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 僕はアリスさんの腰にしがみついたまま、初めてホウキに乗って空を飛んだ。

 さっきまで泣いていた公園はもう見えなくなっていて、たくさんの家や道路の上を飛びながら、僕たちは僕の家に向かっていた。

「大丈夫? 怖くない?」

 アリスさんに聞かれて、僕は首を横に振る。

「だ、大丈夫……」

 本当はちょっと怖かったけれど、僕は頑張ってそう答えた。

 風がびゅうびゅういっていたけれど、落ちそうになることもなくて不思議だった。

 こんな夜でも色んな人たちが道を歩いてて、だけど僕たちの姿が見えていないのか、空を見上げている人も驚いたりしなかった。

「ねぇ、アリスさん」

「ん? なぁに?」

「僕たち、みんなには見えてないの?」

 するとアリスさんは僕の方に顔を向けて、

「わたしたちの姿は、みんなには鳥が飛んでいるようにしか見えていないはずよ。そういう魔法をかけているから」

「……鳥?」

「そう」

 頷いて、アリスさんは微笑んだ。

 なんだかすごく変な気分だった。

 やっぱり魔法ってあるんだな。魔女って本当に空が飛べるんだ。

 そんなことを考えながら、僕はアリスさんの姿をじっと見つめる。

 すごく白くて、綺麗で、可愛くて。どこからどう見ても魔女には見えなくて、本当にお人形さんみたいにしか見えなかった。

 それに、その体からはふんわりと甘い良い匂いがして、何だか胸がドキドキしてくる。

「どうかした?」

 アリスさんに聞かれて、僕はハッとなる。

「な、なんでもない」

「そう?」

 言って、アリスさんはふふっと笑って、僕の頭を撫でてくれた。

 僕はそれが何だか恥ずかしくて、アリスさんから目をそらす。

 そんな僕に、アリスさんは、

「――ねぇ、勇気くん」

「な、なに?」

「……あのプラモデル、お父さんのものだったんだね」

 言われて、僕はアリスさんに顔を戻して、その少し困ったようなアリスさんの表情に、

「……うん」

 と小さく頷いた。

 するとアリスさんは、

「私、てっきりあれは、勇気くんの玩具だと思ってた」

「……うん」

「ちゃんと、お父さんに謝ってなかったんだね」

「……」

 僕は、なんて答えたらいいのかわからなくて、何も言えなくて。

「なんて言えばいいかしら」

 とアリスさんは小さくため息を吐いてから、

「あのね、勇気くん。モノを壊してしまうことは、仕方のないことだと思う。間違っちゃうことって、誰にもあることだから。でもね、それをちゃんと謝らなくて、ただ誤魔化そうとするのは、あまり良くないことだと私は思うの。だから、ね? 今度からはちゃんと、正直に謝ろうよ。壊しちゃってごめんなさいって。そうすれば、勇気くんのお父さんだって、きっと怒らなかったと思うんだ」

「……うん」

 僕は頷いて、

「お父さんにも、同じこと言われた」

「そう」

 それからアリスさんはもう一度、僕の頭を撫でてくれながら、

「それじゃぁ、改めてお父さんに謝りましょう? お父さんも、勇気くんを怒ったこと、謝りたいって言ってたから」

「謝る? なんで?」

 僕が首を傾げると、アリスさんはまたふふっと笑ってから、

「だってほら、私、魔女だもの。勇気くんのお父さん、私が空を飛ぶところを見て、すっごく驚いてたんだよ? 本当に魔女って、いたんだなって」

 それを聞いて、僕はお父さんが驚く姿を想像して、なんだかおかしくなって笑ってしまった。

白い魔女と小さな魔女

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