなんですか?」
「多分並べ替えたら名前になるんだろうな」
後ろにいた秘書が突然こう叫んだ
「先輩!!伏せてください!!!」
「は?」
俺は咄嗟に倒れるように伏せると、
俺が立っていた場所の壁にデカイ石のような
何かがぶつかった跡があった。
「罠か?」
そう言った瞬間、
秘書の顔にかするようにして、
矢が飛んでくる。
確実に殺しに来てる。
「一旦、帰るぞ!!」
「あ、ちょっと待ってください!」
そう言って秘書は棺桶を開けて、
中から古びた本のような物を取り出した。
「これも持ってきます!!」
「詳細は後で言うので、とりあえずここから逃げ出しましょう!!」
命からがらピラミッドから逃げ出し、
探偵事務所に帰ることが出来た。
「で、その本なんなんだ?」
「左の部屋の入口に『あるべき場所に送られる』的な文あったじゃないですか?」
「もしかしたら棺桶の中に何かあるんじゃないかと思って..」
「そしたらこれがあったんです」
「中…、見てみるか」
【名前:人間ピラミッド
作者名:塩影 英二
詳細:殺人犯から死体を買い取り、その死体をグチャグチャにしてブロック状にする。それを沢山作り、組み合わせて作ったもの。塩影 英二の最初の発明品。】
そう書いてあった。
他に何か書いていないかページを捲っていると
最後のページに
『これは、ふりょうひん。ぴらみっどはいきている』
と書いてあった。
しかも古びた血がこびり付いていた。
「なんだ?これ」
「不良品…」
「人間ピラミッドのことでしょうかね..」
しかもピラミッドは生きているだと?
じゃあ本当はさっきのやつは罠じゃなくて、
ピラミッドが自我を持って襲いにかかってきて
いたのか..。
そう考えると、
最後の部屋に行くまで襲わなかったのは、
油断させたところを狙ってたのか…。
「そういえば『えしげおじかい』って並べ替えたら『しおかげえいじ』になりますね」
「そうだな..」
「だが塩影 英二って奴はどこにいるんだろうな?」
「あの..,その事で話がありまして..」
「なんだ?」
「この本を取る時に、棺桶の底がカポカポしてまして…」
「棺桶って死体を入れる物じゃないですか..」
「じゃあ…」
「はい…,多分、棺桶の底の蓋のようなものを避けたところに塩影 英二の死体があると思われます…」
それもピラミッドがやったのか?
だとしたら相当頭がいいのだが…。
そういえば秘書が俺にピラミッドの名前を
伝えた際、
変だったのはなんなんだ?
「なぁ、俺にピラミッドの名前言った時変じゃなかったか?」
「何がですか?」
「いや、お前の様子が..」
「ピラミッドの名前って『トランパ・イーミャ・ピラミッド』ですよね..」
「トランパってスペイン語で罠っていう意味で」
「しかもイーミャってロシア語で人間っていう意味なので..」
「人間の罠のピラミッドっていうことじゃないですか..」
「なんで早く言わなかったんだ?」
「最初は気のせいかなって思ってたんですけど、さっき調べたら本当にそう翻訳されまして…」
「なるほどな…」
「そういえば、左の部屋の壁に書いてあった『エイドス』の意味ってなんなんだ?」
「これも調べてみるか」
そう言って俺はパソコンで意味を調べる。
と、出てきたのは『影』だった。
後々、
あのピラミッドは国が立ち入り禁止区域に
したらしい。
当たり前だ。
あそこで何人の人が死んだのだろうか..。
そういえばあの客の名前は、
『加尾茂 英二』って言うんだっけか?
大学生の割に、渋い名前だったな…。