カイルと想いを通じ合わせてから、少しの時が流れた。
数々の来訪者達との面会や、快気祝いをネタにした過剰なまでのお祭り騒ぎもようやく落ち着き、神殿の人達は皆、私とカイルの結婚式の準備に日々邁進している。
神殿内での婚姻の儀式に始まり、街中を馬車で周るパレード。王宮のホールを借りての披露宴を兼ねた夜会などもあると言われた時は目眩がした。
(前世は猫な上、今はただの学生だった自分が、何故そこまでさせられるの⁈)
——としか、どうしても思えないのだ。
それらの準備は全て王宮の偉い人や神官などがやるそうなので、私達はお飾りとしてそこに居ればいいだけっぽい。ホント、『ただ色々な事を理由にしてイベントを開催したいだけなんだな、この世界の人達は』と深く思った。
もうあと三日程度で、いよいよ結婚式を執り行うかという時期まできたある日の事。参列者として早めにやって来た訪問者に、これから会う予定になった。
相手は前回の、騙されたに近いと今の私は思っている“魂の婚姻”の儀式時にも参列していた、神子のウィルとハクの二人だ。伝達係としてこの神殿で働いているサビィルという者も一緒だとセナが言っていた。
サビィルは仕事で各地を飛び回り、そのせいでタイミングが合わず、今迄私と会えずにいたので『いい加減に会わせろ』と騒がれ、急遽参加する事になったらしい。
ほぼ知らない二人と、全然知らない一人とに会わねばならず、人見知りが発動してとても緊張してしまう。カイルも一緒だとは聞いてはいるが、一体何を話せばいいのやら。『快気祝いで来た』みたいな理由なら、それに合った話をして誤魔化せる。でもただ『会おう』とだけ言われるのは、正直ちょっと困った。
「タイミング的に、『結婚式おめでとう』『ありがとう』みたいな感じでいいんですか?」
ここ最近着ている事の増えた司祭服を、ダルそうな顔で着こなしているカイルに訊く。
「それでいいと思うよ。いっそ、彼等が好き勝手に話すのをただジッと耐えて聞いているだけでも話は進むから、放置していてもいいんじゃないかな。んで、コッソリ二人で退出して、べッ——」
「それは失礼ですよ」と、私はカイルの言葉をぶった切った。
絶対にまた、『ベッドに戻って続きをしよう』と言う気だとわかったからだ。今日だって起きてすぐに散々抱かれたのだ、わからない筈が無い。この草食獣っぽい角を生やしているクセに、肉食獣な神子の精力を誰かどうにかして欲しいもんだ。
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