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「……はっ……ははっ…………はははっ…………あははははっ……んはははっ…………」
不気味さを感じさせる瑠衣の乾いた笑いに、侑は思わず凝視した。
「…………瑠衣?」
「…………今までのツケが回ってきたんだよ。娼婦として男とセックスしまくって……挙句の果てには拉致られて見知らぬ男たちに陵辱されて! そのバチが当たったんだよ! はははっ…………あはははははっ……ふはははっ……」
自嘲する瑠衣がヤケになりながらも、心の底から溢れる闇の言葉を放ち続ける。
「その代償が、『お前はあの世へ行け』って事なんだよ! だから私、がんになったんだよ!! んはははっ………ははははっ……あはははははっ……」
作り笑いをしながらも瑠衣の瞳に涙が溜まり、幾筋も頬を伝っていく。
「結婚して絵に描いたような幸せな家庭を持つ事も、子どもを産む事も、この先の未来を繋げる事もできない!! 私は『女』として終わったんだよ!!」
「瑠衣! まだがんと診断されたわけではないだろ!?」
侑は、錯乱状態に陥っていると思われる瑠衣の身体を強く抱きしめる事しかできない。
「響野先生だって、そう思うでしょ!? 仮に先生が私と結婚しても、先生との子どもを産めないんだよ!? 一緒にいる意味なんてないじゃん!!」
「意味は充分あるだろ!!」
侑は小さな顎に手を掛けて瑠衣の唇を奪う。
車の中とはいえ、人目も憚らずにキスを落とす彼に、瑠衣は後頭部を押さえつけられながらも、されるがまま彼の口付けを受け続けた。
ひとしきり瑠衣の唇を堪能した侑が、彼女の下唇をそっと食み、ゆっくりと顔を離した。
「昨年の夏、日本に帰国した時の俺は、あの女の浮気で心が荒れ、音楽の情熱も失い、『心が死んだ状態』だった。そんな俺の心に『命』を与えて息を吹き返させ、再び音楽への情熱を思い出させてくれたのは九條瑠衣、お前だ。瑠衣と再会したからこそ俺は…………生きるための一歩を……再び踏み出せたんだ……」
瑠衣の頭を胸元に引き寄せ、ベージュブラウンの頭を長い指先が慈しむように触れていき、こめかみに唇を落とした。
「お前がいなくなったら……俺は…………俺は……!!」
苦渋に満ちた表情で声を掠らせ、侑が言葉を詰まらせると、繊麗な身体を掻き抱く。
「…………瑠衣は、俺の心を生き返らせてくれた。今度は俺が…………お前を全力で支えるから」
濃茶の瞳に溜まった涙を、侑は指先でそっと拭う。
「瑠衣、行くぞ? 大丈夫だ。俺が付いているだろ?」
鼻を啜りながら頷く瑠衣を促して二人は車を降り、瑠衣の肩を抱き支えながら、尽天堂大学病院へと向かって行った。