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#普通
野々さくら
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ありあ
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坪野は両腕を大きく広げ、恍惚とした表情で銚子を見つめていた。
「白縫銚子を器として──」
その声は歓喜に震えている。
「この世界は、生まれ変わるんです!」
信愛は必死に母へ手を伸ばした。
「お母さん!」
だが、あと一歩というところで、目には見えない壁に阻まれる。
空気そのものが固まったように、身体は前へ進めなかった。
何度踏み込もうとしても、見えない力が信愛を押し返す。
坪野は静かに笑う。
「無駄な事を!」
その笑みは勝利を確信した者のものだった。
「もう修理固成は始まったんです」
黒い空を見上げながら、坪野はゆっくりと続ける。
「不浄なる醜い人間は、近づく事は出来ませんよ」
信愛は愕然と立ち尽くす。
「そんなの・・・」
胸の奥から込み上げる感情が、涙となって滲んだ。
「そんなの嫌だ!」
坪野は首を傾げる。
「なぜです?」
そして、まるで説法でもするかのように穏やかな口調で語り始めた。
「人が苦しみ、人が人を陥れる共食いの現状を
なかった事にしようとしているんです
本来、人は助け合って生きていける筈なんです」
一度言葉を切り、深く息を吸う。
「しかし人は恵まれ過ぎた暮らしが豊かになるにつれ
人は傲慢になった。結果、人の品性や知性道徳心、共感力、想像力、責任感や自制心は著しい程に低下しました」
その目には怒りとも悲しみともつかない光が宿る。
「こんな物は人間とは呼べない
人の皮を被った抜け殻も同然だ!
中身の無い人間、平気で人を傷つける人間」
声が次第に熱を帯びていく。
「そんな人間ばかりが蔓延るこの国に価値などない!」
しかし信愛は一歩も引かなかった。
「だとしても!」
真っ直ぐ坪野を見据える。
「修理固成なんて間違ってる」
坪野は静かに笑みを浮かべる。
「君らだって、その与えられた力で
色んな人や霊を視てきたでしょう?
修理固成をすれば、君らが視てきた被害者が
被害者にならない世界を創れるんですよ!?
それの何が不満なんです!?」
信愛は拳を強く握り締めた。
坪野の言葉には確かに理屈がある。
だが、それでも坪野はさらに言葉を重ねる。
「人がまた同じ苦しみに悶える続ける世界
君たちはそんな世界を心の底から
望んでいるとでも言うんですか!?
それが正しいと胸張って言えるんですか!?」
信愛は力強く首を振った。
「そんな訳ない!」
その瞳に宿る光は少しも揺らがない。
「でも──」
ゆっくりと息を吸い、仲間たちの顔を思い浮かべる。
「私たちに出会って、救われたって
言ってくれた人も確実にいる!」
あの日、涙を流しながら笑ってくれた人たち。
前を向く勇気を取り戻した人たち。
その姿が脳裏をよぎる。
「そんな人が勇気を振り絞って前に進んだ一歩
その事実も無かった事になるなんて──」
信愛は強く叫んだ。
「そんなの絶対に認めない!」
その言葉に呼応するように、朝陽が一歩前へ出る。
「そうだ!」
真っ直ぐ坪野を見据えた。
「母さんだって確かに最初は被害者だった
けど先輩に出会って、今は僕と楽しく暮らしてる」
続いてさくらも口を開く。
「おじろくおばさだって、最初は
単なる認識のすれ違いだった!
それに気づけて、今は楽しく暮らしてる!」
茜も力強く頷く。
「TAMAYAだって千秋さんの想いを胸に
過去の罪背負って懸命に生きてる!」
焔垂も前へ出た。
「三瓶先輩や江古田には
ちゃんと相応の罰が与えられた!」
4人の声が重なり、静まり返っていた境内へ響き渡る。
だが坪野は、冷たく首を横へ振った。
「ぬるい!ぬるい!ぬる過ぎる!
その与えられた罰は適切でしたか?」
静かな口調のまま、鋭い視線を信愛たちへ向ける。
「君たちはまだ若い。だから善人が
悪人の犠牲になっている
そんな世の中の現実を知らないんです!」
そして空へ向かって両腕を広げた。
「もうこの国は、世界は修理固成でしか救えない
そんな末期状態なんです!」
その声は狂気にも似た確信を帯びていた。
「もう・・・引き返せない!」
坪野はゆっくりと目を閉じる。
「この日本は──」
そして大きく両腕を掲げ、歓喜に満ちた声を天へ響かせた。
「私が創り固め直す!」
その瞬間だった。
世界が白く染まる。
新開村だけではない。
日本中を包み込むほどの眩い光が天から降り注ぎ、黒く覆われていた空を一瞬で塗り潰した。
あまりの輝きに誰も目を開けていられない。
信愛は腕で顔を庇いながら息を呑む。
「な、なに!?」
光の中心で、坪野は歓喜に打ち震えていた。
ついに、この時が来た。
長年追い求めた悲願が、今まさに成就しようとしている。
「ついに!ついに!」
その笑い声が光の中へ吸い込まれていく。
「我々の願いが!聲が!想いが!」
彼は天へ向かって叫ぶ。
「イザナミとイザナギにやっと通じたんだ!」
その瞳からは涙が溢れていた。
狂気ではない。
歓喜の涙だった。
「ついにこの時が来た!」
誰にも止められない。
もう誰にも。
坪野は天へ向かって、全身全霊で叫ぶ。
「修理固成が始まる!」
コメント
1件
もう…待って待って待って!!😭💦 この299話、めっちゃ重いし熱いし…坪野の言い分もわかっちゃうから余計に辛いよ…!「修理固成で救われる世界」って確かに一理あるけど、信愛ちゃんたちが「救われた人がいる」って叫んだところ、涙腺崩壊したよ…!あの一歩を無かったことにできないって気持ち、めっちゃわかる…!次どうなるの!?早く続きが知りたい!!🔥