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「真壁さん!」
凛は驚いて立ち上がった。
颯介は彼女に気づくとまっすぐ歩み寄り、隣の席に腰を下ろした。
凛が黙ったまま立ち尽くしていると、紅子がカウンターから出てきて声をかけた。
「いらっしゃい! 初めまして、紅子と申します。凛ちゃんのお知り合いかしら?」
勘のいい紅子は、目の前のイケメンが噂の『不動産王』だと気づいていたが、あえて知らないふりをした。
「どうも。彼女の仕事仲間の真壁と申します」
「あら、やっぱりそうだったのね。これを機に、どうぞご贔屓に~」
「とりあえずビールをいただけますか? それと何か食べ物も。腹ぺこなんで……」
「まあ、お腹ぺこぺこなの? 分かったわ、ちょっと待っててね」
そう言うと、紅子は立ち尽くしている凛の背中を軽く押して座らせ、厨房へ向かった。
椅子に座った凛は、慌てて口を開いた。
「どうしてここに?」
「打ち合わせが途中だったから、まだ外にいるならと思ってさ」
「すみません、わざわざ」
颯介が仕事の続きをしに来ただけだと分かり、凛は少しがっかりした。
(追いかけてきてくれた……なんて、あるわけないよね)
そう思いながら、小さくため息をつく。
そのとき、紅子がビールを運んできた。
「お待たせ~」
「ありがとう」
「凛ちゃんも、おかわりね」
「ありがとうございます」
颯介がぐいっとビールを飲むのを見ながら、紅子が口を開いた。
「それにしても、真壁さんって本当にいい男ねぇ……モテるでしょ?」
「そうでもないですよ」
「嘘っ! 絶対モテるわ! で、お仕事は何をされてるの?」
「不動産関係です」
「あら、不動産会社の方?」
「いえ、フリーでやってます」
「まあ、フリーなの? すごいわねえ。でも今って、マンションがすごく暴騰してるじゃない? だから、相当儲かってるんじゃない?」
「まあ、ぼちぼちですね」
「やっぱり! ここにも、不動産投資をしている人が何人も来るけど、今は地合いがいいってみんな言うのよ~」
「ですね。日本の不動産は世界に比べて安すぎると言われてますから、まだ伸びしろはあるかと」
「わあ、やっぱり! じゃあ、日本の未来は安泰ね~! それにしても、経済に強いオトコっていいわあ~♡ 尊敬しちゃう!」
「ははは、別に強くはないですけどね」
颯介の落ち着いた対応を見て、凛は『さすが大人の男』だと思った。
どんな相手にも紳士的に接する姿に、ますます胸が高鳴る。
そのとき、また紅子が質問をした。
「で、ここへ来たのは凛ちゃんとお仕事の話?」
紅子が尋ねると、颯介は穏やかに答えた。
「そうです。実は、さっきまで打ち合わせをしていたんですが、途中で中断してしまって……ね?」
「はい。紅子さん、ここで続きをしてもいいですか?」
「もちろん! どうぞご自由に!」
そのとき、ナッツの二曲目が終わり、店内が静かになった。
「じゃあ、ごゆっくり!」
紅子はにっこり笑って二人のそばを離れた。
急に二人きりになった凛は、慌てて口を開いた。
「リフォームで、何か他に気になるところはありますか?」
颯介はビールをもう一口飲んでから答えた。
「いや、特にないな。君の思う通りに進めてくれて構わないよ」
「え? ないんですか? だったら、来る必要なかったんじゃ……」
「ははっ、たしかに。でも、面白い店を教えてもらえたし、来てよかったよ」
その言葉に、凛は少し戸惑いながら尋ねた。
「で、沢渡さんは、本当に大丈夫でしたか?」
その問いに、颯介は静かに答えた。
「うん。ところで、ちょっと聞くけど……彼女って、いつもあんな感じなの?」
「あんな感じって?」
「男を誘う……っていうのかな?」
その言葉に、凛は思わず目を見開いた。
「ええっ! 彼女、真壁さんを誘ったんですか?」
「うん」
「ど、どんな風に?」
「家に上がれって、しつこく言われた」
「本当に?」
「腕を離してくれなくて参ったよ」
「……」
凛は驚きのあまり言葉を失った。
同時に、颯介が会社の大切な上客であることを思い出し、慌てて立ち上がって深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ございません! 私が連れて行ったばっかりに……」
「いや、俺が『どうぞ』って言ったんだから、俺の責任だよ」
「そんなことありません! ああ、もう……なんてことを! 本当に、本当に申し訳ありませんっ」
必死に謝る凛を見て、颯介は思わず笑い声を漏らした。
「ははっ、大丈夫だよ。襲われたわけじゃないし。それに、俺はそう簡単には堕ちないから」
そう言って、必死に謝る凛の頭を、優しくぽんぽんと叩いた。
(え?)
「まあ、座って。せっかくだし、ゆっくり飲もう」
「すみません……」
そのとき、紅子が作りたての『焼き飯』を持ってきた。
「はーい真壁ちゃーん、紅子特製『焼き飯』ができたわよ~。さ、食べて食べて」
「焼き飯?」
「高菜入りのチャーハンです。この店の裏メニューで、すっごく美味しいですよ」
「高菜か……美味そうだな」
颯介はさっそく一口食べた。
「うん、美味い!」
「嬉しい~♡ イケメンに褒められちゃった~♡」
「ふふふ」
凛が思わず笑うと、颯介が目を細めて彼女を見た。
「笑ったほうが可愛いな」
「え?」
ちょうどその瞬間、ナッツの三曲目が始まり、凛は彼の言葉をはっきり聞き取れなかった。
すぐに聞き返そうとしたが、すでに颯介は紅子と話し始めており、結局そのまま諦める。
そこへ、スタッフ二人がチーズやソーセージの盛り合わせを運んできた。
イケメンの颯介に気づいた二人は、甲高い声を上げた。
「きゃーっ♡ 超イケメン発見! ちょっと凛ちゃん、独り占めはダメよ~」
「ママ、ズルい! 私たちも入れてよ~♡」
その後、二人はオネエたちに囲まれながら、賑やかで楽しい夜を過ごした。
コメント
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颯介さん、匂わせがすごいです(*ノェノ)キャー イケオジ不動産王に頭ポンポン…… 凛ちゃん、羨ましい~~😭 「笑ってる方が可愛い」だなんて言ってる姿、想像するだけで (・∀・)ニヤニヤしちゃいますよぉぉ
やはり颯介さん!!😎👍 奈美は余裕で排除し、凛ちゃんを追いかけて来ましたね〜😍キャー💕 頭ポン…(〃ω〃)ウフフ♡ やはりオネエ様たちにもモテモテ…😎💕🤭 気取りのないお店で、焼飯を食べながら打ち解けあえて良かったですね〜🍻🍚🍀✨️
やっぱり家に引っ張り込んで既成事実を作る算用してたんだ、奈美ーーo(`ω´ )o でもさすが簡単に堕ちない男、颯介さん✨凛ちゃんの元に駆けつけてからの頭ポンポン🌸こりゃ嬉しいわ😊💝 でも相手も猿者🐒2度目はより一層執着しそうだから、颯介さんも凛ちゃんも負けないで❗️