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「ごめんね。とりあえずベッドで寝てて」
「あぁ、うん・・・」
「はい。これ差し入れ」
ベッドから少し離れたテーブルの上に差し入れを入れた袋を置く。
「薬は飲んだ?」
「いや・・ちょっとマシになってきたから、とりあえず寝てたら治ると思うし。 そもそも急で薬とかも家にないし」
「そんなことだろうと思った。ご飯は食べた?」
「いや・・・」
「とりあえず何か食べて薬飲まないと。薬も買って来たからちゃんと飲んで」
「あぁ、うん・・・」
「病人だと大人しいね。なんか扱いやすい」
ちょっとその姿がいつもと違って可愛く見えて、弱っている早瀬くんをついからかってしまう。
「なら。風邪うつしてあげてもいいけど?」
それに負けずに対抗してくるも、いつもの勢いはなくて。
「はいはい。今はまずそんなこと言ってないで大人しく風邪を早く治すこと。 はい。寝て寝て」
そう言って起き上ろうとした早瀬くんにまた布団をかけて大人しく寝させる。
「ちょっと大人しく寝ててね」
そう言って差し入れを置いたまま自分の部屋へ戻る。
やっぱりご飯食べてなかったか。
なんとなくそんな気もして、部屋を尋ねる前に念の為作って置いたおかゆをキッチンで温める。
家にある食器と一緒におかゆを食べれる準備をして、また隣の部屋へ。
こういう時、隣の部屋って便利。
とりあえず持って来たおかゆなどを置いたトレイをキッチンに置く。
「早瀬くん。起きれる?」
ベッドで寝てる早瀬くんに声をかける。
「おかゆ作って来たんだけど、少しでもいいから食べれる?」
「・・・え、作ってくれたんだ」
すると起き上がって驚いてる様子で反応している。
「とりあえずおかゆだけでも食べて薬飲んで」
ベッドの前にあるテーブルに持って来たトレイを持って来る。
「はい。今温めて来たとこだから、少し熱いかもだからちゃんと冷ましてね」
熱々のおかゆを器に取り分ける。
「あ、あぁ。ありがとう・・・」
「風邪・・・元はと言えば私のせいだろうから・・・」
さすがにこれは責任感じる。
「私、酔っぱらった日・・・あの日ベッド借りちゃったから・・・」
「あぁ・・・。いや。あのまま放っておけなかったし。女性をいい加減な場所で寝かせられないから」
「ごめん・・・」
うぅ、やっぱり私のせいだった・・・。
「ホントは責任感じてほしくなくて違うって言おうかと思ったけど・・・。 でも、わざわざ来てくれたんならいい機会だしこの借り、返してもらおうかな」
「そうだよね・・。借り作っちゃったもんね」
この借りはちゃんと返さなきゃ。
「じゃあ・・・今日、看病してくれない?」
「それは・・もちろん!私の出来る限りはちゃんと看病させてもらおうと思ってたから」
迷惑でなければそうしたくて、こうやって押しかけた訳だし。
「なら。これお願いしてい?」
「ん?どれ?」
「これ」
そう言って指差してるのは、おかゆ。
「おかゆ」
「そう、おかゆ」
「おかゆ?」
おかゆのお願いがわからなくて繰り返していると。
「だから~。これ食べさせて」
うっ。何まさかのその可愛いお願い。
えっ、まさかのアーンですか!
アーンで食べさせてってことですか!?
「ん。あ~」
すると、ホントに目の前で口を開けて待っている。
くそっ、なんだこの可愛さは!
風邪で弱っているだけでもいつもと違ってちょっと可愛くなってるのに、それから更に甘えたの可愛さがプラスされているでないか!
思わず見惚れてしまっていると。
「あっ、オレ猫舌だから熱いの苦手なんだけど・・・」
えっ、何またその更に可愛い萌えポイント!
「そこまでもう熱くはないとは思うけど。なんならフーフーしてあげよっか?」
弱っているのをいいことにその可愛さにつけこんで、少し笑いながらからかってみる。
「・・・フーフーして」
あっ・・・。
・・・まさかのフーフー返しされた。
からかったつもりが、逆にその上を行かれた。
すんなり受け入れられてしまった。
「えっ?ホントにするの?」
「してくれるって言ったじゃん」
「いや、それは、そうなんだけど・・」
まさかホントにしてって言うと思わなかったからつい・・・。
「早く」
「あっ、う、うん。ちょっと待って」
動揺しながら言われたまま、お椀におかゆをよそってフーフーと冷ます。
「はい・・」
「ん」
素直に差し出されたおかゆを食べてる目の前のこの可愛い生き物・・・何?
こんな可愛さも持ち合わせてるなんて聞いてない。
ホントにこの前強引に迫って来た彼と同一人物?
「美味しい」
自然に微笑みながら呟くその姿も。
あまりにも今までとまた見たことない雰囲気で。
「そんな顔するんだ・・・」
「ん?」
「なんか見たことない顔するから」
思わずその違いに戸惑って言葉に出てしまって。
「そっ? 透子の前だからかな」
弱ってるくせに、強引さも今は全然ないくせに、そういうことはやっぱりサラッと言葉にする。
その言葉にまたキュンとしたりして。