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   8

 やがて見えてきた僕の家の前には、お父さんやお母さん、凛花ちゃんや真奈ちゃん、あとは知らない大人の人たちが何人かいて、

「あ! 勇気くん!」

 凛花ちゃんが空を見上げて指さして、

「ゆ、勇気!」

 お父さんが、大きな声で僕を呼んだ。

 アリスさんはホウキをふんわりと地面に下ろすと、

「さぁ、どうぞ」

 と言って、僕を支えながら降ろしてくれた。

 それからアリスさんもホウキを降りて、僕の背中を軽く押しながら、

「頑張ってね」

 と優しく微笑む。

 僕は「うん」と頷くと、お父さんの所まで数歩歩いて、

「お、お父さん」

「大丈夫か? 勇気。怪我とか、してないか?」

 お父さんは僕の身体をぎゅっと抱きしめると、泣きそうな顔でそう言った。

 僕はそんなお父さんに、勇気を振り絞って、

「ご、ごめんなさい。お父さんの大事なプラモデル、壊しちゃって」

「いいんだ。いいんだよ、勇気」

 お父さんは僕の頭を撫でながら笑顔で言った。

「お父さんもごめんな。勇気の言うこと、ちゃんと信じてあげなくて――」

「う、ううん。いいんだよ。僕も、凛花ちゃんたちに教えてもらうまで、魔女なんて信じられなかったし……」

 それから僕は、後ろに立つアリスさんに顔を向けて、

「アリスさんが、お父さんのプラモデルを直してくれたんだ」

 お父さんはうんうんと何度も頷くと、アリスさんに頭を下げる。

「勇気が大変お世話になりました。それに、プラモデルも直してくださって、本当にありがとうございます」

 するとアリスさんは、両手を軽く振りながら、

「あ、いえ。お気になさらないでください」

 そして僕の方に笑顔を向けると、

「良かったね、勇気くん」

「うん!」

 僕は頷き、そして周りを見回す。

 お母さんも僕に駆け寄ってきて、僕の身体を抱きしめてくれた。

 凛花ちゃんも真奈ちゃんも、良かったね、と笑っている。

 他の大人の人たちも、安心したように微笑んでいた。

「皆さんも、ご迷惑をおかけしました」

 お父さんが頭を下げると、「無事でよかった」と言って、次々に帰っていく大人たち。

 やがてアリスさんは頷くと、

「それじゃぁ、真奈ちゃん、凛花ちゃん。私たちも帰りましょうか」

「はい!」

「じゃぁね、勇気くん!」

 ふたりはアリスさんのホウキに飛び乗ると、再びふんわりとホウキは浮いて、三人して手を振りながら、空高く上がっていく。

 それはやっぱり、なんだか不思議な光景だった。

 ホウキに乗った三人の姿は、いつの間にか一羽の白い鳥に変わっていて、どこか遠くへと飛んでいった。

 それを見送ってから、お父さんは僕と手を繋ぐと、

「それじゃぁ、俺たちも帰ろうか。勇気」

「うん」

 と僕は頷く。

 それからお父さんはにっこりと微笑むと、

「明日、一緒にプラモデルを買いに行こうか。コウキと三人で、一緒に組み立てよう」

「――うん!」

 僕は大きく頷いて、お父さんの手を強く握った。

白い魔女と小さな魔女

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