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やがて見えてきた僕の家の前には、お父さんやお母さん、凛花ちゃんや真奈ちゃん、あとは知らない大人の人たちが何人かいて、
「あ! 勇気くん!」
凛花ちゃんが空を見上げて指さして、
「ゆ、勇気!」
お父さんが、大きな声で僕を呼んだ。
アリスさんはホウキをふんわりと地面に下ろすと、
「さぁ、どうぞ」
と言って、僕を支えながら降ろしてくれた。
それからアリスさんもホウキを降りて、僕の背中を軽く押しながら、
「頑張ってね」
と優しく微笑む。
僕は「うん」と頷くと、お父さんの所まで数歩歩いて、
「お、お父さん」
「大丈夫か? 勇気。怪我とか、してないか?」
お父さんは僕の身体をぎゅっと抱きしめると、泣きそうな顔でそう言った。
僕はそんなお父さんに、勇気を振り絞って、
「ご、ごめんなさい。お父さんの大事なプラモデル、壊しちゃって」
「いいんだ。いいんだよ、勇気」
お父さんは僕の頭を撫でながら笑顔で言った。
「お父さんもごめんな。勇気の言うこと、ちゃんと信じてあげなくて――」
「う、ううん。いいんだよ。僕も、凛花ちゃんたちに教えてもらうまで、魔女なんて信じられなかったし……」
それから僕は、後ろに立つアリスさんに顔を向けて、
「アリスさんが、お父さんのプラモデルを直してくれたんだ」
お父さんはうんうんと何度も頷くと、アリスさんに頭を下げる。
「勇気が大変お世話になりました。それに、プラモデルも直してくださって、本当にありがとうございます」
するとアリスさんは、両手を軽く振りながら、
「あ、いえ。お気になさらないでください」
そして僕の方に笑顔を向けると、
「良かったね、勇気くん」
「うん!」
僕は頷き、そして周りを見回す。
お母さんも僕に駆け寄ってきて、僕の身体を抱きしめてくれた。
凛花ちゃんも真奈ちゃんも、良かったね、と笑っている。
他の大人の人たちも、安心したように微笑んでいた。
「皆さんも、ご迷惑をおかけしました」
お父さんが頭を下げると、「無事でよかった」と言って、次々に帰っていく大人たち。
やがてアリスさんは頷くと、
「それじゃぁ、真奈ちゃん、凛花ちゃん。私たちも帰りましょうか」
「はい!」
「じゃぁね、勇気くん!」
ふたりはアリスさんのホウキに飛び乗ると、再びふんわりとホウキは浮いて、三人して手を振りながら、空高く上がっていく。
それはやっぱり、なんだか不思議な光景だった。
ホウキに乗った三人の姿は、いつの間にか一羽の白い鳥に変わっていて、どこか遠くへと飛んでいった。
それを見送ってから、お父さんは僕と手を繋ぐと、
「それじゃぁ、俺たちも帰ろうか。勇気」
「うん」
と僕は頷く。
それからお父さんはにっこりと微笑むと、
「明日、一緒にプラモデルを買いに行こうか。コウキと三人で、一緒に組み立てよう」
「――うん!」
僕は大きく頷いて、お父さんの手を強く握った。